01 僕の推しが腐ってた件(物理)。
僕のチソチソが、さまようチソチソにクラスチェンジするまで、あと18時間と23分。
そして僕の鼻はたった今、0時のお知らせをした。
く、臭い。
んんん?
狭い、臭い、暗い臭い?
身動きが……????
せ、狭、臭ッ!?!?!?
「ほ゛え゛え゛え゛っ゛?゛」
生ゴミのような悪臭が襲ってきた。
そのせいで意識が覚醒する。
それくらいヒドイ臭いがしているんだ。
「ん゛ん゛、お゛、お゛え゛あ゛、ひ゛ゃ゛ふ゛と゛……て゛あ゛い゛? あ゛あ゛あ゛あ゛」
しかも声がちゃんと出せない。
それに風邪で寝込んでいるような気だるさ。
不思議に思って起き上がると、僕はなにかを破壊した。
なん……お墓?
「え゛、え゛と゛ぅ゛し゛お゛ん゛た゛は゛?゛」
「ぅ゛き゛ゃ゛ゎ゛あ゛ぅ゛あ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!゛?゛」
腐った死体がヌゥっと現れた!!
なんだ!?!?!?
「お゛お゛お゛お゛! え゛と゛ぅ゛し゛お゛ん゛た゛ま゛!゛!゛
わ゛た゛し゛ぬ゛ぉ゛、と゛う゛と゛く゛ぃ゛お゛か゛と゛ぁ゛」
「た゛、た゛に゛ぃ゛?」
ゾンビが片膝を付き僕に向かって礼をする。
「わ゛た゛し゛は゛、ま゛て゛ぃ゛か゛っ゛て゛な゛か゛っ゛た゛」
なんて?
間違って……なかった?
「あ゛あ゛っ゛!゛?゛」
し、知ってる。
僕は確かに、この人を知っている!!
「り゛ぜ゛っ゛た゛……そ゛う゛、き゛み゛は゛り゛ぜ゛っ゛た゛ら゛」
僕の推しが腐ってた件(物理)。
デスナイトのリゼッタがゾンビに?
3分の2くらい腐ってる……んだけどもっ。
何回見ても。
お腐れの隙間に、面影があるぅ……。
えっと、彼女はゲームを進めるうちに仲間になるキャラだ。
というかゾンビルートのヒロイン。
僕は彼女──リゼッタを仲間にしたくて、ゾンビルートを選んでる。
だけどそれはゲームの話であって……ドユコト?
「ま゛て゛ま゛て゛。な゛ん゛く゛ぁ゛、ほ゛く゛む゛ぉ゛ソ゛ン゛ヒ゛ら゛?゛」
凄く臭い。
とても。
2人分合わせて、とっても濃い腐臭が!
しかもだよ?
僕たちの中身なんて、自我を持ってんじゃないかってくらいに蠢いてるし。
元気だ……なんて元気な腸たちなんだ。
ゾンビとは元気なものなのか?
僕自身は気だるいままなんだが。
「ち゛か゛ら゛く゛ぁ゛た゛り゛す゛、む゛ぉ゛う゛し゛わ゛く゛ぇ゛こ゛さ゛い゛む゛ぁ゛せ゛ぬ゛」
「あ゛、い゛や゛……ち゛か゛う゛、そ゛う゛し゛ゃ゛ぬ゛ぁ゛い゛」
「は゛……は゛は゛ぁ゛」
たぶん、「ははっ」ていう返事なんだろうけど、ばばぁになっちゃってるし。
このクソッたれな状況は、いただけないよな。
これってもうアレだろ?
「う゛、う゛え゛ー゛あ゛う゛お゛ー゛ふ゛ん゛」
定番の合言葉を唱えるしかないって。
「あ゛あ゛」
ステータス画面が開き、そこに書かれていた文字を見る。
ゾンビ。
何回見てもゾンビ。
ゾンビ転生しちゃってんですけど?
