29 僕とリゼッタの生活に、邪魔が入んなきゃいいのだッ!
まずは条件を伝える。
外見や手入れの行き届き具合などは気にしない。
「なんなら土地だけでもいいかも」
魔法で作ることが可能だからな。
「移動に関しても魔法があるから、郊外でも全然構わないし」
僕とリゼッタの生活に、邪魔が入んなきゃいいのだッ!
「それでしたら候補はかなり多くなりますよ?」
そこそこの数は紹介されそうなので、先に家ありきで探すことにした。気に入ったのがなければ土地購入にしたらいいや。写真と同じようなのが魔法で再現できるので、紹介画像付きで見ることが可能なようだよ。
スクショ機能が魔道具になってるな。
「私がおすすめするのは、この3つです」
【物件1】森に溶け込むモダンなログハウス
中央の人工物に疲れ、自然を身近に感じたい方へ。
・メリット
究極の隠れ家感:最小限の面積ゆえに掃除が楽で、お気に入りの家具だけに囲まれた濃密な空間が手に入ります。
圧倒的な映え:大きく開放的な窓を多用したデザインは、部屋の中にいながらも自然と一体化できます。
安全性:近くにある自然公園は貴族街にも隣接しています。不埒ものは即座に排除されることでしょう。
・デメリット
収納の限界:荷物が多いとすぐに溢れます。まさに達人級の収納術が求められます。
来客対応が困難:友人を呼ぶとパーソナルスペースが競合し、少し窮屈に感じるかもしれません。
虫対策が必須:自然に近い分、虫除け対策は最優先事項です。
【物件2】元アーティストのアトリエ、スモールオフィス
古い建物を再生させながらも、人工的な美しさを持つ家です。
・メリット
世界に一つの意匠:配管をあえて露出させたり、特殊な塗装を施したりした内装は、唯一無二の個性です。
資産価値の維持:郊外でも"お洒落なリノベ物件"は需要が高く、将来の売却や賃貸にも有利です。
集中できる環境:周囲が静かな郊外なら、仕事や創作活動に没頭でき、まさに作業に集中できる静寂が得られます。
・デメリット
構造上の制約:古い建物の良さを活かしている分、断熱性能がセレブの最新の家屋ほど完璧ではない場合があります。
メンテナンスの手間:特殊な建材を使っている箇所があるため、修理時に普通の工務店では手に負えないと言われる場合があります。
周辺環境の変化:郊外ゆえに、将来的に隣に大きな商業施設が建つなど、景観が変わるリスクがあります。
【物件3】スマート設備を詰め込んだミニマル・インテリジェンス
最新技術と高いデザイン性が共鳴し合う、機能美を追求した一軒です。
・メリット
最新の防犯・管理:魔道具1つで窓の鍵や室温を操作可能。まさに最先端でございます。
家事効率の最大化:生活動線が極限まで計算されており、家事に使う時間を趣味の時間へ"変換"できます。
高い気密性:小さくても構造は堅牢。外の騒音を完全にシャットアウトし、プライバシーが守られます。
・デメリット
家具のサイズ制限:一般的な大型ソファなどは搬入できない、あるいは置くと圧迫感が凄まじいことになります。
魔道具トラブルのリスク:様々な設備があるため、システムが競合して不具合が起きると、生活が一時停止します。
強きな価格設定:小さいからといって安いとは限りません。最新技術を詰め込んでいる分、坪単価は高めです。
「他の物件は小洒落た建築物ではありますが、一般的なものになりますし、外れではありますが住宅地になりますので、馬車の音や喧騒も感じることがあるかと」
「リゼは──」「シオン様は──」
「まぁまあまあっ、お似合いの御夫婦ですわね!」
「ンッン、シオン様、どうぞ」
「うん。好み的には1なんだが貴族街側は避けたい」
「でありますな。余計ないちゃもんを付けられても困りますし」
「やはりそうなりますか。酷いのはゆ……ではなく、それゆえにお安くなってますが、いかがでしょう?」
"ゆ"が漏れてるよ?
勇者だけか?
国とズブズブっぽいから全体的に貴族はアウトだと思ってたんだが。
まあ1の物件はダンジョンに作ってる隠れ家カフェと、コンセプトが被ってるからなしだね。
「3番の物件にしようかと思う。システムが魔法に依存してるなら、トラブルの対処もできるだろう」
外壁の側なのも僕たち的には移動しやすいしな。この街に住んでない勇者の箱庭に行くのにはさ。
「ふむ、場所的にも静かそうでありますね」
「こちらでよろしいですか? 値が張りますが」
つい、とお値段の場所を指でなぞる受付嬢。
1.1億ゴルド。
「砂金で払いたい」
ボスッと砂金袋を置く。
前回換金したとき1袋5kgくらいで1.4億だったし、足りなければまだあるしな。
「かしこまりました。少々お待ちください」
今回も目の前で計るようだ。
結果、1.8億くらいになった。
前回より袋に詰めた量がちょっと多かったみたいだ。砂金を入れるときは結構雑に入れたし、金額は前後するか。
「一括で支払われるとは思っていませんでしたよ」
「普通は……そうだろうなあ」
「ではこちらが鍵と契約書の控えになります。この度は誠にありがとうございました」
「こちらこそ。では」
お釣り、鍵、契約書をもらって、新居に向かう。
手入れはしてるけど頻繁ではないから、多少は掃除の必要ありとのこと。
「掃除道具を買ってから向かいますか?」
「そうだね。基本ダンジョンで暮らすけど、気分転換に使うかもしれないしね」
簡素なものになるけど、小型の馬車をサービスで付けると言われたが断った。馬の世話も必要になるし、小型と言っても馬車自体も大きいから取り回しが不便だしな。
そもそも僕たちは飛んでくからいらないのさっ。
でも歩いていくとしたら30分くらいはかかりそうな距離だから、かなりのサービスをしてくれようとしてたっぽい。
「店主、掃き掃除と拭き掃除に使う道具を一式用意してくれ」
「雑巾だけじゃなくモップもあったほうがいいかもな」
「確かにそうでありますな、シオン様。店主、それも追加で頼む」
「あ、待った。トイレ掃除の道具も必要か?」
「店主、家の掃除に使うようなものを、一式で」
す、すまねぇ、店主。
いっぱい買うから許してくれぇい。
てか、掃除いらずのダンジョンって、すっごい未来に生きてる感じがするな!




