25 今の僕なら魔法を作って、二本指を「クンッ」して大根が抜けるようにもできるよ。
おじさんに話を聞いたあとだし、あんまり追加情報ないかもだけど新聞のチェックをする。イチャコラ防止機能が起動するから、マジメにしてるわけじゃあないよ。
ってことで──新聞に目を落とすと、どうやら僕のダンジョンのことがメインだった。ポーションの生る木は、どこのポジが出やすいだとか、西側のほうがいいものが出る確率が高いだとか、じつに的外れな情報が掲載されてた。
うーん、異世界でもこういうのは変わらないようだ。
冒険者の攻略進捗とかは少しだけ載ってた。
○○ダンジョンは5層ほど進んだとか。
▲▲ダンジョンは変わりなしだとか。
名前に覚えがないから、どれがどれなんだか分からなくなってるな。はがねンさんのとことか、ゴルドロさんとこなんてアイテムドロップが分かりやすかったから、そういう情報があってもよさそうだけど……ないからなあ。
ちなみにはがねンダンジョンは錬金素材。ゴルドロダンジョンは金貨袋多めのダンジョンだったよ。
現実に合わせるように丸ごと変わってるんだな。
そのせいで魔界が残念仕様になっちゃってるし。
……勇者は箱庭を弄ってないかもな。
アレなヤツらだったし。
「畜産とか農業、全部スルーされてるのかな?」
「箱庭でありますか?」
「そうそう」
せっかくのクラフト系を台無しにしてそうな感じだったし。
人工精霊で戦闘力へのバフ狙いオンリー?
「見る限りそうなのではないでしょうか」
「期待はできないな、箱庭の成長」
人工精霊を生み出すまで育てたら、あとは放置かも。
数で稼ぐしかなさそうだなあ。
幸いにも3個は確定で手に入るからいいってことにしようか。
願わくば他の勇者たちにも情報が届くことを期待しようか。そのうち新聞にも書かれる可能性があるからね。
勇者敗北って。
そんな思考の海に潜ってたら、とっくに勇者たちは動き出してた。
ダンジョンの外に出たとリゼッタから報告される。
「追跡魔法、楽しいであります」
リゼッタの笑顔が嬉しくて、僕はそれでキモチイイっていうキモイムーブしておりますればっ。
「いいこと考えた! ちょっとゾンビするよ」
「ははっ!」
ジオラマ表示もできるように改造する。
色はさすがにムリな気もするから、明るい灰色で表現しようか。
これによっていい雰囲気のマップになるはず。
一応ON/OFF可能に設計して……っと。3D表示は画面を回転させられないと、隠れる部分が多いから追跡やマップの確認には不向きだもんね。
見た目だけよいものっていう仕様です!
ミニマップを横に投影するようにしておこう。
というか、地図表示とジオラマ表示、OFFのほうがミニマップに表示されるようにしたらいいのか。
「お゛ま゛たせ。よし、マップを再起動させて、と」
「おおっ!? なんと素晴らしいのでしょう! エリュシオン様の知恵の泉は枯れ果てることなしでありますな!!」
リゼッタもなんか独特な驚きを披露してくれるよね。
「ありがと」
やはり勇者は貴族街で暮らしてるようで、お城みたいな家が並んでる区画で、それぞれの住処に帰っていった。
贅沢三昧暮らしらしい。
そういえばプレイヤーはクラフトを楽しみたいって人が勇者を選んでた。
人工精霊もカワイイのをカスタマイズしたりとかね。
もちろん精霊の戦闘力で選ぶ人もいたけど。
「今の勇者はなにが目的で勇者を選んだのか分かんないな」
「やはり人工精霊目当てではありませんか?」
それにしては中途半端な精霊だったような。
勇者が弱いからそう思えたのかな?
うーん……。
「もしかして世襲の可能性もあるんだろうか」
「なるほど……ありえますね。さすがの慧眼であります」
「まさか魔王も?」
「魔族は力こそ正義ですので」
「ないか」
「おそらくは」
火力教の信者は人工精霊付きの勇者だったけどね。
魔王はどちらかと言えば戦いは数の派閥かな?
チート転生した僕は火力教に入信できそうだけどな。
「勇者どもの反応が止まりましたよ! エリュシオン様」
「農地経営とか牧場経営とか、今の勇者はしないんだろうなあ」
あれが面白いのに。
しかも現実世界で勇者の能力が使えるなら、ゲームみたいなものじゃんね。
今の僕なら魔法を作って、二本指を「クンッ」して大根が抜けるようにもできるよ。
「力を持たぬというのに傲慢を振りかざすとは、笑止でありますな!」
「な!」
素晴らしい笑顔っ。
なんでも許しちゃえるね。
勇者の動きが完全に止まり、寝静まったようなので出撃だ。
僕たちはのんびりして英気も養ったしね。
ゾンビな僕たちは不眠でも元気だし、やる気も十分なのさ。
この時間に襲撃するのは、隠蔽も偽装も高水準で揃えてるんだけど、相手が休んでるときならさらに安心という単純な理由だったりする。
「準備完了であります」
「では久しぶりに空飛ぶ絨毯の出番だね」
ダンジョンで暮らしてるといらないからな。
今後勇者が見つかった場合には出番が増えるでしょう。
エレベーターを使って1層に。
深夜だけあって人は少ないようで、出入り口付近に到着した。勇者も帰ってるしギルド員も帰宅してるのかと思ったらまだ待機してるよ。
「フン、ご苦労なことですな」
「それだけ迷惑を振り撒いてるってことなんだろうね」
「勇者どもを倒したことを大々的に発表すれば、人族に感謝されそうであります」
「ホントそれ」
もしかしたら勇者を排除できない理由には、国が動くってのがあるのかも……しれないね? 癒着的なアレで。
戦闘力が高いといっても、冒険者でどうにかなりそうな強さだったしなあ。
それこそダンジョンでいい武器でも見つかればさ、プスッとさ?
「さーて、勇者んちの上空に着いた。ここから精霊の箱庭を探すのには多少の時間はかかるかなって思ってたんだけど……」
「隠さず庭に置いているようですね」
精霊の樹が目印だよ。
ばっちり見えてるよ。
「誰も手だししないんだろうなあ」
「私たちは楽になったであります」
「まあそうなんだけどさ。じゃ、ガーデンコアをもらって帰ろうか」
「張り合いがありませんな!」
全くです。
僕たちは精霊の樹に触れ、箱庭に入る。
特別な手段はいらないからね。スルッと入れるよ。ゲーム時代ならNPCに農園のお手伝いとかしてもらってたしさ。
そして箱庭の中。
「人工精霊目当てらしいな。単純に戦闘力強化のためだけの」
「愚かな選択であります」
なにもない。
ただ精霊の産まれるコアがあるだけ。
「インベントリに入れて終わり」
「ただの作業でしたね」
「もったいないよなあ。せっかくの箱庭」
残り2軒からも、ちゃんともらって帰宅した。
サクッと終わっちゃった。
なんの抵抗もなかったので。




