02 風呂キャン界隈とは別ベクトルの臭さだから、どうしても許せないッ!
ゾンビが治っておりません!
ヒールじゃダメってことか。
というより、回復の魔力が身体にとどまってないとダメな感じか?
僕たちに、もう一度軽くヒールをかけて試す。
「回復の魔力が切れたらゾンビに戻るのか、ちょっと実験ね」
「はっ」
目を凝らして自分の腕を見つめる。
ほら、その、地球人は魔力なんて見れないし?
でも今は異世界人になってるっぽいし。
そして魔力は見えた。
さすが魔法系キャラってことかな?
回復の魔力はキラキラしている。
あー、キラキラ魔力が消えるとゾンビ化するな。
「う゛ー゛ん゛」
そもそもゾンビ解除は、回復魔法じゃない感じだ。傷や欠損部分は治るけど、腐肉が治ってない。
HP回復って感じのヒールじゃ、不完全なままってこと。
とりあえず臭いと動きを治してから考えるか。
推しがゾンビ臭いのもな。
風呂キャン界隈とは別ベクトルの臭さだから、どうしても許せないッ!
臭いのが好きってわけじゃないことは、ここに宣言しておく。
推しの風呂キャンは、まだ、許せる……ぅ、ん、許せるさ。
ゆえに清浄魔法を創作。いちいち発音しながらは、上手く話せないゾンビのせいで気合が必要だからな。
床に魔法陣を書いて発動させることにした。
即座に創造魔法が術式を構築してくれる。
さすまおー。
「ありがとうございます! さすがでありますな、エリュシオン様は」
「僕も臭いのは嫌だしね」
色々と相談しながら魔法を作っていこう。
まずは脱ゾンビだ。
「リゼッタはゾンビ化解除の魔法、どんなも効果が必要だと思う?」
「ゾンビを治そうなどと思うことはありませんからな。難しいでありますね」
「まあ消臭は必須でしょ?」
「それはもちろん。でしたらよい香りも出すようにするのはいかがですか?」
「ありっ」
清浄魔法はさっき作ったから、芳香魔法も追加で。
「声もなあ……なんか違うんだよな。リゼッタの声、もっとキレイだったはずだし」
「あ、ぅ、ありがとう……ございます」
「あ、いや、うん。その、ちょっと残念に思ったから。よし! 美声魔法も追加!」
テレ、いただきました。
たすかるっ。
「であればエリュシオン様の御声も、美しくなるでありますな」
僕はまあ、うん……ゾンビの元になった知らないキャラだから。
嫌われないならいい。
それより脱ゾンビだ。
僕的に必要と思うのは、形成外科的な治療。
腐った肉を正常な形に治す魔法にする。
「呪いの除去が必要かもしれませぬ」
「なるほど! 言われてみれば」
現代知識と異世界知識。
僕とリゼッタでアイデアを出し合えば、だいたい解決できそうだ。
「創作魔法を起動する。ゾンビ化解除、および治療の魔法と゛ぁ゛」
「あ゛、ま゛た゛て゛あ゛り゛ま゛す゛ぬ゛ぁ゛あ゛」
創作魔法、コストが相当高いものらしいね。
僕の魔力や周囲の魔力をガンガン使ってるみたいだ。
そのせいで魔法陣が停止しちゃってるよ。
「こ゛の゛む゛ぁ゛む゛ぁ゛、と゛め゛て゛お゛こ゛う゛」
創作魔法がバグっても困るしな。
それに魔法が完成したら、こっちを起動させるんだし。
あ、そういえば──
「す゛こ゛し゛し゛く゛ぁ゛ん゛か゛、か゛か゛る゛よ゛」
「は゛は゛っ゛。お゛ま゛ち゛す゛る゛て゛あ゛り゛ま゛す゛」
──刻印で魔法の起動も可能だったな。
それなら自由気ままに動いてる、僕たちの中身に刻印して発動したらいい。
魔法陣を凝縮するものだから、追加で創作させるか。
僕はまだいい。
でもリゼッタがゾンビなのは、ゆるせん!
日本人に魔改造された、カッコよくもカワイくてエモがあふれるデスナイト。
なめるなよ?
異世界めぇ。
まずは僕の中身に動くなと命令。
あ、聞くんだ。
大人しくなった腸に刻印を施す。
中身をしまって、発動。
「リゼッタの腸にもジッとするように伝えて」
「は゛は゛ぁ゛っ゛」
自分のを先にやったから、痛くないのは分かるけど……痛そうなんだよなあ。
リゼッタの中身も中にしまって、と。
「魔力で起動させてみて」
「エリュシオン様!!」
「うん!」
僕たちは元の姿を取り戻した。
若干美声になって。
しかも芳香魔法でいい香り。
ついに完璧なリゼッタを取り戻したぞ!
僕たちはハイタッチして踊っちゃうね。
「は!? ご、ごめんッ、お、思わず……ッ」
つ、つい手を握ってしまった。
なんとなれなれしい行為を。
そう思ったのだが、リゼッタはそう考えなかったようで──
「あ、ぃぇ……私も……その、嬉しく思った次第であります!」
──こんなことを言ってくれた。
僕とってはリゼッタこそが尊きおかたでありますぞ。
推しに拒否られない幸せ最高っ。
「ついちゃっかり、エリュシオン様を堪能してしまったであります」
「ちゃっかりかよっ、はははは。でも1個問題があった」
「で、出過ぎたまね、申し訳ございませぬ!!」
「ち、違う違う違う!」
平伏するリゼッタに、僕の思った問題点を伝える。
「ホントであります……ぶよぶよ」
「腐肉から死肉に変わっただけみたいなんだ。だから美肌魔法も創作しようと思う」
「ぬっちゃりからぶよぶよ。そしてもっちりでありますな?」
「て、的確な表現だぜ」
僕は創作魔法をまた起動した。
「あ゛ー゛、な゛る゛ほ゛ろ゛れ゛」
こうなるわけか。
魔力が足りなくなると、形成魔法やらのゾンビ化解除セット魔法が切れてしまう。
そして腐った死体に逆戻りだ。
気軽に使うには危険ってことか。
そしてゾンビとは、長い付き合いになるってことも分かった。
作った魔法で治ってるわけじゃないってことだ。
もしかしたら、魔法をかけ続けることで治る可能性もありと考えておこう。治療には時間がかかるものだしな。
もっちりお肌専用の美肌魔法を、ゾンビ化解除セットに組み込む。
幸いにも僕たちの中身は、自由奔放にうねっているのだから。
すーぐ脱走する!
「創作魔法を使うときは気を付けないと。リゼッタのまで切れちゃうし」
「相当強力な魔法なのでしょうな」
「リゼッタも行動で効果が切れるもの、今のうちに調べておいたほうがいいね」
「でありますな。この部屋は塞いでありますゆえ、邪魔も入りませぬ」
結果、リゼッタはわりとなんでもゾンビ化した。
魔王の側近クラスだから強いはずなんだけどな?
つまりこのゾンビ化解除セットもコストが高いってことだ。
「手段を考えないとな」
「は。事前準備は大事であります」
僕たち、きったねぇ格好のままだしね……。




