27 ちなみにウチのリゼッタはトマトの収穫がメッチャ早かったタイプ。
「かじゅ暮らしの箱庭、シモフリィの箱庭、甘茄子ンの箱庭。聞いたことある?」
「いえ、私は存じ上げませんが」
この街の近辺にある有名な精霊の箱庭なんだけど、やはり世界線が違うということなのかな。ゲーム時代はリゼッタも一緒に、収穫イベントのときに入ってるから知ってるはずなんだよね。
ゲームのときのスクショタイム、覚えてたもんな。町娘Verをカシャカシャ撮ってたのは恥ずかしかったそうで……正直スマンかったってヤツなんだけど。
ちなみにウチのリゼッタはトマトの収穫がメッチャ早かったタイプ。
芋ほりタイプとか大根タイプとか、色んなリゼッタがいたよ!
「一応この3つの箱庭には、行ってみようと思う。空飛べば半日で回れるはずだし」
「はっ。あるといいですな!」
「なー。まあなくなってたとしてもさ、権威を守るために勇者は僕たちのダンジョンを攻略するしかないからね」
入れ食いになるでしょう。
ペシィしちゃったので僕たちを殺すつもりで動くはず。
多少は準備する期間はあるだろうけどね。
僕たちはその間に有名箱庭を調べておこう。
「どちらにせよ、私たちは儲かるということでありますな」
「今の時代は勇者にケンカを売ると色々潤うシステムっぽいからな」
僕たちは頷き合う。
儲かるということは、恋人的なステージ攻略もはかどるってことだし。
「ゾンビでどうなることかと思ってたけど、どうにかなりそうに変わってきたね」
「はい!」
「でもダンジョンに出入りするとき、ちょっと面倒なんだよな」
「冒険者の振りをしなくてはなりませんしね」
「街に小さい家を買って、そこに僕たち専用の出入口を作るか」
「そういえばそうでありますな? なぜその発想が出なかったんでしょう……」
新機能開放のフラグが立ってなかった的なことなんだよ。
そういうことにしておこう。
でなければ我々の頭脳が、お腐れあそばしてたってことになってしまう。
コ、コストだってかかるしね!
そうに違いない。
「商業ギルドに行こうか」
「は。砂金の準備もしておかれますか?」
「そう……だね。家の購入資金がどれくらいなのか、全く分からないからな」
もう1袋使うことも考えておこう。
「なんだかんだと3千万ゴルドくらいは消えてるしなあ……」
「素材代が高額になりがちですからね」
ウチのダンジョンの稼ぎは全部DPになるし、攻略したダンジョンはピラミッドのとこだけだしな。
「まあダンジョンが軌道に乗ったし、お金を使うこともそうそうないか」
「おやつ代くらいでありますか」
「だね」
さすがに今すぐ出ても、ギルドは閉まるころになるかな?
「明日は朝から行動しますか。お弁当作る、出発する、箱庭巡り、海の見える丘でお弁当を食べる、商業ギルド」
「デートであります」
「うん」
シレっと混ぜた、お弁当作りと食べるデート。
だけどリゼッタの微笑でオッケーをもらったと、僕は確信したのだった、まる。
「休憩終わり。今日はダンジョンの作業を進めよう」
「はい! 楽しみは取っておくであります」
「一緒にお弁当、作ろうね」
「当然でありますな!」
うっひょぉぉ、たーのしーい!
恋人がいるって最高過ぎるな!!
しかも今はサプライズ隠れ家カフェイベントの仕込み中だし。
魔王だってウッキウキになってもいい。
ゾンビだって楽園を目指したっていいのだっ。
そして朝。
「お弁当作りを開始する」
「ははぁっ!」
正直言えば、インベントリがあるから料理や食器なんかは、丸ごと持って行けるんだけどね。雰囲気重視で可愛い感じのお弁当箱も自作した。
さすがにキャラものではないけどね。
淡い色合いのパステルカラーで楕円型のものだ。
「肉は外せないけど、なんにする? ハンバーグ、から揚げ、ミートボール」
「ウィンナーもありますからな。迷うでありますね。ささみのしそ巻きカツなども捨てがたいかと」
「あ、それにしようか。ささみ。半分に切れば茶色に支配されないお弁当になる」
「あとは定番のポテサラと──」
おかずでパンパンになりそうなので、主食はおにぎりにした。サケと昆布と塩むすび。 梅おにぎりは、梅肉ソースをささみのほうに使うのでなし。
リゼッタの鼻歌をBGMにして、おかずを詰め込んだ。
ダンジョンから出ると、冒険者ギルドの職員はいなくなっていた。
さては今日のデートが順調な滑り出しをすることの示唆なんだね?
勇者は一旦死んだし、ここで数日立って注意喚起してた。だからあとは冒険者ギルドでの注意で問題ないと判断されたんだろう。
「煩わしいのがいなくなりました」
「ホントに。自分ちの前に自警団がうろついてたようなものだからなあ」
偽装してるから平気とはいえ、少しの緊張はあるからさ。
人の行き来が多いタイミングだ。街への入場待ちに並ぶ振りで誤魔化しつつ、隠蔽を強くかける。そのまま空飛ぶ絨毯で精霊の箱庭に向かった。
「まずは一番近い牛メインだったシモフリィの箱庭に行くよ」
「牛でありますか。色々とよいものが取れそうですが……」
「うん。残ってれば、だからね」
魔王側が古き魔王なら、勇者側は古き勇者ってことだ。
古き魔王が僕しかいないなら、古き勇者はいなそうだなって推測は立ってしまうんだよね。残念ながら。
「ワンチャンあれば、かな」
「私にはデートの添え物であります」
「ダ、ダメだよリゼッタ。盛り上がること言ったらゾンビになるんだから」
「そ、そうでありましたな。ここはダンジョンの外ゆえ、ピラミッドの加護がなかったであります」
僕たちがイチャイチャしながら生きるには、ダンジョンが必要だからな。引きこもってるのが苦じゃない僕は平気だけど、デートでのお出掛けが楽しいものだと知ってしまった。
まさかまさかの事態だけど──幸いにも僕は魔王。
最悪、ダンジョンで再現すればいいからな。
勇者たちには糧になってもらいたい。
「エリュシオン様、あそこ、あそこが景色もよさそうでありますよ!」
「おっけー!」
結局3ヶ所とも箱庭はなかったのでデートの時間になった。




