32 僕の手を取って、僕の指を舐めるリゼッタの顔が、えっちだ!
「そういえば──復活勇者のほうだけどさ」
勇者たちはダンジョン攻略に勤しんでいるだけだな。
公園勇者の戦闘力も特筆すべきものはない感じ。
コイツらの人工精霊もテンプレの球体のままだ。
「なんでしょう、エリュシオン様」
「いや、箱庭作ったのかなーって。無限稼ぎできるじゃん?」
「おお……勇者は戦慄するでしょうな! 感服いたしました!!」
「見に行くなら今のうちかなって。星空のデートと洒落込もう」
「はい」
にこっ、だって。くそぅっ。
リゼッタは微笑で僕を殺しに来るね。
僕に微笑んでくれるってのが、悶えるくらいの喜びを与えてくれるんだ!
嬉しみの極ッ!!
「おつまみの準備、先にしてもらってていい? 僕は偽装の指輪の強化をしてから参加するよ」
「お任せ下さい。ワインに合うものでよろしいでしょうか?」
「うん」
勇者陣営に魔王バレしてた可能性ありだからね。偽装のプリセットのモブ冒険者を、全部別のモブ冒険者にチェンジ。
さらに魔力の偽装も施した。
他人の魔力はダンジョンで色々見れるしね。冒険者のも一般人のも参考にさせてもらった。
魔力パターン黒、魔王です! 的なのがあるかもだしさ。
「エリュシオン様、摘まむものをいくつか用意したであります」
「も、もう? 一緒に作るの、間に合わなかったかあ」
「い、いえ、私の都合でパパっと……」
「そうなの?」
……なんか邪な気配を感じた。
真剣に作業するリゼッタを、僕が見るときのような邪な気配を……。
魔王的な定番のセリフが心に流れた。
まあよい、ってね。
「そうなのです。ささ、お弁当箱に詰めましょう」
「うわぁ、美味しそう!」
アボカドとチーズと生ハムのサラダとか、定番のアスパラベーコンとか、ナスのピリ辛炒めとか。他にはクラッカーに、ツナマヨとかサーモンとか色々乗せたもの。
キャビア(?)のせクラッカーとか食べたことないものもあったよ。
「お褒めいただき光栄であります!」
「勇者なんかほったらかして、今楽しみたくなっちゃうね」
「ふふっ、ダメでありますよ。エリュシオン様」
「それは分かってるけどささ、匂いがもう誘ってくるじゃん」
「私たちのこれからに関わるのですから、ガーデンコアの奪取は狙いませんと」
「むむむ、それを言われると反論できないね」
ダンジョンの成長は、ゾンビ化を遠ざける手段だからな。
ホントに僕たちの未来のことだから大事。
ピラミッドの二段重ね。
立体の六芒星型ダンジョンを狙うなら、コアの数は多いほうがいいだろうし。もちろん僕の心臓ももう1個使う予定ではあるけど。
もう1個ダンジョンを作ることになるからね。
ダブルダンンンンンッジョンッ!
「エリュシオン様、カワイイ顔して唸っておられますが?」
「ちょっと未来に思いを馳せてたかも」
ダンンンンンッの辺りで漏れ出てたようだ。
あとカワイイは恥ずかしいからっ。
僕、魔王だよ?
ま、いいや。リゼッタが喜んでるなら、それでもさ。
だってその喜んでる顔も、僕にとってはご褒美ですので。
「おつまみもイイ感じに詰め終わったし出撃しようか」
「はは!」
いざ貴族街、勇者宅へ。
「いやあ、家買って正解だったね。街への出入りが凄い楽になったし」
「そうですね。しかしコアルームから直接移動可能なのは危険ですので、別の部屋に変更をしてください」
「魔力パターンと身体認証を2つクリアしないと機能しないから大丈夫だよ」
「さすがエリュシオン様。浅慮が過ぎましたこと、お許しください」
「そんなことないって。気付いたことはどんどん言ってよ」
メニュー画面から利用者の登録をしてるから誤魔化したけど、言われてみれば外とコアルームの直通は確かにアホの所業でした……。
まあゲームのシステムを突破してくる人はいないでしょう。
ステータスとかメニュー画面は僕の転生チートの一部みたいだしね。
「空の上で摘まむ?」
「あ、それもいいですな!」
「じゃあ広めな空飛ぶ絨毯作っちゃうか」
ちょっと待っててと断って、サクッと作成。素材も十分に確保してあるし、飛行魔法も作ってある。
ノットゾンビで作成可能だった。
「オッケー、行こうか」
新しくした偽装の指輪も付けて、絨毯と僕たちには隠蔽魔法をかける。
「はい」
ってことで、空デートの開始だ。
「結構人がいるもんだな。夜は家にいるイメージだったけど」
「飲み歩く人間が多いのは人族も同じようであります」
ゲーム世界ならではなのかもしれないな。現代の繁華街ほどじゃないけど、結構栄えてるね。
「明かりがキレイであります。空から見る夜の街というのが、よいものだとは思いませんでした」
それはある程度の高度を取ってるからだな。
近付くと大勢の酔っ払いを見ることになりそうだしね。
「まあ、僕もこの光景は初めて見るから、ちょっと楽しいかも」
「では乾杯しましょう、エリュシオン様」
「うん、カンパーイ! 楽しみだったんだよね、アボカドのサラダ。凄い美味しそうだったし。ナスのピリ辛炒めとアスパラベーコンにはおにぎりだったかもだ。あ、そうだ、美食魔法でおにぎりを作ろう!」
「うふふ、エリュシオン様にそんなにも喜んでいただけたなら、本望でありますな」
「はっ!?」
ぬわぁ……つい、はしゃいでしまった!
僕を見ながら小っちゃい子を見る微笑ましい笑顔浮かべるリゼッタを見て、僕を堪能されてしまったことを理解したッッ。
僕はまがいもののショタですが?
「あ、あーんしても?」
「ま、待って。それをするならピラミッド型防護魔法をセットして──と」
「よろしいでしょうか?」
グイグイ来るし。
「僕もあーんするからな?」
「もちろんであります。さ、さ、シオン様、あーん」
「うん。あり、がと。ンッ! おいしっ。リゼッタは料理上手だね!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
なんか料理を褒めたことへの感謝じゃないような……気がするが、まあいいでしょう。お返しに僕も。
ツナマヨ乗っけクラッカーを手に取る。
「はい、リゼ。あーん」
「ふぐ……ご褒美であります……ッ」
邪が漏れているよ?
ふぐ、とか言っちゃってる。
「アッ!?」
「んふっ」
僕の手を取って、僕の指を舐めるリゼッタの顔が、えっちだ!
「リゼはえっちって分かった」
「バレちゃったであります」
「リゼッタ……」
「はい……エリュシオン様」
色々と火照った僕たちは星空の下、夜風に当たりながら身体を冷ますことにした。
ちゅっちゅちゅっちゅしたから中々冷めなかったんだけどね!
あ、ちなみに勇者んちに箱庭はなかったよ。
ちゃんと活動しろよな、勇者め。
ったく。




