第21話 服を買いに行こう
アパートに戻った2人。
萌香はベッドへ座り、左腕の探索者端末を夢中で操作していた。
「へぇ……。」
「紅茶。」
「チーズ。」
「ワイン。」
「世界地図まである。」
「この世界の検索サイトもあるんだ。」
名士会へ向けて仕入れる商品を調べ始める。
イギリス。
フランス。
イタリア。
「これもいいなぁ。」
「でも予算四十万円だし……。」
社畜時代の営業モードに入る。
利益率。
原価。
ブランド。
配送。
次々と調べていく。
その時。
後ろから琥珀が声を掛ける。
「萌香。」
「ん?」
「ちょっとこっち来て。」
萌香は振り返る。
「どうしたの?」
琥珀は少し言いづらそうにもじもじする。
猫耳も少し寝ていた。
「その……。」
「服。」
「え?」
「こっちへ来てから、ずっと同じ服だよね?」
萌香は自分を見る。
「……あ。」
言われてみれば。
転生した日からずっと同じ格好だった。
琥珀は恥ずかしそうに続ける。
「寝巻きは貸してるけど……。」
「下着は貸せないし……。」
「服も……。」
少し鼻をひくひくさせる。
「ちょっとだけ……。」
「におうニャ。」
「うっ!」
萌香はショックを受ける。
「そうだよね!」
「毎日走ってるし!」
頭を抱える萌香。
琥珀は慌ててフォローする。
「すごくじゃないよ!」
「少しだけだから!」
「大丈夫!」
「全然大丈夫じゃないよ!」
萌香は顔を真っ赤にする。
「商売も大事だけど。」
「まずは身だしなみだね。」
萌香は立ち上がる。
「よし!」
「気分転換!」
「魚人街で服を買いましょう!」
琥珀も耳を立てる。
「実は魚人街に安い衣料品店があるニャ。」
「探索者向けだから丈夫だよ。」
「じゃあお願い!」
二人は笑いながらアパートを飛び出した。
その途中。
萌香は歩きながら端末を見る。
「名士会の商品。」
「服。」
「予算。」
「全部まとめて考えないと。」
琥珀は笑う。
「萌香って。」
「歩きながら仕事するタイプだね。」
萌香は照れ笑いする。
「会社員の癖かな。」
「仕事も遊びも一緒になっちゃう。」
夕暮れの魚人街。
二人は並んで歩きながら、これからの商売について語り合う。
商売の相棒として。
そして、一緒に暮らす家族のような存在として。
少しずつ、二人の距離は縮まっていくのだった。




