07 屈折するレーザーみたいになった。
ボスの待つ部屋に侵入すると、ズゴゴゴと重厚な音を出す扉が自動で閉まる。床に置かれている大きめな燭台に、青白い炎が灯っていき部屋を照らした。
好き。
そのギミック大好き。
盛り上げてくれるじゃあないか!
「生意気な演出ですな。痴れ者めが! かかってくるがよいッ!!」
でもリゼッタのしゃくにさわったみたいで、敵意がつよつよです。
逆に緊張がほぐれてしまうんだが?
釣られたのか、玉座に座っているボスがリゼッタのほうを見下ろした。
王冠を被ったスケルトンだ。
ボスなんだし、ただの骨じゃあないだろうね。
不死の王、といったところか?
「カカカカカ、ワイショウ、ソンザイ、オロカモノ、カカッ」
大層ご機嫌なボスが、立ち上がりつつしゃべった。
「言葉を理解するんだ。魔物じゃないのか? 定型文を喋ってるのか?」
そんな疑問が浮かぶけど、リゼッタが一気に駆け出した。
駆け出す蹴り足が激しかったのか、ドゴーンとか音が鳴る。
「下郎がッ! 死して詫びよ!!」
ボスは骨だからもう死んでる設定だと思うよ?
勢いよく振り下ろされるリゼッタのめん棒を、豪華な杖で受け止めるボス。
リゼッタにはバフも掛かってるのにな。
ボスはガギッガギッとリゼッタの剣戟を弾き、その隙を狙って杖を突き出している。
なかなかの杖術だ。
「小癪なッ」
杖くらいは弾き飛ばす予定だったみたいだけど、リゼッタの想定以上に強かったようだ。もしかしたら僕たちがソロじゃなく、デュオだからかもしれない。
敵にもバフが掛かったって不思議じゃないだろう。
そうは言ってもボスだって、余裕があるわけでもない様子。魔法を使いそうな見た目のくせに、その隙を作りだせてないからな。
定番の取り巻き召喚すら許してないのは、さすがのリゼッタ。
そんなバトルを見て、なにをやってるのか分かるというのは、僕の性能も高いということになるね。
これなら僕も落ち着いて対処可能だ。
参戦しよう。
「魔法防御はどうかな? リゼッタ」
「ははッ!」
リゼッタが僕の意志を汲んで少し引く。
「魔弾斉射──疾風──」
おおっ、初めて使ったけど、発射から着弾までが速い速い!
これはなにもさせずに勝つってヤツが可能な魔法かも。
「さすがエリュシオン様! 見てください、コヤツの無様な姿。ふふふ、滑稽でありますなあ」
風の魔弾に弾かれ、なにもできずに固まるボス骸骨。
ノックバック性能も優秀だ。
ただ──
「魔法防御も結構なものを持ってるみたいだ」
「ムムッ? 確かに、骨のくせに硬いようであります」
そう。
結構硬い。
かなりの威力が出てるはずなんだけどね。
じゃあ色々混ぜて撃ってみるか。
なんて名前にするのがいいかな?
そうだなあ……。
「魔弾斉射──遊戯──と、しようか」
火、風、雷、土、水、氷、無属性をランダム発射。
弱点属性を確かめるのにも便利なのができたな!
「ほわぁああ!? キ、キレイであります」
想定外のエフェクトだけどね。
水しぶきと氷とダイヤモンドが、火とか雷の光を反射してる。そして風の流れに沿って光の道ができてるというか。
夜の道路で、車のライトが光りのラインになってる写真みたいなヤツ。
屈折するレーザーみたいになった。
「そういえば無属性の呪文考えてなかった」
「魔弾斉射──フニフニ──でありますか?」
フニフニ……言葉のチョイスよ。
「そう」
「エリュシオン様エリュシオン様、──無垢──はどうでしょう!」
「おお? やるね、リゼッタ。それにするよ!」
リゼッタのアイデアならなんでも来いっ!
「エリュシオン様のお褒め、ありがたき幸せッ。ああ、自分はもう死んでもイイであります……ぅぅれしっ」
いや、だから死んでるのよ。
僕たちは。
「クチオシヤァァァァァァァ」
「あ、弱点看破のつもりが……」
「当然の結末であります!!」
油断した。
相手の魔力に誘導してたから勝手にやっつけてしまった。
「ですが自分も、もう少し殴りたかったでありますな」
ゾンビが長くてスキルもなまってるってさ。
粉になって散らかったボスを見て、物足りないと漏らすリゼッタ。
確かに。
ほとんど僕が魔弾を撃ってただけだったしなあ。
「技名に夢中になり過ぎたのが敗因だ」
「ですが技名も大事でありますよ?」
「カッコよさって強さに比例するもんな!」
まあ、それはいいとして、僕たちの訓練という意味では難しくなったな。
野良ダンとはいえ、ラスボスでも余裕ってなるとさ。
いきなり同レベルの敵に出会わないよう祈るしかないか。
「戦闘力向上は、回数をこなすのがベストということかな」
「なるべく高難易度のダンジョンを利用するであります」
「あ、ところで復活はするのかな? そしたら訓練にも使えるし素材も多めに取れる」
リポップというか。
「するならボス狩りでもいいけど?」
「さ、さすがであります。魔王様の片鱗を見ることができようとは。私、感激しているであります!!」
あー、まあそうか?
ゲームじゃないしボス討伐が終わったら、もらうものもらってさっさと出るのか。
現実なら命を賭けてるんだし。
そういえば僕らって死ぬのかね?
これは試すわけにもいかないから謎のままだな。
「ま、ラスボスの復活を願ってチルタイム発動かな」
「それでしたらコアルームに。セーフエリアでありますので」
「ならそこで休もうか」
「自分はドロップ品を集めてくるでありまーす」
「あ、ごめん。ありがとね」
「お任せあれッ!!」
全力でお仕えしてくれてるからって、リゼッタを便利に使わないよう注意しないと、ダメな人間になってしまう。
せめてリゼッタがゆっくり休めることをしてあげたい。
「待って、リゼッタ、ちょっと待ってて」
「はい? ははっ」
うーん、なんだろう?
アフタヌーンティー的な?
貴族的?
茶会魔法?
でも茶会となると格式とかがまったりを邪魔するか。
茶屋魔法にしよう。
ケーキとか珈琲と紅茶も必要なので美食魔法も追加っと。
「創作魔法を起動するから、ちょっとゾンビタイム」
「かしこまりました」
これが厄介だよな、って思いつつ妄想と想像で魔法を作った。時代劇に出てくる団子とお茶のお店から、ちょいとよさげなカフェまで使えるように。
この魔法、厄介なことをやるから、完成までに時間がかかったな。
「おまたせ。コアルームでチル準備しておくから」
「楽しみにしてるであります!」




