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魔法使いが生まれる島  作者: 彩霞
第二章

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第25話 〈望遠〉の魔法

 しかし、アッシュは自分で答えながら、不思議に思った。


(そうだよ……。何で、焦げ臭いにおいがするんだろう? セフィは、「マリは学校を襲撃した」と言っていた。ということは、外から攻撃を仕掛けたってこと。それが不意打ちだったとしても、〈防火壁〉や〈防壁〉があれば被害になんてならないはず。マリが仲間と結託して行動したって、相手は魔法学校っていう大きな組織なんだ。しかも中には優れた魔法使いの先生たちや警備に精通している人たちがいるわけで、簡単に崩されるわけがない。だから守りの魔法が破られたなんて考えられない。近隣の住宅が燃えているにしても、魔法学校から一番近い家までも直線距離で一キロくらいある。それに〈炎〉の魔法だけが発動していたら、こんな変な臭いはしない。これは間違いなく何かが焼けている臭いだ。どこが燃えているのか、確認しないと……)


 するとそのとき、セフィが少し大きい声を出した。


「ちょっ、アッシュさん!」


「わっ、びっくりした。……大きい声を出しちゃだめじゃないか」


 驚いて彼を見上げると、セフィは魔法学校のほうを指さす。


「それどころじゃないっす! あれ見てください! 見るからに近寄ってはいけないような人たちがいるんですけど……!」


 彼が示す方向を見ると、十人近くの魔法学校の警備を担う者たちが、〈馬〉に乗りゆったりとした動きで、魔法学校の周囲を伺っていた。その内数人は、〈馬〉の後ろに〈浮遊〉で浮いた人々をくっつけている。セフィが言った通り、野次馬を捕まえているのだろう。


「あれは『騎士』だね」


 見た目はアッシュやセフィに似ていて、黒いローブを羽織っているため違いはないが、彼らは〈馬〉で移動している。これか「騎士」と言われるゆえんだ。


〈馬〉という魔法は、スーベル島の野生馬から発想を得て生まれた魔法だ。魔法で生まれた〈馬〉は美しい馬の姿をしており、全体が白い色をしている。


〈浮遊〉よりもずっと速く移動することができるという利点はあるが、魔力の消費量が大きい。「騎士」になるには沢山の試験を通過しなくてはならないが、その中の一つに「一日中〈馬〉を使えること」が条件にされている。


「あれが『騎士』……。実物を見るのは初めてっす。でも、なんか雰囲気が怖いっすね……」


「そうだね……」


 アッシュはセフィの感覚に同意した。

「騎士」たちはこちらには気づいていないだろうが、首を巡らす動きから「何者も見逃さない」といった圧力を感じる。


(これまで町中で見ていた「騎士」と、全然違う……)


「騎士」は普段、町に出て定期的に巡回することがあるのだが、これほど沢山の者たちが見回ることはない。いても二、三人程度だ。

 よって一時に出てきている人数の多さも、「怖さ」を感じさせるのかもしれなかった。


「どうするっすか?」


 セフィの問いに、アッシュは少し考えてから答える。


「そうだね……。じゃあ、ここからもう少し高度を上げられる? もう少し学校に近づきたいんだ」


「ええ? 危なくないっすか?」


「だから、〈浮遊〉で高度を上げるんだよ。『騎士』よりも高い位置に行けば気づかれない」


「騎士」は町の様子も見る必要があるためか、それほど高い位置にはいない。

 そもそもこちらは〈迷彩〉と〈ベール〉の魔法を使っているため、見破られないとアッシュは自負している。


「ホント、度胸あるっすよね、アッシュさん」


 セフィは小さくため息をついたが、アッシュの指示通り高度を上げて、少しずつ魔法学校に近づいていくれた。


 アッシュはセフィに周囲の見張りをお願いして、自分は〈望遠〉の魔法を使って、遠くから魔法学校をじっくりと眺めた。

〈望遠〉の魔法は、発動すると目の辺りにガラスのような膜が作られ、それを通してみると、遠くを見ることができる。

 大体、視覚に関する魔法は「ガラスのような膜」が作られて、自分が見たいように景色を見たり、風景を見たりすることが可能だ。


「その魔法、魔力はあまり使わないんですよね?」


 セフィがすかさず聞いてきた。アッシュが魔力不足になることを懸念しているようである。マリに怒られるのがよほど怖いらしい。


「大丈夫だよ。〈望遠〉は、ほとんど魔力は使わないんだ」


「……分かったっす」


 アッシュの説明に納得していない様子ではあったが、とりあえず引き下がる。

 どうやらセフィは、必要最低限の魔法しかマリに教わっていないようだ。


(時間があったら、セフィに魔法を教えたほうがいいかもしれないね。僕が魔法を使うたびに「それじゃ魔力は使うんですか?」「どうなんですか?」って聞かれるのは、何だか申し訳ないし、ちょっと……面倒……)


 アッシュは内心「そうだな。そうしよう」と一人で納得すると、気を取り直して観察に集中する。


(〈炎〉の魔法は今も健在みたいだけど、思ったほどじゃないね……)


 赤々と燃える炎は、魔法学校をぐるりと囲うように燃えていたが、やはり〈防火壁〉があって中まで燃え移っている様子はない。——と、そのときだった。


(あれ……?)


〈望遠〉で南側のほうを見ると、五階ある建物のうち、一階の複数の窓ガラスが割れ、そこから黒い煙がもくもくとはき出されていたのである。

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