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転生したら、もう一つの日本でした ~社畜OLは本物のチョコで魚人街を変えていく~  作者: ケロン藤野


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第34話 ロータスクラブの夜


ロータスクラブ会場。


料理もいよいよ最後の一皿となった。


運ばれてきたのは、桃のパルフェ。


淡い桃色の果肉を使った涼しげなデザートに、小ぶりなバニラアイスが添えられている。


その上には、鮮やかな緑色のミント。


「おお……。」


名士たちから小さな歓声が上がる。


張社長もスプーンを入れる。


桃の甘い香り。


ひんやりとしたパルフェ。


そして、濃厚なバニラアイス。


「最後まで抜かりないな。」


張は満足そうに笑った。


会場の誰もが料理を楽しみ、やがて最後のデザートまで食べ終える。


しばらくすると、ロータスクラブ会長が壇上へ立った。


会場が静かになる。


「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。」


「今回も素晴らしい料理と、楽しい交流の時間を過ごすことができました。」


続いて、今回の会場である鑓水帝国閣の総支配人が壇上へ上がる。


「本日は当館をご利用いただき、誠にありがとうございました。」


「スタッフ一同、皆様に楽しんでいただけましたことを、大変嬉しく思っております。」


会場から拍手が起こる。


そして最後に、ロータスクラブ会長が再びマイクを握った。


「さて。」


「本日の会を締めくくる前に。」


「もう一人、皆様へご紹介したい方がおります。」


会場の視線が集まる。


「本日。」


「現在の日本では、なかなか手に入れることのできないウイスキーとチーズを持ってきてくださった――」


一呼吸。


「ブラックプリンス代表。」


「鱶田恭子社長に、今一度拍手をお願いいたします。」


その瞬間。


会場中から大きな拍手が起こった。


パチパチパチパチ――。


恭子は少し驚いた顔をしたあと、立ち上がる。


軽く頭を下げる。


「ありがとうございます。」


拍手はしばらく続いた。


萌香は待合ホールからその様子を見ていた。


「すごい……。」


琥珀も猫耳を立てる。


「姉さん、大人気ニャ。」


恭子は照れくさそうに席へ戻る。


会長がマイクを持つ。


「それでは。」


「皆様、本日はありがとうございました。」


「最後は一本締めといたしましょう。」


会場の名士たちが手を合わせる。


「よーお!」


パンッ!


乾いた音が会場に響いた。


こうして、ロータスクラブは閉会となった。


名士たちが席を立ち、会場を後にしていく。


恭子も萌香と琥珀の待つロビーへ向かった。


「いやあ。」


「疲れたね。」


「恭子さん、お疲れ様でした。」


萌香が笑顔で迎える。


琥珀も、


「大成功だったニャ!」


と嬉しそうに言う。


恭子はニヤリと笑う。


「まだ終わってないよ。」


「え?」


その時だった。


「鱶田社長!」


後ろから声がした。


振り返ると、一人の男性が歩いてくる。


「先ほどのウイスキー。」


「本当に素晴らしかった。」


恭子は営業用の笑顔を浮かべる。


「ありがとうございます。」


男性が名刺を差し出す。


「今度、ぜひ一度お店へ伺わせてください。」


「もちろん。」


恭子も名刺を渡す。


その横から、別の女性経営者が近づいてくる。


「チーズが本当に素晴らしかったです。」


「特にブリー・ド・モー。」


「昔、若い頃に食べた味を思い出しました。」


恭子は少し柔らかい表情になる。


「それは良かった。」


さらに別の男性。


「実は私、レストランを経営していまして。」


「今日のチーズとウイスキー。」


「ぜひ、うちでも扱いたいんですが。」


「仕入れの相談はできますか?」


「もちろん。」


恭子は即答した。


「うちで扱える物なら、ご相談に乗りますよ。」


また一人。


「ホテルの贈答品に使えないでしょうか?」


「こちらも相談したい。」


また一人。


「次回のロータスクラブでも、ぜひお願いしたい。」


恭子の手元に、次々と名刺が増えていく。


萌香はその光景を横で見つめていた。


(すごい……。)


一週間前まで。


ブラックプリンスは、魚人街の一軒の食材店だった。


それが今。


八王子の名士たちが、向こうから商談を持ちかけてきている。


萌香はインカム越しではなく、初めて目の前で商売の現場を見た。


恭子が振り返る。


「萌香。」


「はい?」


「これ。」


恭子が大量の名刺を見せる。


「全部、あんたのおかげだよ。」


「いえ。」


萌香は首を振る。


「恭子さんが信用されているからです。」


恭子は一瞬黙る。


そしてニヤリと笑った。


「……そういうところも気に入ってるよ。」


琥珀が二人を見ながら首をかしげる。


「でも。」


「今日はもう帰るニャ?」


萌香のお腹が、


ぐぅ――。


と鳴った。


「……帰ろう。」


恭子が大笑いする。


「はっはっは!」


「商談より先に飯かい!」


三人は笑いながらロビーを歩き出す。


その背後では――。


今日初めて名前を聞いた者たちが、


ブラックプリンス。


その店の名前を、もう一度口にしていた。

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