なんか衝撃的なことばっかってさ、逆に冷静になるよな……。
リゼッタがいる理由も分かった。
魔王 エリュシオン・ド・ラ=モルテ
「ふ゛む゛」
やっぱ僕のキャラだ。
ただ……。
『死の館のエリュシオン』
『死を統べる高貴なる御子』
僕の知らない称号が2個も書かれていたけども。
はい、物騒!
やめとけってお前ェ。
死を統べるってなんだよ。
ゾンビじゃ統べそうにないけどね?
むしろ統べられる側の気がする。
しかも高貴なる御子。
ゾンビなのに。
異世界ゾンビギャグなのか?
内臓をブラブラさせる魔王ゾンビとか、どこ向けのコンテンツですか?
ゲームのデータを参照して転生してるっぽいし、そこら辺が理由でリゼッタがいるんだろうな。
しかも今週なったばっかだよ、魔王には。
割と最近のデータじゃん?
なんかいつの間にか──魔王ゾンビとして生きていくことになったようだ。
とはいえ、とはいえだ。序盤っていうか生まれたてで魔王って強くね?
しかもヒロイン付き。
はい、最強。
しかも儚い清楚系美人さんのリゼッタだし?
はい、無敵。
「え゛と゛ぅ゛し゛お゛ん゛た゛ま゛?」
とはいかないのも、分かってますよ。
ゾンビだもの!
2人して。
「ち゛ょ゛と゛、ま゛っ゛と゛ぇ゛」
「は゛」
スキルを見る。
ゲームのときは魔王ヴァンパイアにしてたんだよな。
高貴とか付いてんのはそこら辺が混じってるのかも?
まあ……今はゾンビのままだけど。
しかも高貴なゾンビ。
だからちゃんと確認しないと、なにができるのか分からない。
「な゛と゛ぅ゛ほ゛ろ゛」
僕は魔法を作る。
僕たちが治るような魔法を。
「ひ゛ー゛る゛ッ゛」
魔法を作る魔法。
これが僕のユニークスキル、創作魔法だった。
僕は魔法タイプの魔王らしい。
「あ゛あ……あ、あ、エリュシオン様ッ!!」
「感動の再開も、ゾンビじゃあ──様にならない」
そんなカッコよさげな言葉を告げる。
ま、魔王だし?
推しの前だし?
「信じて……よかったであります。再びお会いできる日が来ようとは。
このリゼッタ、感涙に溺れる思いであります」
僕は聞く。
「い、一緒に……来てくれるかい? リゼッタ」
ドキドキしてカッコつけは続かなかったけどさ。
聞くまでもなかったのかもだね。
臣下の礼を取り、リゼッタは力強く宣言した。
「ははっ! この命、尽きようとも!!」
「リゼッタ。僕たち、もう死んでるから」
ゾンビです。
「ささ、エリュシオン様。ボス退治といきましょうぞぉ?」
「あははははは、変わってないね!」
「そう言われるエリュシオン様は、以前と変わられましたな」
それはそう。
ゲームスタート時のゾンビで魔王になってるしな。
魔法で治ったキレイなゾンビなんて、ゲームにはいなかったし。
「今のエリュシオン様は愛らしい少年であります」
おおっ。
推しの笑顔が目の前でッ!!
また課金してしまいそうですぞ?
「これはこれで……ンフッ」
ゾンビ耳のくせに高性能な僕の耳は、リゼッタがつい漏らしたであろうボソボソの呟き声を拾った。
なんか邪な悦びを感じるが……。
「そ、そう? それならよかった」
推しの悦びは我が悦びなりぃ!
っていうかしらなかったんだけどさ、ゲーム開始時のゾンビも元の姿は可愛らしい少年のようだね。高貴設定が反映されてるのかもしれない。
ナイスゾンビィ!
ヴァンパイアじゃなくなったのは、進化ルートが未開放だからか?
ゲーム世界っぽいけど、この世界じゃゾンビからヴァンパイアになれない……とかかもしれないが。
「そうだなあ。ねえリゼッタ、これ゛か゛ら゛ぬ゛ぉ゛……あ゛?」
「え゛、え゛と゛ぅ゛し゛お゛ん゛た゛ま゛?」
だ、だにぃ!?




