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第27話 鐘の音の導き

そして男子達と合流すると、いよいよ肝試しのペアを決めることになった。


「それじゃあ、男子と女子で分かれて並んでくれ!」


幹事の男子が声を上げる。


僕達は言われた通り、それぞれ男女に分かれて並んだ。


「ペアは、じゃんけんで決めるぞ!」


「じゃんけん?」


「ああ。男子側で勝ったやつから、女子を一人選んでいくんだ」


「なるほど!」


「よし、いくぞ!」


「最初はグー!」


「じゃんけん――」


「ポン!」


「あっ!」


「ルカの1人勝ちじゃん!」


「わ〜い!」


僕は思わず拳を握り、


「じゃあ、ルカ。女子の中から好きな子を選んでいいぞ!」


「好きな子……?」


女子達の方を見る。


そして迷うことなく、一人を指差した。


「リリアーヌさん!」


「……え?」


リリアーヌさんが目を丸くすると、


「僕、リリアーヌさんがいい!」


「…………っ」


肩が、ぴくっと跳ねた。


頬がみるみる赤くなっていく。


「そ、そう……ですの……?」


「うん!」


僕は笑顔で頷くが、その瞬間、


「えええっ!?」


男子達から、一斉に声が上がった。


「ちょっと待て!」


「ルカ!?」


「俺、リリアーヌさんとペアになりたかったのに!」


「俺だって狙ってたぞ!」


「くそぉ……一番最初に勝つなんて!」


男子達が悔しそうに騒ぎ始める。


「えっ、そんなに人気だったの?」


すると、


「ふん!」


女子の一人が、男子達に向かって腕を組んだ。


「私達だって、あんた達よりルカくんやレオンくんの方がいいもんね〜?」


「ね〜?」


別の女子も笑う。


「ルカくんもレオンくんも強いし〜」


「分かる〜!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


男子達が慌て始め、


「なんでお前らまでルカ達を選ぶんだよ!」


「当然でしょ?」


女子達が楽しそうに笑う。


「強い男の子の方が頼りになるもん!」


「それにルカくんって優しいし〜」


「レオンくんも、なんだかんだ頼りになるよね」


「…………」


その会話を聞いていたリリアーヌさんは、少し複雑そうな顔をしていた。


「…………」


ルカが自分を選んでくれた。


それは、嬉しい。


とても嬉しいけれど、


「ルカくんって、優しいし可愛いよね〜」


「レオンくんも格好いいよね〜」


そんな声が、次々と聞こえてくる。


「…………むぅ」


リリアーヌさんの頬が、ほんの少し膨らんだ。


その尻尾も、さっきまで嬉しそうに揺れていたのに。


今度はどこか不満そうに揺れている。


「お嬢様?」


セドリックさんが、その様子に気付き、


「何でもありませんわ」


「そうですか?」


「ええ。何でもありませんの」


そう言いながら、リリアーヌさんは僕を見る。


僕は、男子達と女子達のやり取りを見ながら首を傾げていた。


「みんな、仲良いね」


「…………」


リリアーヌさんの眉が、ぴくっと動いた。


「……そうですわね」


どこか納得していないような声だった。


やがて、他の男子達のじゃんけんも始まり、少しずつペアが決まっていく。


「よし!それじゃあ、ルールを説明するぞ!」


幹事の男子が、みんなの前へ立つ。


「今回の肝試し合コンは、一組ずつ森に入ってもらう!」


「一組ずつ?」


「ああ。森の奥に、昔使われていた教会があるんだ」


「教会……?」


僕は森の奥へ視線を向けた。


木々が重なり、その先は昼間でも薄暗い。


「その教会をバックに、二人で写真を撮って帰ってくる!」


幹事の男子がスマートフォンを掲げる。


「ちゃんと教会が写ってる写真を撮って帰ってきたらクリアだ!」


「なるほど!それなら簡単そうだね!」


「まあ、昼間ならな」


男子が苦笑し、


「……?」


僕は首を傾げる。


「実はさ……」


幹事の男子の声が、少しだけ低くなった。


「この森、最近ちょっと変な噂があるんだよ」


「変な噂って?」


男子は森の奥を見つめ、


「最近、夜に森の近くを通ったやつが、妙なものを見てるんだ」


「妙なもの?」


「教会の中へ、誰かが入っていくところを」


「え、でもここって立ち入り禁止でしょ?」


「そう」


「それなら、僕みたいに入ってるだけじゃないの?」


僕が言うと、男子は首を横に振った。


「それが……人なのかなんなのか、誰も分からないんだ」


「え?」


「暗くて顔が見えないらしい。それに――」


一度、言葉を止める。


「教会に入ったところまでは見えるのに、その後、出てくるところを見た人が一人もいないんだ」


「…………」


女子達から、不安そうな声が漏れる。


「じゃあ……ずっと中にいるってこと?」


「それも分からない」


幹事の男子は苦笑した。


「だから、見間違いなんじゃないかって話もある。で、もう一つ、妙な噂があるんだ」


「まだあるんですの?」


リリアーヌさんが尋ねると、男子は森を見たまま答えた。


「夜中になると……教会の鐘が鳴るんだ」


「…………」


騒がしかった空気が止まった。


「鐘……?でも、使われてない教会なんだよね?」


幹事の男子は頷く。


「もう何年も使われてない。だから、鐘を鳴らす人なんていないはずなんだ」


「なのに……鳴るんですの?」


「そうなんだ」


男子が小さく頷くと、


「夜中に突然――ゴーン……って」


「…………」


誰も喋らなくなった。


昼間はただの立ち入り禁止の古い森で、木々の向こうに広がる暗闇が、妙に深く感じられる。


「……ちょっと怖くなってきたね」


僕が呟くと、隣のリリアーヌさんが胸を張った。


「な、何を言っていますの!」


「リリアーヌさん?」


「この程度の噂で怖がっていては、お嬢様の名が廃りますわ!」


そう言いながら、僕の浴衣の袖を、ほんの少しだけ掴む。


「…………」


僕は、それに気付かなかった。


「でも、誰かが教会に入っていくっていうのは気になるなぁ」


「ルカ……」


レオンが低い声で呼び、


「ん?」


「余計なことを考えるなよ?俺達は写真を撮って帰るだけだ」


「うん!そうだよね!」


僕が笑って頷いたその時だった。


森の奥から、金属を叩く音が聞こえたのだ。


「…………」


全員が動きを止め、


「今の……」


誰かが呟く。


もう一度、遠くから、あの音が聞こえる。


「……鐘?」


リリアーヌさんの尻尾が真っ直ぐに立ち、


「…………」


レオンも、森の奥を睨む。


そしてセドリックさんだけが、静かに目を細めた。


「……まだ、始めてもいないというのに」


穏やかな声だった。


けれど、その瞳には警戒の色が浮かんでいる。


「随分と歓迎されているようですね」


木々の隙間その奥に、何かがいるような気がした。


「…………」


気のせいだと思いたい。


きっと、そうだ。


けれど――また、鐘が鳴った。


まるで僕達を、森の奥へと誘うように。


そして肝試しの夜は、静かに幕を開けた。


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