24.死神との帰り道
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子供達を人買いから救い、食事を与え、今夜はギルドに泊まり温かい暖炉の前で寝かせてもらえるらしい。
カレンとヴィンスはラシッド店長に子供達を任せ、『黒猫の足跡』を後にした。
月明かりしか照らさない、その名の通り真っ暗な暗黒街の帰路を歩く。
「物騒な場所だ、送ろう」
黒いローブにマスクをつけた全身真っ黒な『死神』は、カレンの隣を歩きながら告げる。
宮廷からこっそり抜け出してきているので、お互い宮廷に帰るのだが、悪党に絡まれるのも面倒だし、カレンはお言葉に甘えることにした。
「ありがとうございます、死神さん」
どこに聞いている人がいるかわからないので、暗黒街の中でも念の為ヴィンスを死神と呼ぶカレン。
「時間通り来てくれて助かったよ、今度とも頼む。
ミア先生」
ヴィンスも密約の通り、闇医者ミアの名前でカレンを呼ぶ。
「……あなたは何故、暗黒街で顔を隠してまで、こんなことをしているの?」
風が強く吹き、ポニーテールに結ったカレンの金髪が揺れる。
ヴィンスはみんなが憧れる完璧な宰相で、地位も名誉も金も得ているはずなのに。
「法の整備にも時間がかかる。予算を捻出し、起案し、それが通ったとしても施工は数ヶ月から数年かかる。その間に苦しんでる人はすぐには助けられない」
「でも、昼の宮廷での仕事だけでも、あなたのおかげで多くの人は救われているはずです」
カレンは声をひそめながら、ヴィンスの働きを褒めるも、彼はふっと鼻で笑うだけだ。
「君は随分俺を買い被っているようだ。
俺ができることなど、本当に少ない」
「でも……就任して三年で他国との外交もうまく行き、若者たちの教育推進や自給率の上昇とか、素晴らしいと思いますよ」
まだ宮廷に入る前、カレンが医療学校の生徒をしていた時から、若き宰相が王都を変えていくと、そんな新聞の見出しをよく読んでいた。
そして、密かに憧れていたものだ。
「それは表向き、誰が見ても良い起案だから話も順調に進むんだ。……しかし物事は綺麗事ばかりではない。例えばさっきの『暗黒街浄化』計画」
ヴィンスは眉を顰め、苦々しく語る。
「貧民たちを疎んじている貴族たちが、秘密裏で進めていることだ。
おそらくは宮廷にいる貴族も一枚噛んでいるだろう。だから、暗黒街復興の話は一向に進まない」
普段過ごしている宮廷内に、そんな人がいるとは考えたくはないが。
しかし現に、さっきの犯人は王都の商会にて請け負ったと言っていたし、貴族の中に黒幕がいてもおかしくはない。
カレンもまだ宮廷入りして数ヶ月だが、やはり生まれながらの宮廷暮らしの貴族と、自分のように勉学に励み外から入って来た者とは、住む世界が違い、見えない壁を感じることも多かった。
「それだけじゃない。……平民出身の俺が宰相の地位にいるのを、面白くないと思っている者も多い」
ヴィンスはため息まじりで語る。
法務学校を主席で出て、良い結果を生み出している彼ですら、疎まれるなんて。
「そんな……! 生まれなど関係ないです、宰相がやった功績や能力に目を向けるべきです!」
カレンはそんなのおかしいと、隣を歩くヴィンスを見上げて抗議する。
「みんながみんな、君のように清廉潔白で正義感が強いわけじゃないんだよ、ミア先生」
一瞬面食らったが、『死神』は肩をすくめるだけだ。




