19 オタクだって……オタクだって……やらしめの知識を十全に発揮しようとする!
通行許可のチェックポイントを、ダンジョンに設置するときに疑問が出た。
チェックポイントは深層に設置するのが現代の流れ。
しかしそうしたら魔族も人界に侵攻しづらくなってるはずなんだよな。
ツウロさんとこ以外で、僕たちの知らない通行用のダンジョンがあるのか?
もしくはダンジョンスタンピード狙いになってるのが、今のトレンドなのかもしれない。
ま、僕も魔界に侵攻させるつもりはないから、最下層に設置してるけどね。
今は50層の大型ストーンゴレーム、スフィンクスくんが持ってるよ。
正解したら悔しがり、不正解だと喜ぶ。そんなギミックを搭載した、攻略にはまったく関係ないなぞなぞを口走って混乱させる石巨人さ。
「魔界側はどう?」
「変わりなく。攻略はゆっくりしたものであります」
「人族も似たような感じなんだよな」
監視してたけど、堅実にって感じの攻略だ。
考えてみれば当たり前のことか……ゲームじゃないから命がけではあるんだし。それに攻略情報がネットに転がってるわけでもない。
表世界にピラミッド型のダンジョンを投影してるのもあって、人は多いんだけどな。
無謀な挑戦をするヤツはいなかった。
そしてダンジョンを開放して1週間。
結構な盛況ぶりなのは、1層のゴミステーションと薬草農園だね。ここは常に人が行き来しているような状態だ。
念のために様子を見てたけど、問題はないみたい。
DPを注ぎ込んだポーションの生る木なんて、人が飴に群がるアリンコのようだ。生った瞬間にもぎたいのか、血走った目で見てる人もいる。
3日目にハイポーション1個出したのが功を奏したようですな、クックックッ。
来週には使ったDPを回収できるかもね。
幸か不幸か、デスナイトたちのお世話になる違反者は、まだいない。
そのうち出ると思うけどね。
他人から奪うっていう考えはよくあることだ。
なにせ無料でもらえるハイポが木に生るんだからさ。
しかしダンジョン攻略は、なかなか進まないもんだな?
10層目まではインスタンスダンジョンだから、まだ魔族と人族のバトルも発生してないしね。
じっくり稼いでから11層に突入するんだろうか?
狩場の奪い合いになるだろうし。
「あー、もしかしてこれがメインになってるのか?」
「どうかなさいましたか? エリュシオン様」
「戦争の形態がどうなってるのか、ちょっと気になってたんだ」
「ああ、確かに移動の難易度が上がっているようでありますしね」
「人気のダンジョンには入ってないから分からなかったな」
「ダンジョン内での戦闘ですか……それなら魔王も勇者も減りづらいはずですな」
そういえば……。
「街に行ったときさ、魔族の気配ってあった?」
「私は気付きませんでしたな。潜入班とのやりとりも──」
もうかなり過去の話ということで。
「今は符丁も変更されているでしょうし、連絡を取るのは難しいであります」
「バチバチにはやり合ってないのかもな」
だとしたらあんまり戦争のことを気にしなくてもよさそう。
それに他の魔王と連絡を取り合う必要性も感じないしな。
一旦は落ち着けるか。
「つまりこれならデートに行ける」
「えっ!?」
「じゃ、じゃなかったっ、情報収集に行けるッ!」
「で、で、でしたなっ!!」
な、なんか無意味な誤魔化しをしてしまった!
しかもバレバレ。
失敗した……勇気を出して漢を見せるべきだったのでは!?
「……」
「…………エリュシオン様?」
「リ、リゼッタ」
「は、ははっ」
やり直しをさせてもらうぞ!
「デ、デ、デート、行こう?」
「ぁ……はいっ!」
シーズンパス全部持ってて、キャラスキンも全部持ってて、挙句の果てにある謎のDLCのBGM集まで買ってる人にしか解放されないような笑顔。
勇気の報酬としては高すぎるでござっ!!
「は、破壊力の高い笑顔だったよ、リゼッタ」
「エ、エリュシオン様だって凄く愛らしく、私の心臓は爆発しそうであります。真っ赤になってモジモジされておられるエリュ──」
やめて!?
早口で細かく説明しないでくれたまえっ!
だから遮るように宣言する。
「ぼっ、僕も! 僕も爆発しそう……だよ」
正面からまともにリゼッタを見てられなくて、チラチラ視線を外してしまう。
僕もなんだろうけど、リゼッタの顔だってどんどん赤くなってるよ。
2人して過呼吸ぎみだ。
お互いの心臓の音さえ聞こえて来そうな距離。
「凄くキレイだなあ……リゼッタは」
「ハウッ」
つい漏れてしまう、いつもの感想。
キーボードがあったらリゼッタスレに、カチャカチャとなにかを書き込んでるころだね。
盛り上がっちゃってるからね! 僕が!
「ご、御無礼をっ」
「あムっ!?」
くぁせふじこちゅーッ!?
こここれって!?!?
「こっ、ここっ、高出力のピラミッドパワー……仕事をしてくれたでありますっ」
僕たちはついに一線を越えてしまった。
「こ、これはもう恋人っ。推しのリゼッタと恋人……僕はもう死にそう」
ちゅーをしたなら恋人と言っていいのでわっ!
「私たち、ゾンビでありますれば。ふふふふ」
「あ、それは僕のセリフだったヤツじゃん。あはははは」
このあとめちゃくちゃゾンビした。
仕方ない。
盛り上がっちゃったんだもの。
オタクだって……オタクだって……やらしめの知識を十全に発揮しようとする!
「道半ば……か」
「は。ですが1歩前進ではあります」
「そ、それはそうだね! じゃあ僕たちも出掛けようか」
「は、はは。ですが、あの、その……エ、エリュシオン様の……そのぉ…………」
「多分どこかで元気に暮らすんでしょう……」
大丈夫。
だって代わりが生えるもの。
二本目のさまようチソチソが誕生しちゃったんだよねっ。
「僕とのリンクが切れるから追えないんだよな。追う必要もない気がするし、追うのもやだよ?」
「では気分転換をしましょう。お誘いいただいたデート、楽しみであります!」
お互いモブ冒険者Cの指輪を付ける。
そして僕は残り少ない勇気を搾りだして、リゼッタの手を握った。
「デート……だから」
「こ、恋人つなぎであります」
「じゃ、じゃあ落ち着いた行動を心がけよう」
「はい。外出すればピラミッドパワーはありませんからね」




