第6話 魚人街Bゾーン入口
プシューッ。
路線バスがゆっくりと停車した。
『終点、北八王子・魚人街Bゾーン入口です。お忘れ物のないようご注意ください。』
「着いたよ。」
朝霧琥珀が立ち上がる。
萌香もリュックを背負い、バスを降りた。
そこは八王子駅前とは空気がまるで違っていた。
道路の両側には高いコンクリート壁。
鉄条網。
監視カメラ。
そして魚人街へ続く巨大な検問ゲート。
ゲート前では八王子軍警が検問を行っている。
黒い装甲車が二両。
その横にはヘルハウンド隊の機動歩兵輸送車が待機していた。
輸送車から降りてくるのは、黒い戦闘服に身を包んだ女性隊員たち。
自動小銃を肩に掛け、無駄のない動きで周囲を警戒している。
「ヘルハウンド隊だ。」
琥珀が小さくつぶやく。
「八王子軍警の精鋭部隊。」
「女性隊員が多いことで有名なんだ。」
その時、一台の装甲車のハッチが開いた。
隊員たちが自然と道を空ける。
銀色の長い髪をなびかせた女性隊長が姿を現した。
「あっ……。」
琥珀が思わず姿勢を正す。
「あの人。」
「ヘルハウンド隊隊長。」
「柏木沙織隊長。」
萌香も思わず見とれる。
「すごく綺麗……。」
「八王子じゃ『傾国の美女』って呼ばれてる。」
柏木は隊員へ短く指示を出すと、装甲車と機動歩兵輸送車を率いて走り去っていった。
「私たち探索者の憧れなんだ。」
ヘルハウンド隊が去ると、再び魚人街らしい賑やかな空気が戻る。
魚人。
ケットシー。
犬人。
蜥蜴人。
人間より亜人の方が多い。
「ここが魚人街……。」
「うん。」
「ここから先はBゾーン。」
「私たち亜人が多く住んでる地区。」
琥珀は少し照れくさそうに笑う。
「戦争のあと、人間も亜人も余裕がなくなってね。」
「自然と住み分けるようになった。」
「だから亜人のゲットーみたいな場所なんだ。」
萌香は静かにうなずく。
「人間のまま入ると目立つ?」
「かなりね。」
「だから少し変装しよう。」
「猫耳くらい付ければ、人混みなら何とかなる。」
萌香は《魔法取り寄せ》を開く。
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【魔法取り寄せ】
所持ポイント 4,766Pt
アクセサリー
・猫耳カチューシャ(黒) 80Pt
・猫耳カチューシャ(白) 80Pt
・猫耳カチューシャ(三毛) 95Pt
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「黒で。」
ボフッ。
リュックから猫耳カチューシャが現れた。
萌香は頭に付けてみる。
「どう?」
琥珀は少し離れて眺める。
「うん。」
「遠目なら若いケットシーに見える。」
「耳は動かないけど、人混みなら十分。」
萌香は画面を見る。
所持ポイント 4,686Pt
「減った。」
「ゲームみたい。」
二人は笑った。
すると琥珀が思い出したように言う。
「あっ。」
「入口で少し困るかも。」
「何が?」
「門番のおじさん。」
「毎回『土産は?』って聞いてくる。」
萌香は苦笑する。
「賄賂?」
「半分冗談。」
「半分本気。」
「魚人街らしいでしょ。」
「じゃあ何か出してみる。」
萌香は商品一覧を開いた。
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【魔法取り寄せ】
所持ポイント 4,686Pt
チョコレート
・ブラックサンダー 45Pt
・キットカット 60Pt
・板チョコレート 180Pt
・マカダミアナッツチョコレート 450Pt
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「これとか?」
「マカダミアナッツチョコ。」
その瞬間。
琥珀の耳がぴんっと立つ。
「待って!」
「それは駄目!」
「え?」
「クソ高い!」
「マカダミアナッツなんて超高級品!」
「しかも本物のチョコレート!」
「門番さんに渡したら、一週間仕事しなくなる!」
「そんなに?」
「そんなに!」
萌香は慌てて画面を閉じた。
「じゃあ……。」
検索を切り替える。
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【魔法取り寄せ】
所持ポイント 4,686Pt
果物
・バナナ(1房) 150Pt
・りんご 180Pt
・みかん 220Pt
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「バナナなら?」
ボフッ。
黄色いバナナが一房現れる。
所持ポイント 4,536Pt
琥珀は目を丸くした。
「……本物?」
「うん。」
「普通のバナナ。」
「普通じゃないよ!」
耳をぶんぶん振る。
「南国の果物なんて、今じゃ超高級品!」
「私は探索者になって五年。」
「本物のバナナ、一回しか食べたことない。」
「しかも一本だけ。」
萌香は苦笑した。
「またやっちゃった?」
「うん。」
「でも今回は大丈夫。」
琥珀は笑顔になる。
「門番のおじさん、バナナが大好物なんだ。」
「これなら絶対喜ぶ。」
「チョコレートほど騒ぎにもならないし。」
萌香も笑顔になる。
「じゃあ、お土産はバナナ!」
「決まり!」
二人は笑い合いながら、バナナを抱えて魚人街Bゾーンの検問ゲートへ向かって歩き始めた。
その先には、萌香がまだ知らない新しい出会いと、新しい日常が待っていた。
二郎さんの話は、設定と伏線が多いので、気晴らしにこちらでちょっと遊ばしてもらいます。




