第201話 釣果と夕食
陸に戻った後は、鬼輝夜のメンバーと別れ、帝の車でダンジョンまで送ってもらった。
「わざわざ送ってもらって悪かったな」
「俺が誘ったことだからな」
「いや、でも楽しかったし、誘ってもらって良かったよ。また一緒に行こうぜ」
「――そうだな。たまにはこういうのも悪くない」
帝が小さく笑う。
そんな様子を見て、俺も自然と頬が緩んでいた。
「ワンワン!」
「ピキィ♪」
「マァ♪」
「ゴブッ!」
「モグゥ~!」
モンスターたちも「また遊びたい!」と言わんばかりにはしゃいでいる。
「皆にも随分懐かれたな」
「……柄じゃないんだがな」
そう言いながら、帝がクーラーボックスを俺へ差し出してきた。
「これは?」
「今日の釣果分だ」
「いやいや、楽しませてもらっただけで十分だって」
「そう言われてもな。こっちだけでも食いきれない。ボックスは今度会った時に返してくれればいい」
そう言われてしまうとな。
「わかった。ありがたく受け取っておくよ。これもしっかり返すからな」
「あぁ。じゃあまた今度な」
そして帝たちは車に乗り込み帰っていく。
帰り際、社員の三人が窓を開け、笑顔で頭を下げてくれた。
本当に、話してみたら皆気さくでいい人たちだったな。
それにしても――結構なお土産まで貰ってしまった。
「……今度、か」
帝とも随分打ち解けられた気がする。
「よし! せっかくだし、この魚を使って今日の夕食にするか!」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「マァ!」
「ゴブゥ!」
「モグッ!」
魚料理と聞いて、皆のテンションも一気に上がった。
今日の釣りの余韻が残ってるんだろうな。
俺もなんだか楽しくなってくる。
「じゃあ少し休憩したら始めるか」
そうして一息ついた後、俺たちは調理の準備にかかった。
「さて、何を作るかな」
クーラーボックスを開ける。
中にはアジ、サバ、ベラ、それに少し大きめの魚も入っていた。
刺身も考えたけど、昼に港で結構食べたからな。夜はまた別方向にしたい。
「よし。今日は徹底的に魚づくしで行こう」
まずアジは南蛮漬けにすることにした。
三枚に下ろして軽く塩を振り、片栗粉をまぶして揚げる。
ジュワッと油の弾ける音が響き、香ばしい匂いが広がった。
「ワンワン!」
モコが尻尾をぶんぶん振る。
完全に待ちきれない顔だ。
「まだだぞ。熱いから危ないしな」
次にサバは味噌煮だ。
生姜を利かせ、甘辛く煮込んでいく。
鍋の蓋を開けると、味噌と魚の香りが一気に立ち上がった。
「ピキィ~♪」
ラムが鍋の周りをぴょんぴょん跳ねる。
……近い近い。
「ラム、火傷するぞ」
マールは野菜の下処理を担当してくれていた。
器用に葉物を仕分けたり、洗ったりしている。
ゴブはもう完全に助手ポジションだ。
俺が指示する前に必要な調味料を持ってきたり、皿を並べたりしてくれる。
魚のウロコ取りもお手の物だ。
「ゴブゥ」
「お、助かる。ありがとう」
ゴブがどこか誇らしげに胸を張った。
そしてモグ。
「モグ~!」
モグは……何故か大根を抱えていた。
「いや、それどこから持ってきたんだ」
どうやら畑から採ってきたらしい。
せっかくだから大根おろしに使わせてもらうことにした。
「今日は和食だな」
「ワン!」
さらに魚の骨やアラを使って潮汁も作る。
煮込むほどに旨味が溶け出し、透き通ったスープが出来上がっていく。
これは絶対美味い。調理を進めるうちに、テーブルにはどんどん料理が並んでいった。
アジの南蛮漬け。
サバの味噌煮。
焼き魚。
大根おろし添え。
潮汁。
そして白米。
「……なんか旅館みたいになったな」
思わずそんな感想が漏れる。
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「マァ~♪」
「ゴブッ!」
「モグゥ!」
皆も待ちきれないようだ。
「それじゃ、いただきます!」
夕食開始。
まずはサバの味噌煮を一口。
「うん、美味い」
脂の乗った身に味噌がよく絡んでいる。
生姜も効いていてご飯が進む。
「ワン!」
モコは焼き魚に夢中だ。
骨を避けながら器用に食べている。
ラムは潮汁が気に入ったらしく、ぷるぷる震えながら飲んでいた。
マールは南蛮漬けがお気に入りみたいだな。
ゴブは味噌煮をじっくり味わい、モグは大根おろしをそのまま食べていた。
「いや、それ辛くないか?」
「モグゥ!」
平気らしい。
そんな皆の様子を見て、俺は思わず笑ってしまった。
釣りをして、皆で料理して、こうして一緒に食べる。なんだかすごく贅沢な休日だった気がする。
「……また行きたいな」
ぽつりと零す。
「ワン!」
「ピキィ♪」
「マァ♪」
「ゴブゥ」
「モグ~!」
皆も同じ気持ちみたいだ。
そんな賑やかな声に包まれながら、俺たちの夕食の時間はゆっくりと流れていくのだった――。




