10 ヒ、ヒドイ……なんてろくでもないイベントなんだろうか!?
少し落ち着いて、ゾンビ化解除セットが起動してからゾンビ化の原因を探る。
魔力切れではない。
僕の魔力はもちろん、吸魔の結晶も十分に蓄えがある状態だ。
「謎であります」
「全くだね。魔力切れでもなく、創作魔法を使ったわけでもない」
今まででゾンビ化したときのことを、2人で考えてみることにした。
この空間、茶屋魔法のカフェやケーキなんかは、一度作ってしまえば魔力消費はないからな。
ここが原因でもないし。
「やはりエリュシオン様が、魔法を御作りになられているときくらいでありますな?」
セーフエリアだからゾンビ化しなかったというのも違うしなあ。
ここもセーフエリアなので。
そういえば……ボス部屋で小袋作ったときはゾンビ化しなかったな?
あれは皮の素材があったし、小さいものだったからか?
「うーん、魔法自体がエラーを起こしてるってことになるよなあ」
「なぜでありましょうか」
「なぜ? うーん? その……1個思い付くけど……うぅぅん」
「なんでありますか? エリュシオン様」
「う、その……ぼ、僕はあのとき…………リ、リゼッタに凄く、そのぉ、ときめいていましてっ! ドキと゛き゛く゛ぁ゛は゛け゛し゛か゛っ゛た゛ん゛と゛ぁ゛っ゛」
「わ、私に!? エリュシオン様がわ゛た゛す゛ぃ゛ぬ゛ぃ゛っ゛!?!?」
原因が判明した……今のゾンビ化でね。
ドキドキが激しいと、ゾンビ化する。
推しにときめいたら、ゾンビ化する。
そして嬉しいことに、リゼッタも僕を推していた件。
やったぜ!
でもラブパッションがゾンビの素という羞恥の極。
「$×◎△%&&#?!?」
それを伝えると、リゼッタも悶えた。
まあそうなるよな。
なんで自分のラブラブ感情を分析しなくちゃいけないんだ。
さすがに草。
もう僕たちのライフは0です。
ゾンビだけにねっ、てか!!
「さすがに恥ずかしい」
「まったくであります……」
あれ? でも激しいドキドキ、前にもあったぞ?
ゾンビ化解除セットを作ったあと、つい手を握っちゃったとき。
それから僕がなにか言ったら、リゼッタがすっごい笑顔で近付いて来てさ。
あまりにもガチ恋距離だったせいで、死を超越できると思ったとき。
このときはさっきと同じくらいドキドキしてたはず。
ぬぬぅ、この考察、凄い嫌なんだが!?
しかし確認しなければ先には進めぬッ。
「リゼッタ、僕が目覚めた部屋なんだけど──」
あの部屋には、なにか秘密があるんじゃないかと思ってね。
リゼッタに質問してみた。
「あそこは玄室でありますな。ピラミッドダンジョンの中心部分になります」
不思議パワーがあるんだって。
知ってるー、僕も知ってるヤツー。
まさかまさかのピラミッドパワーでした。
えぇ? 真面目な話? それぇ。
「その力はエリュシオン様御再誕という奇跡をもって、証明されたのであります!」
「あー、た、確かに。実験をする必要があるな……恥ずかしくてもッ」
僕たちは、この悲しい現実を確認するために現場へ移動した。幸いにも王の間と玄室はご近所さんです。
「まずは僕だけ……恋愛的なドキドキを想像してみる」
ウキウキワクワク方向のドキドキではゾンビ化しなかったからな。
ボスの砂金化はスゴイ興奮した自覚あるから、図らずも実験完了してた。
なのでセルフメロつき実験だけでいいのだ。
「はは」
神妙に臣下の礼をするリゼッタ。
うん……自分の番もあるもんね。
覚悟がいるよなあ。
推しの目の前で、推しとのイチャイチャを妄想して、1人ですっごい興奮しなくちゃいけないんだから。
ヒ、ヒドイ……なんてろくでもないイベントなんだろうか!?
ふぅ、よし! 始める。
「羽ばたけ──妄想力」
僕はリゼッタをチラチラ見つつ、羽ばたきが大人的二次創作に行かないよう注意しながら同棲イベントとか妄想した。
「エリュシオン様、真っ赤……かわいっ」
聞こえてるからヤメテ!?
そして僕の心臓は、爆発しちゃうんじゃないかと思うくらい暴れた。
「この部屋だと平気そうだ」
「古文書は正しかったようでありますな。謎の多い施設です。ピラミッド型は」
「……ダンジョンであることは関係がないってのも分かったね」
「確かに!?」
ダンジョンコア、取っちゃったし。
崩壊まで1週間のカウントダウンは始まってるんだし。
「ドキドキ解除は個人なのか、僕が巻き込んでいるのか。実験しておかないと」
「では玄室の外へ参りましょう」
なんか余裕そうだが?
「えっと、リゼッタ1人の妄想でゾンビ化するかの実験だよ?」
「ふあっ!?」
「そのあと僕もやんなくちゃいけないけど……僕の魔法だから巻き込む可能性があるしさ……」
「くっ……殺して欲しいであります」
このクッころイベント、いらない。
◆
実験を繰り返した結果、僕たちはゾンビのくせに屍のように横たわってる。
ゾンビ化解除セットによって稼働している心臓シミュレーターは、とっても元気ですが……僕たちの心は砕け散っていますので。
「恥の上塗りを自らの意志で……ウゥ」
「ゃぁ……エリュシオン様に見られちゃったであります……」
儚げ清楚系美人さんが、そんなか細い声を出したら消えちゃいそうだよ。
「ってか誤解を生みそうな言いかたァ!?」
「ぁう、申し訳ございませぬ」
「ううん、いいよ……心がツライもんね」
「はぅぅ」
砕けた心が落ち着くまで待って、2人で考察する。
その結果、魔法で強引に生身を模してる状態だから、鼓動や血流の再現が凄い負荷をかけてるということなのかもしれないってなった。
それでゾンビ化解除セットがエラーを起こす。
「これが一番それらしい理由かもなあ」
「難解でありますな」
「僕も想像で魔法を作ってるからさ。たぶん、って感じ」
これ以上はゾンビボディが壊れちゃうから、止めとくねっていうゾンビ化解除セットくんの優しさ説。
「そして玄室だけが平気な理由はアレだ」
「ハッキリしましたな」
「だね。ピラミッドパワーが影響してる」
ピラミッドパワーっていう謎理論が異世界とマッチングアプリったんだ。
僕の頭じゃ理解不能理解不能ってことで!
生と死の境界が曖昧な場所、ピラミッド。
「僕はピラミッド型ダンジョンの制作を目指すよ」
「ダンジョンコア、あとで取ればよかったでありますな……」
「うん……」
完全に後の祭りってヤツだけど、祭りは何回でも開催すればいいしな!
もう魔王になってるからダンジョン作成の条件は満たしてるし。




