三つのサヨナラ
早いことであと2〜3回で最終回です。
破壊的なギャグと破壊的なシリアスが入り混じったヘンテコリン作なので、後に作り直そうかな〜なんて思ってましたがやっぱりサディストはデリート候補です。
次回作はちゃんと話を作ってからアップしたいと思ってます。
テストが終わって、あっと言う間に俺と英里の時間にも終わりが来た。
俺は結局、日菜がいなかった間、夢中になって英里との日々を過ごした。
勉強なんか全然やってない。
日菜のことを、殆ど忘れてしまっていた。
今日から停学が解除されて、日菜と英里が学校に出てくる。
教室で椅子に座ってドキドキしながら彼女達の登校を待ってる俺。
どうか……バレませんように。
もしバレたら、俺は確実に極刑だから。
――ガラッ
勢いよく俺の教室のドアを開けたのは、
髪を短く切った日菜だった。
彼女はズカズカ入ってきて少しギクシャクする俺の前に立つ。
なんだか、会わないうちに更に毒気が抜けたような大人しい顔で、ニコリとしてる。
「日菜……」
――『会いたくなかった』
そんなに可愛くなってると、思わなかったから。
「麗央……、会いたかった」
笑顔が、胸に刺さる。
俺は取り返しがつかないことをしてしまったんじゃないか……。
今更そんなこと言っても、時間の針は黒い糸を結んだ前には巻き戻せないのに。
「今日、一緒に帰ろう……」
「でもお前、ダディに」
「……いいの、パパは」
どうしたんだ?
余りにも大人しすぎる。
――俺は、その時まだ気付いていなかった。
彼女の異変に。
学校が終わって一ヶ月ぶりに並んで歩く俺達。
今日の天気は、雨。
ちょうど付き合った当日みたいな。
俺は、また同じ過ちを繰り返してしまった。
電柱のあやしいビラに気を取られて、傘が傾く。
(ヤバい! 絞殺だ!)
ヒヤヒヤする俺に、日菜は肩に雨がかかった状態でつぶやいた。
「麗央……」
雨がアスファルトに打ちつける音と一緒に、その言葉が聞こえた。
「これが……最後の暴力だから」
「……え」
――パンッ
急に俺は彼女に平手打ちされた。
日菜は何も言わずに雨の中、走り出す。
気がついたら、俺はとっさに傘を捨てて追いかけてた。
掴んだ細い腕を引っ張り上げたら、彼女は……目が怒ってるのに、口が笑ってた。
「……英里と浮気してたんでしょ。あたし知ってたよ」
……どうして?!
「ずっと麗央の様子は聞いてたの……、敦士から。敦士はあたしが傷つくからってずっと黙ってたけど、しつこく聞いたらやっと教えてくれた。麗央と英里が浮気してることも、全然勉強してないことも……! 勉強してるんだったら、あたしは浮気してても許そうと思ってた……。でも実際は、あたしのことなんてすっかり忘れてたんでしょ? 違う?」
――違わない。
言い返したいのに、言い返せる言葉すらどこにもない。
「……別れてあげる」
俺が一番聞きたくなかった言葉。
サディストのプライドが傷つくからじゃなく、単純に、聞きたくなかった言葉。
俺が腕を放すしかなかったその場所は、ちょうど付き合った当日に事故にあった現場。
でも、どんな刑より、今殴られた左の頬が痛い。
「バイバイ……」
二度目の、サヨナラ。
今度こそ、間違いなく、本当の。
俺は遠ざかっていく小さな背中を見れなかった。
見たところで、この視界は、ハッキリしたものを映してくれない。
サディストな俺とも、今日でサヨナラ。




