第202話 夏に合宿
『動画受け取ったよ。皆可愛くて最高だよ!』
タブレット越しでもわかるぐらい、秋月のテンションが高い。
「それなら良かった。人気出るといいけどな」
夕食を食べ終えた後、俺たちは放置ダンジョンでのんびりしていた。
モコたちは今日の釣りで疲れたのか、エアーマットや椅子の上でまったりしている。
そんな中、秋月からビデオ通話が掛かってきたのだ。
今日釣りに行くことは、事前に俺のスマフォから連絡していた。
その時に「配信に使いたいから、皆の動画撮ってきて!」と頼まれていたんだよな。
というわけで、海釣りを楽しむモンスターたちの動画を共有したわけだ。
画面の向こうでは、秋月がタブレットを抱えながら動画を再生している。
『あっ、ここ! モコちゃんが魚釣ったところ! 可愛い~!』
「ワン♪」
自分の姿を見つけたモコが、得意げに胸を張る。
『ラムちゃんの麦わら帽子も反則級だよ~』
「ピキィ♪」
ラムも嬉しそうにぷるぷる震えていた。
秋月の反応は上々どころか大興奮だ。
配信者として、これはかなり手応えを感じてるんだろうな。
『釣りは鬼姫さんの弟さんと一緒に行ったんだよね?』
「あぁ。帝はクルーザーまで持ってたんだぜ。驚いたよ」
『すごいね~。でも、なんか楽しそう』
秋月が少し羨ましそうに笑う。
「そうだな。途中で鬼輝夜の皆も合流したんだけど、それでも余裕あるぐらい大きかったんだ」
『――へ、へぇ~。そうなんだ』
一瞬、秋月の笑みが引きつったように見えた。
『じゃあ……タマちゃんも一緒だったんだ』
「え? あ、まぁそうだな。もちろん他のメンバーも一緒だったけど」
なんだろう。
鬼輝夜の名前が出た辺りから、空気が微妙に変わった気がする。
気のせい……か?
「そうだ。それでまた皆で海に行こうって話になったんだけどさ」
話題を変えるように俺が続ける。
「鬼輝夜って夏に合宿するらしくてな。俺も誘われたんだよ。秋月もどうかな? 熊谷とか中山、それに愛川も誘ってみようかと思ってるんだけど」
すると、画面の向こうで秋月がぱちぱちと瞬きをした。
『え? 私もいいの?』
「もちろん。こういうのって人数いた方が刺激になると思うし」
『う、うん! そうだね! いい考えかも!』
さっきまでより声が明るい。
良かった。どうやら気分は持ち直したみたいだ。
『あ! そうだ!』
急に秋月が身を乗り出した。
『実はね、うちの道場も今年の合宿どうしようかって話をしてたみたいなんだ』
なるほど。
秋月の家も道場を開いているんだから、夏合宿があっても不思議じゃない。
「それなら逆に悪かったかな?」
『ううん、そうじゃないの!』
秋月が慌てて首を振る。
『それなら、うちの道場と鬼輝夜で合同合宿とかどうかなって思って!』
「合同合宿?」
それは予想してなかった。
だけど――。
鬼輝夜は以前、山守家の道場に来ていたし、その時も結構満足していた感じだったんだよな。
「うん、良いと思う」
気づけば自然と頷いていた。
「鬼姫も鍛えるのは好きそうだしな。聞いてみるよ」
『私もお父さんにそれとなく話してみるね!』
秋月の表情がどんどん明るくなっていく。
合宿の話が相当楽しみなんだろう。
モンスターバトルに、合宿、それにダンジョン探索。
こうして考えると、本当に色々動き始めてるな。
『でも――まずは明日だね』
秋月がふっと真面目な顔になる。
『ダンジョン攻略、頑張って』
「あぁ。睦郎さんを納得させるためにもな。皆で頑張るよ」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「ゴブッ!」
「マァ!」
「モグゥ~!」
モンスターたちも張り切った声を上げる。
俺の話し方や雰囲気から、何となく内容を察してるんだろうな。
『ふふっ。皆もやる気十分だね』
「これならきっと良い結果に繋がるさ」
『うん! 応援してるからね!』
そう言って秋月が笑顔で手を振った。
通話が終わった後、俺は明日のために揃えた装備を改めて確認する。
収納袋。
ロープ。
保存食。
モンスター用の携帯食。
そして簡易ランタン。
鬼姫には合同合宿の件もメッセージを送っておいた。
すると、数分もしないうちに返信が来る。
『面白そうじゃないか。うちとしては歓迎だよ』
かなり乗り気らしい。
「さて……」
明日はダンジョンで素材集め。
その先にはモンスターバトルも控えている。
さらに夏合宿まで加わるとなると――。
「今年の夏、かなり忙しくなりそうだな」
「ワン♪」
「ピキィ♪」
「マァ~」
「ゴブゥ」
「モグゥ!」
皆も楽しそうに鳴いていた。
そんな声を聞きながら、俺は明日に備えて早めに休むことにした――。




