↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能力者の僕は、魔界で最強のドラゴンに懐かれました  作者: くろあげは。
犯罪者集団《シャドウ・ハンズ》編
PR
23/43

第23話 共鳴

「まずは、これはいかが?」


リリアーヌさんが、手のひらに灯した炎へふっと息を吹きかける。


小さな炎がゆらりと揺れると、一気に大きくなり、まるで生き物のように形を変える。


「……!」


バルガの顔が、わずかに引きつった。


「そんなちっぽけな火、消し飛んでしまえ!」


強がるように叫び、巨大な棍棒を構える。


「ガハハハッ! 俺様に炎なんか――」


リリアーヌさんが手を振ると、


「これでも喰らいなさい!」


炎の玉が、バルガへ向かって飛んでいく。


「――って、近い近い近い!!」


バルガは慌てて横へ飛び退いた。


炎の玉が甲板へ落ち、


「熱っ!」


バルガの足元に炎が広がった。


「あちっ! あちち!」


バルガは慌てて飛び跳ねる。


「俺様、火は嫌いだ!」


「…………」


僕は目を丸くした。


さっきまで、あれほど余裕そうだったバルガがーー、


「逃げていますわね?」


リリアーヌさんが、じっとバルガを見る。


「逃げてねぇ!」


「では、こちらも」


リリアーヌさんの手のひらから、さらに大きな炎が燃え上がった。


「ひぃっ!?」


バルガが思わず後ずさる。


リリアーヌさんが炎を掲げて追いかけ、


「待て待て待て!」


バルガは甲板を走り出した。


「や、やめろって! クソガキ共!」


「誰がクソガキですの!」


「さっさとお家に帰って寝てろ!!」


「嫌ですわ!」


「なんでだよぉぉぉ!!」


バルガは逃げ回りながら、棍棒を振り回す。


「うわっ!」


僕は慌ててしゃがみ込んだ。


巨大な棍棒が、頭上を通り過ぎる。


甲板の一部が大きくへこみ、


「……危なかった」


「当たったら、ただでは済みませんわね」


リリアーヌさんも警戒する。


バルガは確かに強い。


炎を怖がって逃げ回っているとはいえ、棍棒の一撃は今でも強烈だ。


「だったら――」


「ぐっ!?」


一本の毒針が、バルガの腕へ突き刺さった。


「毒の呪い《ヴェノム・マレディクション》!」


さっきまで倒れていたはずのレオンが、ゆっくりと身体を起こしている。


「レオン!」


僕が声を上げる。


レオンは肩を回しながら、バルガを睨んだ。


「……さっきは、よくもやってくれたな」


「お、お前……!」


バルガが慌てて毒針を引き抜き、


「俺様には、そんなもの効かねぇぞ!」


「知ってる」


レオンは冷たく答えた。


「だから――」


もう一本、毒針を構える。


「何本でも投げる」


「はぁ!?」


バルガが避けるが、その逃げた先には――、


「おや」


セドリックさんが立っていた。


「お嬢様に、こんな姿を見られてしまうとは……」


口元を拭いながら、セドリックさんがゆっくりと立ち上がる。


「執事失格ですね」


「セドリックさん!」


セドリックさんは、いつもの穏やかな笑顔を浮かべた。


「ですが――」


その手には、一本のナイフが。


「執事にも、意地というものがございます」


「ぐおっ!」


バルガの足へ、ナイフが突き刺さった。


「いってぇ!!」


バルガが飛び上がると、その足元へ、リリアーヌさんの炎が迫る。


「ひぃっ!」


バルガは慌てて飛び退いた。


「やめろって言ってんだろぉ!!」


「まだまだですわよ!」


「おい! お前ら元気すぎだろ!!」


「元気にしてくださったのは、どなたですか?」


セドリックさんが笑うと、今度はフォークが飛んだ。


「うおっ!?」


