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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第四章 モンスターバトル編

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第197話 港の調理場

 帝に案内されて向かった先には、港の一角に建つ大きな建物があった。

 中に入ると、手前が調理スペース、奥が飲食スペースときれいに区切られている。


 どちらも想像以上に広く、複数のグループが同時に使っても余裕がありそうだ。

 実際、すでに二組の男女が調理をしていたが、俺たちが加わってもまったく窮屈さは感じない。


「ご一緒させていただいても大丈夫ですか?」

「もちろんですよ」

「ここ、広くて使いやすいでしょう?」


 声をかけると、どちらのグループも気持ちよく応じてくれた。

 どうやら慣れた常連らしく、雰囲気も穏やかだ。


 調理場に入り、クーラーボックスを開けて釣ってきた魚を並べる。


「俺も捌くよ」

「え? ハルさん、料理できるんですか?」


 帝にそう伝えたところで、タマが目を輝かせて身を乗り出してきた。

 

……いや、身を乗り出すというか、腕に絡んでる。


「ま、まぁ独身長いしな。山でもキャンプ飯くらいは作るから」

「すっご~い。見ててもいいですかぁ~?」

「別にいいけど」

「いいわけないだろ。あんたも手伝うんだよ」

「えぇ~!? いいじゃないですか、見てるだけでも~」

「いいから下ごしらえ!」


 鬼姫に襟首を掴まれ、タマはずるずると別の作業台へ引きずられていった。


「あんたも大変だな」

「ワン」

「ピキィ」

「モグゥ」

「ゴブ~」

「マァ~」


 帝の一言に、モンスターたちが揃って頷く。

 

……俺、どんな目で見られてるんだろう。


 気を取り直して、全員で調理開始だ。


 俺と帝は魚を捌き、三枚に下ろしていく。

 ゴブは隣で黙々と下処理を担当し、内臓や血合いを丁寧に処理していく。


 その横では竹取が包丁を持ち、ゴブの作業を自然にフォローしていた。

 無言ながらも息が合っていて、完全に職人同士の空気だ。


 一方、十五夜(もちづき)は野菜担当だ。


「はいはい、ここ押さえて……って、えらいねぇ」

「小学生なのに、こんなにお手伝いできるなんて」


 隣のグループの女性にそう言われ、十五夜がぴくりと反応する。


「ち、違う! 小学生じゃない!」

「えっ!? あ、ごめんなさい!」

「私は冒険者だ! れっきとした戦力だ!」


 顔を赤くしてムキになる十五夜に、周囲からくすくすと笑いが漏れる。


「背が小さいだけだ。気にするな」

「気にする!」


 帝が十五夜の頭に手を置くと、彼女は声を張り上げた。そのやり取りを横目に、モコとマールは皿を運んだり、簡単な洗い物を手伝ったりと慣れた動きだ。

 ラムは調味料の場所を覚えたらしく、必要なものをぴょんぴょんと運んできてくれる。


 モグは床下の汚れを布巾で拭いてくれている。気が利くな。


「ハルさ~ん、すごい手際ですね~」


 気づくと、タマがまた覗きに来ていた。

 包丁さばきをじっと見つめている。


「普段からこんな感じなんですか?」

「まぁ、今は皆の分も一緒に作ってるからな」

「へぇ~風間さんって生活能力高くて~頼りになりますねぇ」


 意味ありげな視線を向けられ、背中に変な汗が流れる。


 そうして、焼き魚、煮付け、刺身、潮汁と、あっという間に料理が完成した。


 テーブルに並べると、他のグループからも感嘆の声が上がる。


 折角なので先に来ていた二組と料理をシェアすることになった。こちらも結構な量になったので丁度よい。


「うわ、美味しそう」

「釣りたてでこれは反則だな」

「いただきます!」


 一斉に箸が伸び、港の調理場は一気に賑やかになった。


「……美味しい」

「うん、これ本当にプロじゃない?」

「ワン!」

「ピキィ!」

「マァ~」

「ゴブ~」

「モグゥ!」


 モンスターたちも満足そうに食べている。


 その様子を見て、タマが大きく頷いた。


「やっぱりですねぇ……」

「え?」

「結婚するなら、料理できる男性が一番ですよ」

「……え!?」


 思わず箸を落としそうになる。


「ちょっとタマ、何言ってるんだい」

「本音ですよ~?」

「からかうな」


 鬼姫にたしなめられつつも、タマはにこにこと笑っている。


 俺はただ、どう返せばいいかわからず、必死に味噌汁を飲み干した。


 こうして、賑やかで少し騒がしい昼食は、笑い声と満腹感に包まれて終わったのだった。

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