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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第四章 モンスターバトル編

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第190話 ラム、放電!

「じゃあ、睦郎の店はこの先だな」

「うむ。鬼姫の地図だと通りの奥の方らしいな」

「楽しみだね。どんな人なんだろう」


 昼を終えて再び通りを歩く俺たち。

 真夏の日差しが石畳を照り返し、空気がじんわりと熱を帯びている。

 食後の満足感に包まれつつも、俺たちは賑やかな通りを抜けていった。


「……悪い、ちょっとトイレ行ってくる」

「了解。じゃあ俺たちはこの辺で待ってる」


 熊谷たちにそう告げ、俺は近くの案内板を確認した。

 “公衆トイレ→この先十メートル”の表示。

 モコとラムが小走りでついてきたので、二匹も一緒に行くことにした。


 冒険者通りのトイレは、外観からして妙に立派だ。

 石造りの壁には「魔力洗浄式」の表示板。

 ……こういうところにまで魔導技術が行き渡ってるのか、と妙に感心してしまう。


 用を済ませ、外に出たその時――


「ようやく見つけたぜ、坊主」


 背後から、昼のチャレンジで絡んできたあの声がした。

 振り向くと、三人組が不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「……お前ら、まだ懲りてなかったのか」

「ハッ! 懲りるわけねぇだろ。あの“雷の魔石”、寄越せ」


 リーダー格の男が唇を歪める。

 その後ろでは、もう二人が袋を開き――中から得物を取り出した。


 一本は黒光りするメイス。もう一本は刃の短い剣。

 どちらも、持ち歩くには不自然なくらい大きい。


「魔法の袋か……」


 思わず呟いた。

 あれがあれば、武器でも物資でも自由に持ち運べる――便利な収納魔導具。

 やっぱり、俺もひとつ持っておくべきかもしれない。


 そんな考えが頭をかすめるが、今はそれどころじゃない。


「もう無い。魔石はモンスターが取り込んだ。渡すも何もない」

「嘘つけ! そんな話、信じられるかよ!」


 三人が一斉に距離を詰めてくる。

 通りから少し外れた路地裏――人通りもなく、助けも呼べない。


「戦える武器がない……まずいな」


 腰のあたりに何もない感覚が、妙に重く感じた。

 モコが低く唸り、ラムが前に出る。

 小さな体を精一杯張って、俺を守るように立ちはだかる。


「ワン!」

「ピキィ!」


 男のひとりが棍棒を振りかざした、その瞬間だった。


 ラムの体が光を帯び、表面に淡い黄色の紋様が走る。


「ピキィィィィッ!」


 高く鳴いた直後、眩い閃光が弾けた。

 バチバチッ――と音を立てて雷光が地面を走り、三人の足元で炸裂する。


「うわっ!?」

「ぎゃあっ!」

「な、なんだこれぇ!」


 電撃が空気を震わせ、三人の体が一瞬で痙攣し、地面に崩れ落ちた。

 焦げた匂いが漂い、辺りに静寂が戻る。


 ラムは少し身体を震わせたあと、ぴょんと跳ねて俺の方を向いた。

 その瞳は、誇らしさと嬉しさで輝いている。


「ラム……お前、まさか……雷の力を……!」


 俺が言葉を漏らすと、ラムが「ピキィ♪」と鳴く。

 モコが駆け寄り、心配そうに鼻先でラムをつついた。


「大丈夫そうだな。よくやったぞ、ラム。すごいじゃないか」


 頭を撫でると、ラムはぷるんと体を揺らし、モコも隣で「ワン!」と吠える。


「ハル!」


 通りの方から熊谷たちの声が響いた。

 駆けつけた彼らは、倒れた三人を見て目を丸くする。


「お、お前……どうしたんだこれ!」

「襲われて……ラムが助けてくれたんだ」

「ピキィ!」


 ラムが胸を張るように鳴く。

 秋月も愛川も、目を丸くしながらその小さな体を見つめた。


「まさか、あの魔石の効果がもう……?」

「うん、そうみたいだな。あの子の力になってる」


 その時、通りの方から制服姿の冒険者が数人駆け寄ってきた。

 腕章には「安全管理局」の文字――ギルド直属の治安担当だ。


「何があった?」

「この三人が襲ってきて……ですが、もう大丈夫です」


 俺が事情を説明すると、彼らは頷き、倒れた三人を丁寧に引き取った。三人組が武器を手にしていた事が決め手となったのか、特に怪しまれることもなかった。


「ご協力感謝します。こういう輩は定期的に出るんですよ。通りの安全は我々が預かります」

「助かります」


 俺たちは軽く頭を下げ、現場を後にした。

 少し歩くと、通りの喧騒がまた耳に戻ってくる。


「やれやれ、災難だったな」

「でも、ラムちゃんがいなかったら危なかったかもね」

「ピキィ♪」


 ラムが得意げに鳴き、モコが尻尾を振る。

 その姿に自然と笑みがこぼれた。


「ありがとうな、ラム。本当に頼もしくなったよ」


 ラムはもう一度元気に鳴くと、跳ねて俺の肩に飛び乗る。

 真昼の陽射しが照りつける通りの中、俺たちは再び睦郎の店へと歩き出した。

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