30 ゾンビ、一旦最強か。
掃除を終えて出入口の設置をする。
ついでに防犯系も追加した。
「よし、これで買い物とかにも行きやすくなったね」
「ダンジョンで作るほうが効率がよいのではありませんか?」
「ま、まあそうなんだけど……リゼッタとデートしたいし」
「不意打ち゛は危険であ゛ります! エリュシオン様っ。赤くなってモジモジしている小っちゃなエリュシオン様は庇護欲を──」
「ストップ、漏れてる! ストップストップ!」
「──は!? 失礼いたしました。秘めたる思いが漏れ出てしまったようであります」
ちょいちょい秘められてないのが聞こえてるけどね……。
儚げ清楚美人のくせに、若干オタク気質なリゼッタ。
ゲーム時代のヴァンパイア魔王のときには見せてなかった部分が、ちっこくなった僕のせいで暴かれてしまってるよ。
だがしかし! 儚げ清楚美人に好かれるという転生者特権。
もしかして心臓使ったときのデバフ、治らないほうがよいのでは? って気もしてるよね、正直言って。
まさかまさかの最高の最強でしたなあ。
ダンジョンの強化にも使えるしなあ。
もう1個僕の心臓を捧げようかなあ。
っていう謎のワードも繰り出せるゾンビも大概オカシイ。
ゾンビ、一旦最強か。
魔王素材無限湧きだし。
そう考えるとさ、普通はダンジョンコアを失うと負けになるけど、僕の場合はストックまでできちゃうな。
念のための1個、用意するのもありだね。
さすがにデバフ解除されてからだけどさ。
「あ、濡れたものはこっちのちょうだい。乾かして仕舞うよ」
「了解であります」
雑巾とかモップを温風と除湿で急速乾燥させる。
「じゃ、帰ろっか」
「はい。か、帰ったらお風呂であ゛ります。エリュシオン様の御背中は私め゛にお任せ下さい」
「ま゛、ます゛い。早く、早く゛帰ろう」
「は゛っ゛」
清浄魔法をびゃーっとかけて、僕たちはダンジョンに帰還した。
「ふう、外で恋人するのは危険でありますな」
「まったくだね」
色々想像するだけでゾンビになってしまうからな。
僕はリゼッタのぺぇの柔らかさを実感しちゃってるしな。リゼッタには僕の小型ピラミッドをじっくり見られちゃってるし。
想像しちゃうのさ。
色々と。
お互いにな。
「水着を取ってくるであります」
「今日はちょっと別の場所で温泉に入ろうと思う。最初は散歩するからね」
「おお、エリュシオン様のサプライズは好きでありますよ! 少々お待ち下されっ」
ダンジョンの隠れ家カフェの森デートに、温泉イベントまで付けちゃう作戦だ。
チャレンジ精神は大事にしていこう。
「お待たせしました」
「全然。こういう時間もちょっとドキドキして楽しい」
「んふふふ。思いは一緒であります」
リゼッタは僕の手を取り、優しいちゅーをしてくれた。
なんか時間が10分くらい飛んでた。
恋人との時間は視野が狭くなるんだなあ。
でもポカポカして心地よい。
「行こうか。新しく作ったんだ」
「楽しみであります」
手をつなぐ。
「恋人つなぎってさ、最高に最高って感じになる。アホっぽい言いかたなんだけど」
「分かりますよエリュシオン様! むず痒いようなほのかな興奮と言いますか……胸の内が幸せになっていくのであります」
「ふふっ。思いは一緒かあ」
「はい」
嬉しい言葉だね!
しかも新しく作った森林公園がエモい。
エモエモのエモ。
公園とは言ってるけど、自然な感じで仕上げてるからね。泉の周りに咲く花とかも花壇で整備されたものとは違うよさがあふれてるよ。
クラフト系も通っててセーフだったぜ!
「キレイなところでありますね」
「自分でも上手く景観を組めたと思ってるよ」
「小っちゃな滝も可愛らしくて好きであります」
「紅葉とかのギミックも組み込んでるから楽しみにしてくれ」
「はい!」
少しの間、僕たちはマイナスイオンを浴びながら景色を眺めつつ散歩して、隠れ家カフェに向かった。
泉の滝からは少し離れた場所に作ったのは、ドドドドド音を少し抑えるためだ。木々で若干の防音をしてるのだ。たまには窓を開けて、風を感じるのもいいからな。
木の隙間からは滝が見えるようにもなってるから、よい隠れ家っぷりを感じさせてくれるはずさ。
「さすがエリュシオン様であります!」
「このカフェはちょっと自慢したい気分でもあるよ」
「いくらでもお聞かせ下され」
「あはは、それはメインじゃないからね」
メインはリゼッタに喜んでもらいたいだけ。
それを見て愉悦にひたるのさ。
僕、魔王だし。
「一応調理可能な状態にしてるけど、買ってきたヤツ食べるほうがカフェっぽいからな。ストックから出すよ」
「雰囲気も重要でありますものね」
「そのうち本も実際に読めるものに交換したいかな」
「あ、これは偽物だったのですな」
ほー、とか言いながら、ダンジョン部屋の飾りつけ用プリセットに入ってる本を手に取って眺めるリゼッタ。
「そうそう。無意味な文字っぽいものが書かれてるだけだね。雰囲気文字ってヤツ」
「これはこれで面白いですな」
「挿絵まであるからなあ」
ワンチャン、世界の真理が暗号化されてるのかもしれない。
なんてな!
僕たちは雰囲気絵本みたいなのを見ながらお茶をした。
メニューは更新してないから、前と同じ。これはちょっと失敗したかなって思ってるよ。新しいケーキを追加すべきだったと。
ミルフィーユとかも美味しいじゃん?
ロールケーキも美味しいし。
そういえばドーナツだってまだ出してないよな。
ケーキに集中し過ぎてたか。
和スイーツだってあるもんな。
きんつばに生クリームとか乗っけたら最強だし。
「きんつば生クリームと、どら焼き生クリームがガマンできなくなったので、今から作ります!」
「なんでありますか! その未知なるスイーツは!! エリュシオン様ッ?」
「座して待てぇい!」
「ははーっ!」
「魔法で作るからちょっと待っててね」
「楽しみであります」
きんつばのほうは、ちょっと塩入りのにするか。塩きんつば。どら焼き生クリームも追加するから、アクセントに必要かと。
飲み物も紅茶やコーヒーだけじゃなくて、緑茶と牛乳を追加だ。
「あんこと牛乳は究極」
「知識だけですが存じております。監視任務にアンパンと牛乳は絶対──と」
「あはは、そうなんだ? お約束ってヤツだからなあ」
想像してたデートとは違ったけど、風流を楽しみつつ和やかな時間を過ごして幸せにひたった魔王であった、まる。
……景色見ながら、ふと寄り添って、なんとなく手が当たったりしちゃったりしながら、ちゅーする流れのはずだったんだけどな?
ゾンビ以外の伏兵がいたなんてね。
あんこと牛乳で盛り上がるとか……ぬかったわ。




