第187話 ラムが興味津々
「ありがとうございます。助かりました」
三人組を追い払ってくれた伊達に、お礼を述べた。
さっきまであれほどの圧を放っていたというのに、今は嘘のように穏やかな笑みを浮かべている。
「気にすんな。あんな連中のさばらせてたら、これから商売上がったりだからな」
腕を組んで笑うその姿は、まさに伊達男という言葉がぴったりだ。
周囲の見物客も「さすが伊達さんだ」と感心したように頷いている。
「結構自信があったんだけど、勝てないわけですね。格の違いを見せつけられました」
秋月が苦笑しながら肩をすくめる。その言葉に、伊達は興味深そうに目を細めた。
「いやいや。君も相当なもんだったぞ。動きを見るに――山守流の門下生か?」
驚いた。秋月の動きを見ただけで、流派まで言い当てるとは。
「門下生も何も、この子は山守家の娘だぜ」
「うむ。あの道場で普段から鍛えられてるんだ。腕前は確かだが、上には上がいるものだな」
熊谷と中山の補足に、伊達は「なるほど」と顎を撫でながら頷く。
「それなら納得だ」
「いえ、私もまだまだですから」
「いや、あんたらはこれからもっと伸びるさ。頼りになるモンスターもいるし、俺もうかうかしてられないな」
豪快に笑う伊達。その笑いにつられて、モコたちも「ワン!」と尻尾を振った。
「私も皆に置いていかれないように頑張らないと」
愛川が小さく呟く。チャレンジに参加していなかった分、少し気にしているのかもしれない。
「愛川は支援がメインだろ? 比べるもんじゃないさ。愛川には愛川の強みがあると思うぞ」
「――ハルさん……」
俺の言葉に、愛川がぱちりと瞬きをしたあと、潤んだ瞳でこちらを見つめてきた。
あれ? 俺、なんか地雷踏んだか?
「わ、悪い。何か気に障ったか?」
「……はぁ。ハルさんはやっぱりハルさんだね」
「へ?」
ため息混じりの秋月が呆れ顔で愛川に声をかける。
二人の間に柔らかな空気が流れ、愛川もすぐに微笑みを取り戻した。
やっぱりこういう時は、女の子同士の方がいいのかもしれない。
「やれやれ。モンスターとは心を通わせても、女心は掴めないようやな」
「あぁ、本当にな」
「むぅ、心に筋肉をつけすぎたのかもしれん」
「うちでもこれは助言厳しいで」
「ワン……」
「ピキィ……」
「マァ……」
「ゴブゥ……」
「モグゥ……」
な、なんだ? なんで全員、俺の方を見て同情してるんだ!?
モンスターまでしょんぼりしてるのが地味に刺さる……!
「さて。今度こそ俺は行くとするか」
「あ、はい。雷の魔石、本当にありがとうございました」
「ハハッ、チャレンジに成功して手にした賞品なんだから礼なんて不要だぜ。じゃあな!」
伊達は軽く手を振り、見物客に声をかけながら去っていった。
その背中をみんなで見送ったあと、俺は改めて雷の魔石を取り出した。
「さて、これどうしようか?」
「どうするって言われてもなぁ……俺も使い方まではわからないからな」
熊谷が腕を組んで首をひねる。う~んこれは、全員の協力で手に入れたようなものだし、何か役立つことに使えるといいんだけど。
「神奈さんにもお礼は必要だしな」
「うちのことは気にせんでえぇって」
「いやいや、君の助言がなかったら勝てなかったさ――」
「ピキィ! ピキィ!」
ラムの高い鳴き声が会話を遮った。
見ると、俺の手にある雷の魔石を見上げながら、ラムがピョンピョンと跳ねている。
「どうした? ラム」
小さなスライムの体が、光を受けてわずかにきらめいていた。
まるで石の中の輝きに引き寄せられるように、ふるふると震えている。
「……これ、ラムが欲しいってことか?」
俺が呟くと、ラムはさらに勢いよく跳ね、ぷるんと弾むように体を揺らした。
そういえば――最初にこのチャレンジを見た時も、雷の魔石に反応してたっけ。
やっぱり、何か感じるものがあるのかもしれないな――。




