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無能力者の僕は、魔界で最強のドラゴンに懐かれました  作者: くろあげは。
犯罪者集団《シャドウ・ハンズ》編
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第18話 怒涛のお嬢様

僕達――いや、リリアーヌさん、レオン、そしてセドリックさんの3人は、急いで東の倉庫へ向かった。


いつの間にか、外はすっかり暗くなっている。


昼間は賑わっていた街も、人通りが少なくなってきていた。


「……急ぎましょう」


セドリックさんが小声で言う。


3人は倉庫の近くまで来ると、物陰に身を隠した。


セドリックさんが慎重に辺りを確認する。


今は、誰もいないようだ。


港にも、魔物の姿は見当たらない。


セドリックさんは後ろにいる二人へ、静かに首を縦に振った。


それを合図に、リリアーヌさんが倉庫へ駆け寄る。


「……!」


重い扉に手を掛け、


「……重いですわ……!」


両手に力を込め、ゆっくりと扉を開く。


錆びついた音が、静かな港に響いた。


「ルカ!」


リリアーヌさんが倉庫の中へ叫ぶ。


「ルカ! 居ますの!?」


しかし――、


「……」


返事はない。


倉庫の中には、乱雑に木箱が積まれているだけだった。


「……そんな」


リリアーヌさんが辺りを見回すが、


「ルカ……?」


どこにもいない。


「でも……確かに、ここに居たはずですわ!」


リリアーヌさんの声が震える。


その時、


「リリアーヌ!」


倉庫の外から、レオンの声が響いた。


「こっちだ!」


「……?」


リリアーヌさんが外へ飛び出す。


すると、暗い海の向こうに、


「……!」


一隻の古びた旅客船が、ゆっくりと港から離れていくのが見えた。


船尾の明かりが、暗闇の中で小さく揺れている。


「……ルカ……」


リリアーヌさんの瞳が揺れる。


「……あの船に、ルカが……」


レオンが拳を握る。


「間違いない。微かにルカの匂いがする」


セドリックさんも海を見つめた。


「……出港したばかりのようですね」


旅客船は、少しずつ遠ざかっていき、


「……」


リリアーヌさんは唇を噛みしめた。


けれど、すぐに顔を上げる。


「……諦めませんわ」


その声には、もう迷いがなかった。


「次は――」


リリアーヌさんは海を見つめ、


「次は私が、ルカを助けるんですから!」


「リリアーヌ……」


レオンが驚いたように彼女を見る。


「あっ!」


リリアーヌさんが港の端を指差すと、


「レオン! セドリック!」


そこには、一隻の小型船が停まっていた。


「小型船……?」


レオンが目を丸くする。


「これなら追いつけるかもしれませんわ!」


リリアーヌさんは迷うことなく、小型船へ駆け出した。


「お、おい! 勝手に乗って大丈夫なのか!?」


「今はそんなことを言っている場合ではありませんわ!」


レオンも後を追い、二人が乗り込んだことを確認すると、セドリックさんも船へ乗り込んだ。


「セドリック! 運転お願いしますわ!」


セドリックさんは、遠ざかる旅客船を一度だけ見る。


「承知しました」


セドリックさんは運転席へ向かうと、エンジンをかける。


「……!」


小型船が大きく揺れ、


「きゃっ!」


「うわっ!」


「お嬢様、レオン様。しっかりお掴まりください」


「分かりましたわ!」


「あぁ…!」


セドリックさんが操縦桿を握る。


小型船が勢いよく海へ飛び出し、水しぶきが夜の海を駆け抜ける。


「もっと…速く…!」


リリアーヌさんが叫ぶが、


「お嬢様、これ以上は――」


「お願いしますわ!」


セドリックさんは一瞬だけ目を細める。


「……承知しました」


エンジンの音が、さらに大きくなり、


「――速度を上げます!」


小型船が波を切り裂く。


しかし、


「……縮まってない」


遠くに見える旅客船は、確かに近づいている。


けれどその距離は、思っていたよりも大きかった。


「そんな……!」


リリアーヌさんが手すりを強く握る。


旅客船は、夜の海の向こうへ進み続ける。


船尾の明かりが、少しずつ、少しずつ、暗闇に飲み込まれていく。


「……ルカ!……待っていてくださいまし!」


セドリックさんは前方を睨みつけ、


「必ず追いつきます」


その瞬間、旅客船の明かりが、波の向こうへ消えた。


「……!」


三人の表情が凍りつく。


「……見失った……?」


レオンが呟く。


夜の海には、何も見えない。


ただ波の音だけが響いていた。


リリアーヌさんは震える拳を握りしめ、


「……まだですわ」


「お嬢様?」


「まだ……終わっていませんわ!」


暗闇の先を睨みつける。


「ルカを――絶対に取り戻しますわ!」


小型船は止まらない。


三人は、姿を消した旅客船を追って、闇の海へと突き進んでいった。


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