15 だけど確かな幸福を与えてくれる。
「ダンジョン作りの作業、どこでやるかな」
「私が必ず御守りする所存でありますが、命のやり取りですものね」
心臓を捧げてダンジョン作成だからね。
落ち着けて安全な場所でやる必要あり。
「出入口の場所も決まったし、まずは休憩に゛し゛よ゛う゛」
「はい!」
茶屋魔法の起動を感じたリゼッタが、嬉しそうに返事をした。
今回は裏世界のカフェに通じる扉だけなので軽いゾンビだけで済むはずだ。
……軽いゾンビってなんだよ。
異世界七不思議かね?
「お゛またせ」
「ふふ、この待つ時間も楽しい時間ですので」
そういえば僕の顔を見て愉悦してたっけな。
リゼッタってば。
「そんな嬉しいこと言われたらケーキが出ちゃうよ?」
ゲームのキャラに転生したとはいえ、儚げ清楚美人が僕で愉悦るのも、よきよきだ。
「素晴らしきご提案であります」
ていうか、この隠れ家カフェで相談しようと思ってたけど、ここでダンジョン作っちゃえばいいじゃんってなった。
魔王は裏世界への干渉が可能なキャラ。
裏世界でも作業ができるのは、ダンジョン運営で確定してるしな。
しかもこのカフェって外部と隔離されてるから安心安全!
「茶屋魔法って、もしかしてダンジョンみたいなものなのかも」
「どちらにせよ、エリュシオン様の御力ということであります」
「ふふ、じゃあ選ぼうか。メニュー作ったんだ」
メニューを見る僕たち。
隠れ家を意識してるし、効率も考えてるから小ぢんまりしたカフェ。
狭いから必然的に距離が近くなったのは、想定外のことなんです。ホントに。
暴走するほどじゃないドキドキ。
だけど確かな幸福を与えてくれる。
「こんな平凡な日々もよいものであります」
「だね」
膝コツンする。
「あ、申し訳ございません」
「ううん、全然。狭いから仕方ないよ」
前は当たらなかった気がするが?
リゼッタが避けてたのかも。
なんとなく避けようとするリゼッタの膝の動きを遮ってしまった。
「エリュシオン様?」
「え、えーと、ついちゃっかり、かな? ごめん」
「い、いえ……」
はい、アウトー!
リゼッタから大事に思ってもらえている。そう理解してるからってやり過ぎてしまった。抑えないとゾンビ化するというのに。
「ドキドキが過ぎるのは危険であります。エリュシオン様」
「う、うん」
ちゃんと怒られてしまった。
だけど……リゼッタの表情は嬉しそうで。
「マ゛、マズい゛、ふ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅ…………だ、大丈夫」
「お互い゛……に、注意し゛ましょう」
リゼッタもゾンビになりそうっていうのは、僕にときめいてくれてるから。
その姿を見て、また危なかった。
「お洒落なカフェは危険だ」
「そんなときは食欲を満たしましょうぞっ」
「そ、そうだね」
でもイチゴショートの写真で、あーんを連想したのか赤くなるリゼッタ。
「あーんは……禁止であります」
「わかてるっ」
言いかたもちょっとズルいぞ。
そんなカワイイの、ズルい。
変な返事になっちゃったじゃんッ。
「素敵なカフェですからな。ゾンビは似合いませぬ」
「ピラミッドパワーもね」
透明なら問題はないだろうけど、カフェからはみ出た部分が機能するのか、干渉しておかしなことになるのか。それも分からない。
実験も怖いしな。
カフェ側をはみ出さない広さに再設計するしかない。
もしくは最初からピラミッド型カフェという脳筋スタイルか。
現状では僕たちの心が強くならないと、ドキドキ禁止ということだ。
せっかくの素敵を無駄にしてるなあ。
「今は雰囲気は楽しもう」
「ですな!」
「ほい、イチゴショートとコーヒーね」
「ありがとうございます」
「僕はレアチーズケーキにしよ。下側が砕いたクッキーのとこが好きなんだ」
「おかわりはそちらをいただいても?」
「オッケー。今日も色々出しておくか」
ケーキスタンドにレアチーズにチョコ、シュークリームとかも乗っけた。
「わぁ」
そのウキウキした表情を、側で見れるだけでも感動ものなんだよね。
嬉しみの極。
「僕はリゼッタを甘やかしすぎてる気がする。あははは」
「ンフフッ、問題ないでありますぞぉ?」
ちゃっかりリゼッタも、またよきものよのぅ。
「それにしても……これほど膝が接触しておりましたか?」
「確かに?」
なんか当たってしまうような?
「ンン? ダンジョンと思ったのは正解なのか?」
「と言いますと?」
「狭くなってる、気もする。ダンジョンコアがないから……崩壊中なのでは!?」
「言われてみれば!!」
狭いカフェを作ったせいもあって気付かなかったな。
「コアを付けるべきだったな」
「それでしたら先にダンジョンではありませぬか?」
「ゾンビだし再生するんだから、カフェ用のコアにしてもいいと思うんだけどな、僕の心臓」
「あの、エリュシオン様。コアルーム側にセーフエリアのカフェではいけないのでありますか?」
「い、一旦出ようか。危ないかもだし」
「は。素敵な時間をありがとうございました!」
人の気配がない場所に移動しつつ、カフェを作る魔法にこだわった理由を搾りださなくてわっ!
だってダンジョンの中に作ればいいって気付いてなかった、ポンコツだと思われたくないのでねッ!!
「そうそう、茶屋魔法はさ、ダンジョンを作る前でもさ、のんびりできる空間が欲しかったんだよね」
じ、事実だし?
「なるほど! 確かにそうでありますな!」
赦された瞬間である。
さ、野営の準備準備。
テントを広げる。
「うーん、茶屋魔法のカフェは、裏世界のどこに作られてたんだろうか」
「ざっくりと御作りに?」
「う、うん」
旗も立ててないしな。
オヤァ?
「結構マズい魔法だったかも?」
「裏世界に閉じ込められるような……でありますか?」
コアもないし、そのまま潰れてGAMEOVERだった……とか?
オヤオヤァ!?
「しかし素敵な場所でしたから、ダンジョンにも……その、欲しいであります」
「リゼッタの言う通りだね! 隠れ家カフェはいいものだから、もちろん作るさ」
あれは自画自賛できるよいものだ。
「提案を御採用いただきましたこと、この身に余る光栄ッ! エリュシオン様の深い御慈悲、心より感謝申し上げるであります」
大げさなすぎるんだよな、この恐悦至極系女子めぇ。
それもまた──よき。
「ワクワクが止まらなくなったので、今ダンジョン作っちゃう」