バルガの腕にフォークが突き刺さる。


「食器を武器にする執事がいるかぁ!!」


「ここにおりますよ」


セドリックさんは涼しい顔で、もう一本のフォークを取り出した。


「ちょ、待て!」


バルガが逃げる。


「待ちません」


「来るなぁぁぁ!!」


バルガは必死に甲板を走り回り、右へ、左へ、炎から逃げ、毒針から逃げる。


ナイフから逃げ、フォークから逃げる。


「はぁ……はぁ……」


少しずつ、その動きが鈍くなっていった。


「ぜぇ……ぜぇ……」


棍棒を振るう腕も、次第に重くなっている。


「な、なんで……」


バルガが息を切らしながら呟くと、


「なんで俺様が……ガキ共に……」


また一本、毒針が刺さる。


「くそっ!」


バルガが棍棒を振り回す。


「遅い」


レオンが横へ避け、その隙に、セドリックさんのナイフが飛ぶ。


「ぐあっ!」


「まだ終わりませんわ!」


炎がバルガの背後へ迫り、


「ひぃっ!!」


慌てて前へ転がった。


「ぜぇ……ぜぇ……」


もう、完全に息が上がっている。


そしてバルガは、その場に座り込んだ。


「はぁ……はぁ……」


棍棒を手放すと、その身体には、毒針とナイフとフォークが何本も刺さっていた。


「……もう、無理だ」


バルガは両手をゆっくりと上げる。


「わ、悪かったって!」


僕とリリアーヌさんは、無言でバルガを見つめる。


「もうやらねぇ!」


バルガが必死に弁解するが、


「だから、その火を消してくれ!」


リリアーヌさんの手には、まだ炎が灯っている。


僕は拳を握った。


頭に浮かんだのは傷だらけで倒れていたレオンと、セドリックさん。


僕を助けるために戦ってくれた二人の姿だった。


「……ダメだよ」


僕は、一歩前へ出る。


「これは、レオンとセドリックさんの分だ!」


「なっ……!?」


バルガが目を見開くが、僕は拳を振り上げる。


その瞬間、リリアーヌさんが、僕の拳へ手をかざした。


「ルカ」


「……うん!」


「わたくしの炎も――」


炎が、僕の拳を包み込み、


「連れていってくださいまし!」


拳から腕へ広がる。


全然熱くない。


身体の奥から力が湧いてくる。


「……ありがとう、リリアーヌさん」


僕はバルガを見据え、


「これで――」


一歩、踏み込む。


「終わりだ!」


「ま、待てぇぇぇ!!」


バルガが叫ぶが、それはもう遅い。


僕は地面を蹴った。


「これでも食らってろ!!」


炎を纏った拳が、真っ直ぐバルガへ向かっていく。


「ひ、ひぃぃぃ!!」


バルガが顔を庇い、


「焔の踊り子《ブレイズ・ダンサー》!」


リリアーヌさんの炎が、さらに大きく燃え上がった。


炎を纏った僕の拳が、バルガの頬へ、深々と食い込んだ。


「ぐ……お……」


巨大な身体が、宙へ浮き、バルガは甲板へ叩きつけられた。


「…………」


動かない。


完全に、気を失っていた。


「……倒した?」


僕が拳を下ろすと、炎がゆっくりと消えていく。


「…………」


僕は倒れたバルガを見つめた。


「……倒したんだ」


「えぇ!ルカが倒したのですわ!」


リリアーヌさんが頷くと、その隣では、レオンが肩を回していた。


「……やったな、ルカ。やるじゃねえか」


「やった!」


セドリックさんも、傷だらけの身体で微笑んでくれた。


「見事な一撃でしたよ、ルカ様」


「えへへ」


レオンは少しだけ口元を緩め、セドリックさんも小さく笑う。


「さあ、帰りましょうか。学園長も待っておられますよ」


夜の海を渡る風が、甲板を吹き抜ける。


激しい戦いの終わりを告げるように――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。