21.子供の救出を
「ミア、終わった。こちらへ来て、子供達の手当を」
ヴィンスは入り口で一部始終を静観していたカレンを振り返り、闇医者の名前ミアで呼んだ。
カレンは立ち上がり、急いで駆け寄る。
男の子二人と女の子一人。
暴れないように手首を縛られているので、
「もう大丈夫だからね、私たちが助けるから」
そう言って跡のついた手首を優しく撫でると、勇敢に犯人に噛み付いた男の子は、大きな瞳いっぱいに涙を溜めた。
「うう………怖かったよぉぉ……!」
「よしよし、頑張ったね」
三人の子供を抱きしめ、カレンは自分の上着を着せて温める。
手首には痛み止めの軟膏を全員塗ってあげて、顔や手足の汚れを軽く拭いてあげた。
怖い思いをしたのだろう、安堵し泣き崩れる三人を助けられて、本当によかった。
「子供達の状態はどうだ」
「見たところ怪我はないわ。ただ、栄養状態があまり良くない。
ろくな食事を与えられていなかったんでしょう。
あと、精神的負荷がかかっていただろうから心のケアも重要ね」
黒いローブにマスクをつけたヴィンスは、顔はほとんど見えず不気味だが、心から子供達の心配をしているようだった。
「ギルドに連れて行って、食事を与えよう。
みんな、歩けるか?」
「う、うん……」
「あ、あたしは、足をくじいちゃった……」
女の子は、逃げようとしたときに転んだ足が痛々しく腫れてしまっていた。
カレンが痛み止めを塗ったが、すぐには歩けなそうだ。
「そうか。じゃあ、俺の背に掴まって」
ヴィンスは膝を折ってしゃがむと、女の子に向かって背中を差し出した。
遠慮がちに、女の子がヴィンスの首に背に手を回すと、おんぶの体勢でゆっくりと立ち上がる。
「ミア。一応死なないように、あいつらにも止血だけしておいてやってくれ」
ヴィンスは汚いものを見るような目で、床で気絶している人攫いの二人を見下ろしている。
一人は手の甲をナイフで、もう一人は肩と腕を細剣で切っただけだが、血が出ているため一応止血を、と医者であるカレンに指示をした。
「明日、俺が書類上で社会的に始末する」
細剣で倒すのは夜の『死神』の役目、そして実質上の制裁は昼の『宰相』の役目だと。
一人で二役、昼と夜の顔を持つヴィンスが、暗黒街に巣食う諸悪を排除したのであった。




