第203話 相変わらずのうっかり
明朝――秋月が車で迎えに来てくれた。睦郎さんの店まで送ってくれるそうだ。
「何かいつも悪いな」
「気にしないで。配信の為にいつも協力してもらってるわけだし」
俺達は荷物を車に乗せ、秋月の車に乗った。邪魔にならないようコンパクトに纏めたけど、俺は武器の鍬もあるからね。
「そういえば配信見てみたけど結構伸びてるようで良かったよ」
「うん♪ 海でモンスターたちが釣りをしてるのが受けたみたいなんだけど」
秋月が笑って答えた。確かに海釣りのモンスターたちの愛らしい姿は見るものを惹きつけるだろうな。
「皆のおかげで動画が伸びてるって。流石だよな」
「ワンワン♪」
「マァ♪」
「ピキィ♪」
「モグ~♪」
「ゴブ♪」
話を聞いて皆も喜んでいる。俺と一緒によく動画を見るから、なんとなく意味は理解しているんだろうな。
「――あとね、コメントを見るとわかると思うけど、タマちゃんも結構人気だったみたい」
苦笑交じりに秋月が言った。そうだった。俺も見たけど動画にはタマも含めた鬼輝夜や帝と社員が映ってる部分もあったんだった。
このあたりはモンスターとの絡みも多かったから仕方ないといえば仕方ない。
ちなみに秋月は動画の投稿前に皆には確認していたようだ。
「言われてみれば、でもタマだけじゃないよな。他の皆へのコメント結構あるし」
「あ、うん。確かにそうだね」
秋月はそう答えた後、少しだけ苦笑した。
「もちろんコメントが増えるのは嬉しいんだけどね」
「うん?」
「本当はモコちゃんたちを見てほしくて始めた配信だから」
秋月が信号待ちのタイミングで画面を見せてきた。
「ほら、この辺なんてコメント欄がタマちゃんの話題で埋まっちゃってるし」
「あー……」
言われてみればそんなコメントも結構あったな。
「別に嫌とかじゃないんだけどね。皆可愛いし、鬼輝夜の人たちも良い人だし」
「だろ?」
「もちろん皆が楽しんでくれるのは嬉しいんだけどね。ただ、モコちゃんたちが主役の動画だから、そっちも見てほしいなって」
そう言って秋月は苦笑した。
「それに――」
「ん?」
「いや、何でもないよ。ごめんね。これからダンジョンに行くのに変なこと言って」
「いやいや! それは全然気にしなくていいって」
秋月が謝ってきたけど、それとこれとは別だし謝ることではない。
「でも、試練の為にダンジョン探索なんて一体どんな場所なのかな。危険じゃないといいんだけど」
「ま、まぁそこは冒険者として慎重に進むつもりだよ」
不安そうな顔を見せる秋月に答える。今回は俺とモンスターたちだけで挑まないといけないから心配してくれるのもわかる気はするけど。
「あ、そういえば――ダンジョンに潜ることはギルドには伝えた?」
「へ?」
「えっと、確かダンジョンに潜る時って許可を貰う必要あるよね?」
「あ!」
しまった!
装備や保存食の準備に没頭していて、一番大事なことを忘れていた!
や、ヤバい。流石に今から手続きなんてしていたら間に合わないし。
俺が頭を抱えていると、スマフォに着信があった。
誰かと思って出てみると――
『よぉ風間。元気してるか?』
「ギルドマスター!」
まさにタイミングばっちり――小澤マスターの声が天の声にも感じられた瞬間だった。




