06 元気な死体しかいない空間
調べると通路にいる魔物は、多数。
なにが待機しているのか、索敵魔法では分からなかった。
もう塊って感じ。
念のため、僕たちに強化魔法を掛けておく。
ありがたき幸せでありますとか、大げさなお礼を言いながら、リゼッタは敵の予想をしている。
「ピラミッド型ですので蝙蝠型の敵とかでありましょうか?」
「さぁーて、鬼が出るか蛇が出るか。秘密の扉を開いてみようじゃあないか」
「ははっ! ……ここでありますか?」
「魔力注入タイプみたいだから僕がやるよ」
「はっ」
ススッと下がったリゼッタに代わり、僕が前に出る。
壁に手を付き、魔力を注ぐとガコンと音を立て、壁の一部が床に沈んだ。
「いいね。こういうギミックはテンションが上がる」
「参考になさいますか? エリュシオン様」
「だね。覚えておくよ」
「現在は野良ですが、どこぞの魔王が捨てたダンジョンなのかもしれませぬな」
「ああ」
ゲームなら、充分あり得る。作ることにだけ興味があるとか、人がこなかったとか。単純に飽きた、なんてのもいるだろうから。
ピラミッド型なんて、自然発生じゃなさそうだし。
でもここは現実。
この世界にはダンジョン作成のテンプレみたいなのが、あるのかもしれないね。
僕は暗い通路に照明魔法を放つ。
節電的なことをされていたので明かりがついていない。
索敵に反応があった場所を照らすと、金ぴかの床が照明を反射した。
「床が蠢いているであります!!」
「わぁステキッ……とはならないもんだなあ」
カサカサ動いてるからか?
「黄金のスカラベですな、あれは」
黄金といっても、金がもらえるわけじゃあない。
魔鉱物をドロップするんだっけな。
「魔弾斉射──凍結──」
「あっ、容赦なしであります」
「僕らの用事はこの奥だからね」
虫系だから冷気には弱いだろうと思ったけど、それは正解だったようだ。索敵魔法から反応がどんどん消えていく。
「むむ? スカラベの数が減ると部屋の中に反応が現れた。数は3」
現れた数が少ないから、期待できる敵でしょうな?
ン? ン?
「それもギミックという訳でありますか」
「かもねっ、と。終わった。素材を集めよう」
「はは」
魔石は全部リゼッタに渡す。
吸魔の結晶がパンパンになるまでは、チャージ用ってことで。
スカラベの何体かはレアドロップしていたようでミスリルが手に入った。
「リゼッタの髪飾り作ろ―っと」
「え!?」
「あ……え、と、まあ……か、感謝の気持ち的な?」
「で、あります……か?」
つい口から漏れたけど、普通に推しを着飾りたい欲ですゴメンナサイっ。
でもモジモジリゼッタをいただきました。
ありがとうありがとう。
「で、では参りましょうぞっ!」
リゼッタが隠し通路の先にある扉を開ける。
コラコラ、慌てたら危ないって。
僕はもう一度強化魔法をかけ直した。
「あっ、ありがとうございます!」
「スケルトンナイトか」
「いただいても?」
「もちろん。リゼッタの好きにして」
さっきは僕が全部取っちゃったからな。
「はっ」
返事と同時に弾けるように駆け出すリゼッタ。
格好は台所にいそうな女の子だけど、意気揚々とスケルトンナイトに切りかかる。
騎士同士(?)の戦いだ。
「ふははは! なっておらんぞ、貴様ら!! あの世で修行し直すがよいッ」
元気な死体しかいない空間で、そんなことを叫んでるよ。
でもリゼッタが嬉しそうでなによりでございます。
僕もにっこりだぜ。
「えーと、あの辺りが開きそうかな」
魔力的な回路を感じる壁の前で待機。
リゼッタが全部引き受けてるから、僕は自由に動けるのだ。
彼女はタンクとしても優秀なので、なんの問題もないのさ。
こっちに来ようとする敵を、撫でるように攻撃して意識をリゼッタに向けてる。
面白いのがめん棒で殴りかかってるのに、スケルトンの盾には切り傷ができてるとこだな。
スラッシュ系のスキルを使ってるんだろうか。
めん棒で細切れにされるスケルトンが不思議なだけですな。
消しゴムが散らかってるように見える。
まっこと不思議な事件じゃったんじゃよ?
「お見事!」
「ありがとうございます。しかし歯ごたえはありませんでしたな」
「野良ダンだと、この程度なのかもね」
ドロップアイテムだけど、黄金のスカラベのブローチを落とした。
他は骨と錆びた盾。
インベントリに入れて鑑定すると、見た目のままって感じ。
素材と換金アイテムだった。正直に言えば、スカラベのほうがいいものが出た。ピラミッドだから定番と言えば定番なのかもな。
スカラベくんは。
隠された宝はどうだろうね?
リゼッタが骨たちを倒したので、壁が開いて宝箱がコンニチワしている。
「なんでありましたか?」
こっちもインベントリに入れる。
鑑定と同時にお片付けだけど、鑑定魔法も作ったほうがいいかもなあ。
「衝撃ボーナス付きのメイスだ」
「そこそこの値段で売れそうでありますね」
「うん」
僕が作ったリゼッタ用めん棒のほうが強いから、これも売却用だな。
インベントリの中が空になってたから、当面の生活費なんかもなくなってるし、丁度よかったのかもしれない。
「ボス、行くか」
「はい。このダンジョンでは役不足であります」
素材的にも物足りないから、探索は切り上げることにした。
「では御案内いたします」
途中に出る魔物も全部狩っていく。
定番の皮、牙、爪。
その他、包帯、眼球、心臓なんかはピラミッドタイプ特有の素材だろうね。
そしてボス部屋──王の間への入り口に立つ僕たち。
疲れもないから、このままボス戦に突入することにした。
物防魔防に素早さとスタミナにバフを掛ける。
ターン制RPGとは違うからな。
相手のターンなんて与える必要はないのさ。
「エリュシオン様との共闘、燃えるであります!!」
基本戦術は、リゼッタにタゲを取ってもらいつつ、僕が火力を出す方針で間違いはないでしょう。王の間というくらいだから部屋なんだろうし、変に部屋の真ん中に行かなければ挟撃されることはないはず。
「僕も燃えてきた。行くか!」




