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転生したら、もう一つの日本でした ~社畜OLは本物のチョコで魚人街を変えていく~  作者: ケロン藤野


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第2話 なんじゃこりゃあああー


頭が痛い。


身体中が重い。


「うぅ……。」


甘城萌香はゆっくりと目を開けた。


見上げると、澄み切った青空が広がっている。


「ここ……どこ?」


どうやら公園の芝生に倒れていたらしい。


身体を起こし周囲を見回す。


ベンチ。


街路樹。


そして遠くには見覚えのある駅前のビル群。


「……八王子?」


毎日通勤で利用していた街だった。


「助かった……。」


そう思ったのも束の間だった。


駅前へ歩き出すと、違和感が次々と目に入る。


迷彩服姿の兵士。


自動小銃を肩に掛けて警戒する軍人。


装甲車が駅前を巡回している。


スピーカーから放送が流れた。


『八王子軍警備隊よりお知らせします。鑓水ダンジョンフィールド第三警戒区域への立ち入りは禁止されています。』


「軍警……?」


聞いたこともない組織だった。


駅前の大型モニターではニュースが流れている。


『本日、鑓水ダンジョンフィールドにて魔物の大量発生を確認。探索者協会は探索者へ討伐依頼を発令しました。』


「探索者?」


「ダンジョン?」


テレビ番組ではない。


周囲の誰も驚いていない。


それが当たり前の日常のようだった。


萌香は駅前の案内板を見る。


『八王子駅 零和暦六年』


「零和……六年?」


「令和じゃない……。」


嫌な予感が胸をよぎる。


スマートフォンを取り出す。


圏外。


電子マネー。


通信エラー。


銀行アプリ。


通信エラー。


クレジットカード。


認証不能。


「うそ……。」


とりあえず落ち着こう。


何か飲もうと思い、コンビニへ入った。


しかし値札を見て固まる。


天然水 二百八十円。


おにぎり 一個四百二十円。


カップ麺 五百二十円。


牛乳 五百四十円。


「高っ!」


思わず声が漏れる。


「何これ……。」


お菓子売り場へ向かう。


チョコレートが食べたかった。


だが並んでいたのは見たこともない商品だった。


『探索者携帯糧食 代用チョコ 四百八十円』


裏を見る。


原材料。


大豆。


芋でんぷん。


植物油。


人工甘味料。


人工香料。


カカオは一切使われていない。


店員が苦笑する。


「本物のチョコなんて、今じゃ見ませんからね。」


「降魔戦争でカカオ農園が壊滅しちゃいましたし。」


「今あるのは全部代用品ですよ。」


萌香は言葉を失う。


「チョコじゃないんだ……。」


「香りだけですよ。」


「味は茹でたジャガイモより少しまずいです。」


「探索者は栄養補給で食べてますけど。」


萌香は水だけ持ってレジへ向かった。


「二百八十円になります。」


スマホ決済。


反応しない。


クレジットカード。


使えない。


令和のお札。


店員は困った顔をする。


「申し訳ありません。その紙幣は現在使用できません。」


「えぇ……。」


萌香は財布をひっくり返した。


ポイントカード。


診察券。


レシート。


そして財布の奥から古い硬貨が出てくる。


百円玉。


五十円玉。


十円玉。


五円玉。


一円玉。


必死に数える。


「三百五十二円……。」


使えるのは、それだけだった。


令和のお札も。


電子マネーも。


クレジットカードも。


銀行口座も。


全部意味がない。


水一本買えば、ほとんど残らない。


萌香は店を飛び出した。


駅前広場で立ち止まり、頭を抱える。


「なんじゃこりゃあああーーっ!!」


八王子駅前に絶叫が響き渡る。


通行人が一斉に振り返った。


「あの子どうした?」


「財布でも落としたのか?」


「いや、泣いてるぞ。」


そんな視線も気にならない。


「お金あるのに使えないなんて聞いてないよー!」


「スマホも!」


「電子マネーも!」


「クレジットカードも!」


「全部使えないなんてぇーーっ!!」


その場にしゃがみ込み、半泣きになる萌香。


その瞬間だった。


背負っていたリュックが淡い金色に輝き始める。


「……え?」


光は少しずつ強くなり、頭の中へ声が響く。


――《転生者を確認。》


――《現代日本の商品を確認。》


――《ユニークスキル【魔法取り寄せ】を付与します。》


――《専用魔導具【転送リュック】を認証。》


――《初回起動を開始します。》


「……へ?」


萌香は光り輝くリュックを見つめたまま、言葉を失った。


異世界での第二の人生は、この不思議なリュックとともに幕を開けようとしていた。

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