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24.死神との帰り道

***


 子供達を人買いから救い、食事を与え、今夜はギルドに泊まり温かい暖炉の前で寝かせてもらえるらしい。


 カレンとヴィンスはラシッド店長に子供達を任せ、『黒猫の足跡』を後にした。


 月明かりしか照らさない、その名の通り真っ暗な暗黒街の帰路を歩く。



「物騒な場所だ、送ろう」



 黒いローブにマスクをつけた全身真っ黒な『死神』は、カレンの隣を歩きながら告げる。


 宮廷からこっそり抜け出してきているので、お互い宮廷に帰るのだが、悪党に絡まれるのも面倒だし、カレンはお言葉に甘えることにした。



「ありがとうございます、死神さん」



 どこに聞いている人がいるかわからないので、暗黒街の中でも念の為ヴィンスを死神と呼ぶカレン。



「時間通り来てくれて助かったよ、今度とも頼む。

 ミア先生」



 ヴィンスも密約の通り、闇医者ミアの名前でカレンを呼ぶ。



「……あなたは何故、暗黒街で顔を隠してまで、こんなことをしているの?」



 風が強く吹き、ポニーテールに結ったカレンの金髪が揺れる。


 ヴィンスはみんなが憧れる完璧な宰相で、地位も名誉も金も得ているはずなのに。



「法の整備にも時間がかかる。予算を捻出し、起案し、それが通ったとしても施工は数ヶ月から数年かかる。その間に苦しんでる人はすぐには助けられない」


「でも、昼の宮廷での仕事だけでも、あなたのおかげで多くの人は救われているはずです」



 カレンは声をひそめながら、ヴィンスの働きを褒めるも、彼はふっと鼻で笑うだけだ。



「君は随分俺を買い被っているようだ。

 俺ができることなど、本当に少ない」


「でも……就任して三年で他国との外交もうまく行き、若者たちの教育推進や自給率の上昇とか、素晴らしいと思いますよ」



 まだ宮廷に入る前、カレンが医療学校の生徒をしていた時から、若き宰相が王都を変えていくと、そんな新聞の見出しをよく読んでいた。


 そして、密かに憧れていたものだ。



「それは表向き、誰が見ても良い起案だから話も順調に進むんだ。……しかし物事は綺麗事ばかりではない。例えばさっきの『暗黒街浄化』計画」



 ヴィンスは眉を顰め、苦々しく語る。



「貧民たちを疎んじている貴族たちが、秘密裏で進めていることだ。

 おそらくは宮廷にいる貴族も一枚噛んでいるだろう。だから、暗黒街復興の話は一向に進まない」



 普段過ごしている宮廷内に、そんな人がいるとは考えたくはないが。


 しかし現に、さっきの犯人は王都の商会にて請け負ったと言っていたし、貴族の中に黒幕がいてもおかしくはない。


 カレンもまだ宮廷入りして数ヶ月だが、やはり生まれながらの宮廷暮らしの貴族と、自分のように勉学に励み外から入って来た者とは、住む世界が違い、見えない壁を感じることも多かった。



「それだけじゃない。……平民出身の俺が宰相の地位にいるのを、面白くないと思っている者も多い」



 ヴィンスはため息まじりで語る。

 法務学校を主席で出て、良い結果を生み出している彼ですら、疎まれるなんて。



「そんな……! 生まれなど関係ないです、宰相がやった功績や能力に目を向けるべきです!」



 カレンはそんなのおかしいと、隣を歩くヴィンスを見上げて抗議する。



「みんながみんな、君のように清廉潔白で正義感が強いわけじゃないんだよ、ミア先生」



 一瞬面食らったが、『死神』は肩をすくめるだけだ。


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