03 もっちりお肌の死肉じゃあ、戦闘には耐えられない
まず作るのは鍛冶魔法。
リゼッタ用装備を整えるのに必要だ。
リゼッタ用には魔力上限を上げる装備を作ってあげよう。
彼女の推し界隈では、装備の色んなスクショがアップされてたから、参考にしたり参加したりしてた。
僕が出したスクショは、定番のメイドさんVerとネコミミ様Ver。
そして一押しは、ファンタジー町娘Ver。
なんとなくだけど、距離感が近くなる気がしてさ。
装備は剣の代わりにめん棒、盾の代わりにフライパンを持たせたのですぞ。
一見、二刀流に見えるのがミソなのだッ!
作る……か?
どうせ僕用に服飾魔法がいるんだし。
防御魔法をガン積みしたら見た目装備じゃなくなる……よな?
候補には入れておこう。
僕のは定番の魔法使い用軍服ですかな。
魔王の魔法で作るんだから、魔王や魔王の側近に相応しい逸品が完成するはずだ。
「他には魔力回復のアイテムか装備がいるかな」
現実になったこと、創造魔法を使えることで、ゲームにはないものも作れそうだと思っている。例えば自動で魔力を集めてくれる装備とかね。
ゲームのときの回復手段はポーションくらいだったしな。
「お手数をお掛けするであります」
「ゾンビ化解除セットのコストが高いからね。これは仕方ないよ。僕にも必要だし」
魔法タイプの僕でも、セットにした魔法が切れちゃうくらいだしな。
MP回復は錬金魔法になるか。
そうだなあ──吸魔の結晶、とかそれっぽい名称のアイテムにしよう。
「エリュシオン様、しっかり動きを確認してみて分かったのですが……我々、のろまであります」
そ、そうだったのか?
前衛系と後衛系の、感覚の違いとしておいてくれ。
気付けなかった僕が、凄くどんくさいヤツになってしまう。
「機敏魔法もゾンビ化解除セットに追加しておこう」
「ははっ」
美肌魔法だけじゃダメだった。
もっちりお肌の死肉じゃあ、戦闘には耐えられないという真実が──今、明らかになったのだ。
「色々と必要になるね」
「仕方ありませぬ。我々はゾンビでありますし」
「人族の街に行くなら偽装魔法も必要だよな……そういえば戦争はまだやってんの?」
まだというかPvPvEだからね、このゲーム。普通に対人バトルはあった。僕はたまに参加してたくらい。
だけどそれは、現実になったなら戦争だ。
これはゲームの仕様上仕方ないか。
「おそらくは。魔王も勇者も数が減ることはありませんでしたので。それに──」
ただ、僕の知ってるゲームの時代よりは進んでるっぽい。リゼッタがゾンビになっちゃうくらいの時間が経ってると言われた。
ゲーム知識だけじゃ分からない部分も出てきそうだな。
「なるほどね。人族も魔族も、どっちにもいい面があるのにバカだなあ」
「確かに。利用価値はありますな!」
ってことにしておこう。
「であれば融和派と連絡を取るでありますか?」
むむっ、そう来るか?
「いや、僕たちは自由を愛するのさ。こちらからは仕掛けない」
「さすがであります、エリュシオン様。美味しいとこ取りを狙うとは」
ぬぬぬ、今度はそう来たか。
……魔王的には侵略するほうが、っぽいか。
だがッ!
「権力には興味がないからね。ダンジョンには両陣営から来てもらうつもりだけど」
ダンジョン運営は人気を得たほうが捗るからな。
戦争よりダンジョン作ったり、素材を集めてアイテム作って売ったりするほうが、僕の好みなのだよ。
一言でいえば、戦争には関わりたくない。
です。
ただ、勇者の人工精霊はカワイイので欲しいっちゃ欲しい。
「これは出過ぎた真似を」
「いいっていいって、気楽に話しかけてよ。そのほうが僕も嬉しいしさ」
推しとの会話、楽しみたいじゃないか。
「エリュシオン様からそのようなお言葉ッ! 身に余る光栄であります!!」
うはぁっ!? マッハで近付いてきて破壊力抜群のニッコリ!
しかも僕の言葉で興奮しているのか、ほっぺが赤くなってる。
その、さ……リゼッタは儚げな美人さんというのを自覚して欲しい。
僕の顔も絶対赤くなってるって。
推しのニッコリが近いので!!
ヤバァ……なにこの特典っ!
僕はゾンビだというのに、ドキドキが止まらなかった。
推しの笑顔って死を超越できんだね。
……まさかとは思うけど、腸みたいに自由気ままな心臓なのだろうか?
まさかまさかのフリーダム?
「すこっ、少し……落ち着こう。僕たちは少々興奮している」
「確かにそうですな。エリュシオン様の復活は、私の悲願でありましたので、舞い上がってしまいました」
転生したてなのに僕が魔王になってるからな。ダンジョン側にもなにか変化があったっておかしくない。
リゼッタだっているんだし。
気を付けなくちゃね。
「ダンジョンを進むために必要な魔法を考えよう」
「承知いたしたであります」
……でも他になにかあるかな?
明かりくらいか。照明魔法はそうだな、なにかに光を付与するんじゃなくて、追尾したり動かせたほうが便利だよな。
「ところでエリュシオン様の戦闘方法は、どうなさるおつもりでありますか?」
「あ……」
考えてませんでした。
そうだよ。
ヴァンパイアじゃなくなったから、今の僕には翼や爪もない。
攻撃手段が変わるんでした。
かといってただの序盤ゾンビではないのが、転生ゾンビの強み。
今の僕はゾンビのくせに魔王で魔法使いなのだ。
「魔法攻撃なら結局はマジックミサイル系が強力かな」
高レベルならミサイルの本数もバカ増えるからな。
誘導弾だし。
「私の剣技のように、属性付与も効果的かと思うであります」
「確かに! 採用っ!」
「ありがたき幸せ!」
無属性、火、水、風、土、雷、氷。パッと浮かぶのはこの辺りか。
なにか思い付いたら追加していこう。
指先から飛ばすと射線がバレバレになるし……。
うん、そうだな。
雷様の電電太鼓の位置から連射する感じで術式を組むか。
発動の呪文も、マジックミサイルっていうだけじゃあ物足りないよな。
そうだなあ……うん、オッケーィ。
いいの思い付いた。
「よし。ゴメンだけど、またゾンビ化する」
「御意ッ!」
全然関係ないけど、カワイイ女の子から「御意」って言葉が出ると、御意すら可愛く思えてくるよな!
御意に尊さを感じるとは……まさかまさかの事態であります。
ぎょいっ!




