05 ダンジョン作りは魔王の特権なのだっ!
「素材も集めながら行こうか」
そうしたらゾンビ化も少ない時間で済むはず。
素材を使えば、魔力で作る部分が少なくなるからな。
「ではボス一直線ではなく、魔物も狩るでありますか?」
「ああ」
インベントリに入れておけばいいし。
「インベントリ」
「どうかなさいましたか? エリュシオン様」
「いや、ただの確認」
あってよかったインベントリ。
ステータス見れたから、当然あるものだと思い込んでたよ。インベントリなんて魔王スタート以上のチートだからなあ。そう考えたらかなり恵まれてるね。
まあ……中身は空っぽになってたけど。
リゼッタが仲間になってるから許そう。
「いよいよでありますな!」
「ああ、出撃だ!」
僕はリゼッタが塞いだという壁に向かって魔弾を撃つ。
「魔弾斉射──金剛──」
「ダイヤは売れるでありますか?」
「消えるから無理だね」
「残念であります」
このダイヤは付与魔法のだしな。たぶん消えない設定にしたらゾンビ化すると思うよ。それに……合成ダイヤなんじゃないかな?
宝石としての価値は低いのではないかと。
「壊れておりますが、ここの扉の向こうはセーフエリア外であります」
「了解……ゴメンだけどもうちょっと待って」
「はっ。なにかお忘れでありますか?」
「索敵魔法を作るよ」
「失念しておりましたな!」
ゾンビ化、創作魔法、ゾンビ化解除セット起動、といういつものヤツを行使した僕は、やっと異世界の冒険に出発できた。
いよいよ戦闘と素材集め開始です。
しかし索敵魔法だけだと、方向は分かるけどマップがなければ微妙だったな。これはあとで作り直すことにしよう。
ないよりはマシだが。
「リゼッタはこのダンジョンのマップ、把握してるの?」
「ボス部屋の場所以外は、なんとなく程度であります」
探索したわけじゃないから階段の位置くらいらしい。
そしてボス部屋は、ここから近い場所にあるそうだ。
「それならこの階層を探索しようか。宝とかあるかもしれないし」
「ブランクも埋めなくてはなりませぬ」
「僕にいたっては初の魔法戦闘だ」
「ふふふ、あの魔弾さえあれば、エリュシオン様に敵などおりません!」
「だと嬉し──おっと? 近くに湧いたな。数は5」
索敵魔法に反応あり。
「ははっ。最下層の魔物でありますので、我々の調整には最適かと」
「なるほどね」
自信満々女子はやられてからが本番界隈だけど……実戦なので望みませんぞ。
リゼッタのクッころイベントなんて僕がゆるさん!
「むむ? リンクしたかもしれない。敵増援9時方向より4」
「腕がなるであります!」
「リゼッタは9時方向を担当。僕が正面に行く」
「はっ!」
「会敵まで5、4、3、2、1──今! 魔弾斉射──雷電──ッ」
ゲームと違って、魔物の頭がいいのか?
それとも魔王が直接操作してるのか?
「リゼッタ、ここの魔王は?」
「野良のはずであります!」
野良ダンジョンか。
野良ダンは魔王のいない、もしくは自然発生したダンジョンのこと。
つまり今現在、魔王が無関係なら魔物の頭がよくなってるってことだ。
「しかしッ」
あんまり関係なかった。
雷撃の魔弾で、地獄の番犬5匹はあっという間に処理できた。
「さすがでありますな、エリュシオン様はっ! 美しくも苛烈──なおかつ、守りたくなるようなたたずまい。このリゼッタ、新鮮なエリュシオン様を見て、幸せを噛みしめているのでありますっ!!」
リゼッタも余裕らしい。
「僕を見てないで終わらせるように!!」
新鮮らしくてガン見されてたようだ。
新鮮て。
しかし魔物は子犬じゃあないんだけどな?
キャンキャン鳴いてやがるぜぇ?
地獄の番犬、戦闘の調整には物足りなかったか。
「ふん、物の数ではないわ。さ、終わったであります、エリュシオン様っ」
「ナイファイ!」
ぱあっと笑顔を浮かべ、リゼッタが応答する。
「ナイファイであります!」
その笑顔を見るために、僕はガンバルのだ。
「エリュシオン様、素材であります」
「ありがと」
僕が倒した分も合わせてインベントリに入れる。
また0からの集めなおしだけど、素材がたまっていくのがいいんだよね。
「楽しくなってきた」
「ならばおかわりを探しましょうぞぉ~」
リゼッタも楽しそうでなによりだ。
「あ、魔石はリゼッタの吸魔の結晶にチャージしちゃって」
「よろしいので?」
「もちろん」
魔法系の僕は自分の魔力でカバーできるけど、リゼッタは騎士だからね。魔力の自然回復分だけじゃ足りない。
吸魔の結晶に魔力をしっかりチャージしておかないと、ゾンビ化しちゃうのだ。
「えー、と。おかわりはなるべく近そうなヤツに向かおう」
僕は敵性反応がある方向と一致しそうな通路へ進む。
途中で見当違いの方向に曲がる可能性もあるが。
「マップ表示がないのが不便だ」
「エリュシオン様の霧を飛ばす方法が不可能になりましたからね」
定番の方法だったんだけどな。
今はヴァンパイアじゃないから使えなくなった。
「ボスを倒したあとにでも地図魔法を創作するさ」
ふむ。
どうやら当たりだったか?
「隠し通路があるみたい」
「ほほう、野良の割には当たりのようでありますな」
魔物が通路に並んで配置されてるようだ。モンスターハウスの通路版というか。だとしたら、この奥はいいお宝が隠されてそうだよな。ギッチリと魔物を積むときには、それ相応の報酬を用意しないといけないのが、ダンジョン作成のルール。
そこら辺のバランスを見ながら、ダンジョンは運営しないといけないんだ。
DP稼ぎに人を呼びたいなら、だけど。
そういう意味では僕が作ってたのは、過疎ダンジョン。
アイテム作りがメインだったからね。僕的にダンジョンは、自宅兼秘密基地みたいな存在。作り始めの一番楽しいタイミングだったんだけど、悲しいかな僕のダンジョンは潰れてるんだろう。
リゼッタが野良ダンジョンで僕を復活させてるし。
僕が死んでたから仕方ないんだけど、もったいないよなあ。
とはいえ──ダンジョン作りは魔王の特権なのだっ!
今は最初から魔王になってる強くてニューゲームだし、ダンジョンは作り直すことにしよう。
ヴァンパイアじゃなくなったから、城型ダンジョンも似合わないしな。
ここのダンジョンを奪うってのも──ありかな?
そんなことを考えながら、隠し通路の前に立つ。
もらえるものはもらっておこう精神大事。




