34 僕の後ろを取ったわんぱく勇者が、元気な声を上げて切りかかってくる。
「エリュシオン様、ご覧ください。勇者どもが!」
ダンジョンの監視をしていたリゼッタからの報告。
「なになに?」
なんか嬉しそうだ。
リゼッタ側のモニタを覗き込む。
「おおっ! 復活勇者の人工精霊、復活したんだな」
精霊の箱庭を失ってから復活まで、1週間かかってる。
いや、でも受ける恩恵に比べれば早いか。
「勇者たちがちゃんと使ってないからさ、箱庭がもったいないんだよなあ」
「ふふっ、ですがもらっちゃうのでありましょう?」
「それはそう」
「では予定通りに?」
「ああ。公園勇者のほうからもらう」
せめて交互にしたほうが長持ちしそう──とかいう悪辣な考えが出てきた。なんか我ながらヒドイんだけど、これって魔王的な精神になってるのかな?
勇者がろくでもないヤツらになってるから、ガッカリも含めて僕は平気なのかも。
謎ですな。
「公園勇者が帰ったら作戦決行だ」
「了解でありますが……帰宅時に狙うのですか?」
「ダンジョンで死ぬと復活しないんじゃないかと思ってね」
「あ、確かに。DPになってしまいますな」
それを考えるとピラミッドダンジョンの玄室って、特殊な環境なんだなあ。リゼッタは古代の文献を調べて、僕の復活を狙ったみたいだし。ってことは、プレイヤーが知らないだけで、設定は作ってあったのかな。
追跡魔法で勇者の動きが止まった。
どうやら眠りに落ちたようなので、箱庭に向かう。例によって空からコッソリ侵入するよ。
箱庭に入ると復活勇者のほうが待ち構えていた。
「ほほう?」
「生意気にも待ち伏せていたようでありますな」
「魔王がダンジョンの外に出るというのは、確定したようだな。報告を受けたときには、正直我が耳を疑ったぞ? フフフッ、我らを恐れ、引きこもった魔王が外出するとはな。くふははは、くくっ」
なにかの琴線に触れたのか、ツボにはまってワロてる勇者。
「見た目は前回の遭遇と違うしよ」
「小癪な魔王ね。偽装の能力が高いだなんて」
「ああ。分かってしまえば、どうってことはねぇな!」
「ダンジョンとは違い、ここは我らの庭。貴様らごときに好き勝手などさせぬわ!」
「本当に諜報に関しては優秀なようであります」
「な。結構ビックリ。箱庭の使い方もなってないのにさ」
「アゴで使っている人間のほうが優秀というパターンなのでしょう」
「あら、自分の考察が正しいと信じているのね? 滑稽だわ」
「死、あるのみ! バトルオーラ発動ッ!!」
「油断さえしなければ、貴様たちは我らの敵ではないと理解するがよい!」
盛り上がる勇者たちに対し、リゼッタがスッと僕の前に立つ。
「今回こそはお任せ下さい。よろしいですか? エリュシオン様」
「ウッ……わ、分かった」
前回のことを根に持たれてるなあ。取っちゃったからね。僕が。
「我が魔王、死の館のエリュシオン様が腹心。デスナイトのリゼッタ! 恐れぬならばかかってくるがよい!!」
おおっ、そういえばそんな称号もあったな。
高貴なる御子とかも。
高貴っぽく僕とリゼッタにバフをかけておこう。
「リゼッタ、きみの力を見せてもらおう」
「余裕こいてんじゃねぇ」
僕の後ろを取ったわんぱく勇者が、元気な声を上げて切りかかってくる。
だけど──
「我が聖域に踏み込ませるわけがなかろう?」
──リゼッタが割り込んだ。
そして僕の側を聖域とか言われて、僕は嬉しく思います!
ある意味では告白みたいなものだしっ。
そんな大したものじゃないと思うんだけどな。
火花散る剣戟を見ながら、僕の心はホカホカしちゃったよ。
「少し歯応えがあるではないか。修行でもしたか? 勇者たちよ!」
バフは不要だったかな?
自前のスキルでどうとでもなりそうな雰囲気だね。前衛のリゼッタには色々な移動スキルとかもあるからな。
僕を取り囲んでる勇者たちの間を高速で移動しながら対処してくれてるんだ。
バフまでかかってるから、僕もチラついて見えるな。
「ウオオオオオオオオッ!!」
「風よ!!」
「宿りし魂よ! 力を解放せよッ!!」
勇者たちの装備も魔剣とか持ってるみたいで、色々と能力を解放してリゼッタに対処しようとしてるな。
でもそれ、ウチのダンジョンで掘った装備だし……浅い階層のだし……。
能力不足だよ?
「甘いぞ勇者っ!」
楽しそうでなによりだね。
リゼッタが戦闘訓練できるように、強い魔物をダンジョンに用意したほうがいいかもしれないな。
経営シミュ系じゃなく、ハクスラ系を好みそうだから。
「おっと?」
「やれやれ、やっと来てくれたのかい? 私たちを待たせるなんて許しがたい行為だ」
「ハハハハハ! もはや貴様らの運命は決まったようだ」
「よい具合に分断させてるじゃないか」
公園勇者も参戦してきた。
僕たちを仕留めるために、ちゃんと作戦を立ててたってことだ。
「おかわりは僕がもらうよ」
「仕方ありませんね」
「なにッ?」
僕の側にスチャッと参上したリゼッタが返事すると、公園勇者が驚く。
うん。
せっかく分断したと思ったのに残念でした。
だがしかし──
「ぐぬぁっ!?」
「勇者よ! 油断が過ぎるぞ」
──リゼッタは僕から離れて、復活勇者のほうへ突進した。
「魔弾斉射──疾風──」
僕だって単機で制圧可能だからね!
ガーデンコアを取る前にやり過ぎるとダメなので、マジックミサイルの威力は弱めて射出した。
ノックバック性能の高さを利用して、公園勇者と復活勇者を分断するためだよ。
「クッ」
「なんとォォッ!!」
「うがっ、ック……威力はそれほどでもないが、厄介な速度ッ」
「暢気だね。そんな感想を言う前に対処しないと」
「黙れ!!」
「魔弾斉射──雷電──」
「ぎゃウッ」
「アギィィッ」
「ギャアアアッ」
「ほら、油断するからこうなる」
っていうか、人工精霊を起動しておきなよ……なにやってんの。
「戦闘経験が少ないのかな?」
「でありましょう」
「あ、リゼッタも終わった?」
「はっ。つつがなく」
「見逃しちゃったか」
「では次回がありましたら御覧いただきましょう!」
「あ! それ全部もらうっていう宣言じゃん」
「ははは、なにを仰いますやら、はははは。エリュシオン様ったらもう」
全部取るの確定じゃんか。
「まあいいか。僕はどっちかと言えば生産系だしね」
「そうですよ、エリュシオン様。戦闘は私にお任せください」
「うん。じゃあコアもらって帰ろうか」
「はい」
「というわけで、ガーデンコアはもらって行く。再戦をお待ち申し上げておりまぁす」
「御慈悲をもらえてよかったな? 感涙に溺れてエリュシオン様の御言葉を噛みしめるがよい、勇者どもよ!」
ぐぬぅぐぬぅ言われたけど、予定通り公園勇者のコア3個もをらって帰った。
対あり、乙でした。




