35 だからリゼッタは真っ赤に。
勇者んちからコアをパクった翌日のこと。
ぐっすり眠ってスッキリしたあとのこと。
朝の会議をお送りいたしまぁす。
「ダンジョンをアップグレードしようと思う!」
「ガーデンコアが6個もありますからね!」
ダンジョンの形は、正ピラミッドと逆ピラミッドを重ねた立体の六芒星型。
画像を出してリゼッタにも共有する。
「こんな形になるよ」
「絵に描いた星や氷結系の結晶に見えますな」
「だがしかしッ! これはピラミッドの2段重ねなのだ。超高出力のピラミッドパワーが──得られるはずさっ」
「私たちには大切なパワーでありますからね。期待してしまいます!」
「ステータスは元に戻ったから、また心臓は使えるし……ダンジョン作成用の素材はバッチリってことさ」
前に心臓を捧げたときのデバフは、若干の子供化を除いて回復しているのだ。子供解除は時間かも?
成長的なね。
「し、しかしそんなにエリュシオン様の身体を消費して……大丈夫なのでしょうか?」
「平気だと思うよ。連続で2個の心臓を使っても1ヶ月程度のデバフだったし。少し子供になるのはよく分からないけどな」
デバフが重なったからステ的に子供? みたいに判断されたのかもしれない。
僕が創作したゾンビ化解除セットに……。
「つまり、また小っちゃくなる可能性があるのでしょうか?」
「いや、今回は連続使用しないから身体に影響あるのは、デバフくらいになるはず」
「それならよかったであります。身辺警護はお任せください」
安心したような、ちょっと残念そうな顔してるし。
「ありがと」
リゼッタくん、趣味が出ておりますぞ?
ま、問題ないでしょう。子供が進んでもリゼッタが嬉しいならさ。
それに戦闘面にしたって最初に勇者とやったときも、軽くデバフは残ってたけど簡単に封殺できたし。
昨日のあの様子じゃデバフがあっても、問題にはならない高性能っぷりの身体なんだよな。
プレイヤーの技術というか発想を使えるのが、僕とリゼッタだけだからね。
「さて、さっそくダンジョンを作ろうかと思うんだけど……」
「なにか懸念がございますか?」
「コアどうしようかなって。もう1個出すか、融合させるか」
「ダンジョンコアが3つあっても使い道はなさそうですが」
「ダンジョンマスターを作って運営を任せるのも手かなって気もするんだよね。僕たちは居住空間の充実に心血を注いだっていいん……だし? どうしたの?」
なんか急に真っ赤になったリゼッタ。
「い、いえ……その、将来的に……私たちのぉ、そのぉ……」
子供か!
「は、早いよ、その考えっ! 先にけけ、結婚じゃん!!」
「つ、つい考えてしまっただけでありますが!?」
高性能な僕たちは、思考速度も速いんだろうね。
子供ができるということは、そこにいたるまでのプロセスを頭脳がシミュレートしたんでしょう。
だからリゼッタは真っ赤に。
僕はえっちなリゼッタも大好きだよ!
居住空間の充実と3つ目のコアで、2人の子供って発想になったのかな?
「そう思ってくれてるのが凄く嬉しい」
「は、はい……」
これは結婚をちゃんと申し込むべきだな!
新婚さんムーブじゃん、とかじゃれてたとき、僕だって妄想してたことだしな。しかし……まさか僕が結婚を考えるようになるとは思わなかったなあ。
「それだけリゼッタが魅力的ということか」
「ええ? なぜその答えになったのか分かりませぬが……エリュシオン様にそんなこと言われたら、どうにかなっちゃうでありますよ?」
「僕たちはどうにかなるために頑張ってるんだから、それでいいの!」
リゼッタが恥ずかしそうにうなずいた。
儚げ清楚美人の恥ずかしうなずきは、どんなレアアイテムよりも貴重体験をもたらしてくれるんだぜっ。
相談した結果、ダンジョンコアは3個に増設することになった。ダンジョンマスターを作って、ダンジョンの雑事はお任せしてしまうのさ。
人型で操作させるとお邪魔虫的になっちゃうから、コアに宿る感じのパターンにする。AIだね、ようするに。
「そうだ、ダンジョンができる様子とか見てみようよ。ダンジョンの外見の様子映せるはずだし」
「おお、それは面白そうですね! こちらのコアで出しておきます」
「フウゥ、よし! じゃあいよいよ──」
「はっ!」
ダンジョン作成だ。
僕のステータス画面から、ダンジョン作成を選択してマップ画面を開く。
ダンジョン作成の場所を示す旗を現在地にセット。
僕の新鮮な心臓をシステムに捧げた。
「ゴゴゴゴとかもなく作られていくんだな」
「そうでありますね」
ヌルっと作られていく感じだ。
なんていうかBGMや効果音もなしで、なにかを作る3Dの映像を見てるような気分っていうのが近いかな。
「あんまり実感は湧かないけど、効果はバッチリのはず」
「確かに神秘のパワーは感じませぬが……ひ、一仕事終えましたね、エリュシオン様」
「ン? うん。ン? ……う、うん」
ピラミッドパワー増量は感じないけど、ダンジョン作りという仕事は終えた。
つまり、高出力のピラミッドパワーを試すにはどうする? ってことだ。
リゼッタが言いたいのはね!
「隠れ家カフェ近くの滝を見ながら……お、温泉にしよっか」
「はい。さ、さっそく参りましょう」
「なんか……期待と興奮と不安が混ざった変な気分だよ」
「でありますな。私たちは今までの、その、経験から……ゾンビ化するのではないか。そんな思いが強くなっておりますから」
ワカル……。
えっちしようとしてチソチソ脱走っていう、意味不明な経験をしたからね!
エロ同人ゲーでも未経験だよ、そんなのは!
はたして僕たちの運命やいかにってヤツだ。
まずは念のために目をつむった状態で入ることにした。
思わず開眼した心眼は、白っぽいモヤのかかった世界に見えるというか、輪郭が見える感じなので問題ないのだ。
「すべすべのままでありますね、エリュシオン様」
「うん。リゼッタの肌もすべすべつるつるだ」
お互いに洗いっこ。
なんと背後からだけではなく正面も追加で。
「エリュシオン様、心眼を利用した入浴ではあまり意味が……」
「わ、分かってる」
分かってる……んだけど、推しが目の前で腐っていく光景ってビクッとなっちゃうからね。
「勇気を振り絞る必要があるんだよね。ピラミッドパワーがたっぷりあってもさ」
「では私がお先にいただいても?」
先にお風呂入る時の言いかたじゃん? それ。
僕はリゼッタの手を握る。
ガシッ、だよ。ガシッ。
だって先に見るとか、なんかズルいし。
「いーや、同時! 同時に見よう!」
「了解であります。では5、4、3──」
主導権を握っているようでリゼッタも緊張してるのか、握った手の感触が硬い。
「ああ……エリュシオン様、ついにっ」
「うん、せ、成功だね……っ!」
僕たちは一糸纏わぬお互いの姿を、見ることに成功した。




