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無能力者の僕は、魔界で最強のドラゴンに懐かれました  作者: くろあげは。
犯罪者集団《シャドウ・ハンズ》編
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第7話 真夜中の潜入

 ――深夜。


魔界能力学園《グリモワール》の寮は、すっかり静まり返っていた。


廊下の明かりも最低限に落とされ、窓から差し込む月明かりだけが、薄暗い廊下を照らしている。


消灯時間は、とっくに過ぎていた。


そんな中、寮の一室で、扉がゆっくりと開いた。


顔を覗かせたのは、僕だ。


「…………」


音を立てないように、そーっと扉を開く。


そのまま廊下へ出ようとしたその時、


「……お前」


「!」


背後から声がした。


僕の身体がピタリと止まり、ゆっくり振り返ると、ベッドに腰掛けたレオンがこちらを見ていた。


「何処に行くつもりだ」


「え、えーっと……」


僕は頭をかいた。


「あはは……ちょっとトイレ?」


「…………」


レオンはしばらく僕を見つめ、


「……バレバレなんだよ」


「え?」


「消灯時間はとっくに過ぎてる」


レオンは深いため息をついた。


「ルールを守らないと、相部屋の俺まで怒られるんだからな」


「…………」


僕が苦笑いすると、


「ごめん……」


レオンはベッドから立ち上がった。


「……はぁ」


そして制服を手に取り、


「レオン?」


僕は首を傾げた。


「だから――」


レオンは制服に着替え、


「盗難事件が気になるんだろ?」


「…………!」


「どうせお前のことだ。こっそり様子を見に行くつもりだったんだろ」


「…………」


「図星か」


「えへへ……」


僕は思わず笑った。


レオンは呆れたように息を吐き、


「……どうせ見つかったら俺も怒られるんだ」


「え?」


「相部屋だからな」


制服の襟を整える。


「だったら、俺も行く」


「!」


「ありがとう! レオン!」


「黙れ」


「え?」


「静かにしろ」


レオンが鋭い目で睨みつけ、


「夜中なんだぞ」


「あ、ごめん……」


僕は慌てて口を押さえた。


レオンは小さくため息をつき、


「……行くぞ」


「うん!」


僕たちは、誰にも見つからないように寮を出た。











夜の魔界能力学園は、昼間なら大勢の生徒たちが行き交う校舎も、今は不気味なほど静まり返っている。


廊下にはもちろん誰もいない。


聞こえるのは、僕たちの足音だけ。


「……なんか、昼と全然違うね」


「当たり前だ」


「ちょっと怖いかも」


「だったら帰るか?今なら黙っといてやるけど」


「やだ」


「…………」


即答する僕に、レオンは呆れたように目を細めた。


「お前、本当に懲りないな」


「だって、気になるんだもん」


「……勝手にしろ」


そう言いながらも、レオンは僕の少し前を歩いていた。


まるで、何かあった時に自分が先に対処するかのように。











――その頃、リリアーヌさんもまた、眠れずにいた。


「…………」


大きなベッドの上で、布団に包まりながら、身体を右へ、左へ。


「…………むぅ」


何度寝返りを打っても、眠気はやってこない。


頭に浮かぶのは、昼間の出来事ばかりだった。


学園で起きた盗難事件で、慌ただしく動き回る先生たち。


そして、生徒たちが口にしていた――。


犯罪者集団《シャドウ・ハンズ》。


「…………」


リリアーヌさんは布団をぎゅっと握る。


「あー、もう!」


勢いよくベッドから飛び起き、


「気になって仕方ありませんわ!」


そのままクローゼットへ向かい、学園の制服を取り出す。


「何か分かるかもしれませんもの」


そう呟き、着替えようとしたその時、


「……お嬢様」


「!」


静かに扉が開いた。


そこから、一人の男が姿を現す。


手には小さなランタンを持ち、柔らかな灯りに照らされたのは、整った顔立ちと執事服を身につけている。


彼の名は――、


**セドリック・ヴァレンタイン。**


リリアーヌ・ドラグニス専属の執事である。


「何処へ行かれるのですか?」


「……セドリック」


リリアーヌさんは少し驚いたように彼を見る。


「学園に行くのですわ」


そう答えると、リリアーヌは制服に着替え始めるが、セドリックは止めようとする様子もない。


ただ静かに、その姿を見守っていた。


「左様ですか」


「ええ。昼間の盗難事件……どうしても気になりますの」


「ほぅ……お嬢様が?」


着替えを終えたリリアーヌさんは、髪を整える。


するとセドリックさんがランタンを掲げた。


「なら、私も御一緒致します」


「え?」


「女性が一人で、こんな夜中に出かけるなど――」


セドリックさんは穏やかに微笑み、


「――あってはなりませんから」


「…………」


リリアーヌさんは一瞬、目を丸くして小さく笑った。


「ふふっ」


「どうされました?」


「ありがとう、セドリック」


「滅相もございません」


セドリックさんは恭しく頭を下げる。


「それが私の役目ですから」


リリアーヌさんは部屋の扉へ向かった。


「では、参りますわよ」


「はい、お嬢様」


目的は同じ。


――盗難事件の真相を知ること。


だが、誰も知らない。


静まり返った学園のどこかで、昼間の盗難事件と繋がる、もう一つの影が彼らを待っていることを。


月明かりだけが照らす夜の学園で、新たな事件の幕が、静かに上がろうとしていた。


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