第十九話 詐欺
「お願いします、ゴンズ様。悪霊を倒し我々家族をお救いください!」
俺の名はゴンズ。写板に写る悪霊を退治する仕事をしている者だ。
「任せなさい」
「ドーアーデーソークーシー」
10分程呪文を唱え続ける。そして。
「悪霊よ! ここから立ち去れい!」
俺は火の中に写板を放り投げた。
「バチバチ」
しばらく燃やし、灰となった写板に聖水を振りかける。
「ジョバーー」
「除霊完了です」
「ありがとうございました。これで家族は救われます!」
「よかった。今回はなかなか強力なやつでした。ギリギリだったんでどうなるかわかりませんでしたよ」
「そ、そうでしたか!」
1時間後。
「ズシャン」
大金が入った袋をテーブルの上に。
「はい、いただきますね」
「ありがとうございました!」
「それからこのことはどうぞご内密に。もう払ったとは言え悪霊にとりつかれた一家と知られたらどんな仕打ちを受けるかわかりませんからね」
「わかっています」
「魔法光画屋さんもこれにめげずお仕事頑張ってください」
「ゴンズ様、ありがたいお言葉をどうも」
「では失礼するよ」
俺は魔法光画屋と一緒にその家から出て街の方へ。
「く、くくく」
「わーっはっは」
いやー、腹の底から笑いがこみ上げてくる。
「今回もうまく騙せましたな」
「ああ、大金をせしめてやったぜ」
魔法光画屋のダフとはグルだ。
俺は稼げず困っているダフの相談に乗っていた。そんな状態にも関わらずコイツは何やら隠し事をしているようだった。、そこで俺はダフにたらふく酒を飲ませ喋らせた。そして写板には心霊写板というものがある事を知る。
「そこでお俺はピンときたわけさ。コイツは金になるってな」
「写っているものは危険な存在「悪霊」。それを退治するには高名な退魔師が。それには高額のお金が」
「退治後は秘密にしておいてくれ。で口封じも出来る」
「元々魔法光画屋しか知りませんからね。謎の人影は」
「写ってもなんの問題もないってのも魔法光画屋しか知らないだろうしな」
「ははは。こんなに簡単に稼げるとは思っていなかったが」
「さて、次はどこで稼ごうか」
「最近独立した国ってところに行ってみますか」
「よーし、行ってみようか。今度はそこから金を引きずり出すか」
2週間後。
「この先か。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
まずは俺が偵察。騙しやすそうなやつを探す。これは毎度のことだ。ローブのフードを深々と被り付け髭を。
「んー、ってなんだありゃ」
開けたところに入ると、城の前におかしな物があることがわかった。はぁ? ありゃ王座かよ。
「わけがわかんねーな、どうなってんだ」
ブツブツと独り言を言いながらその王座まで近づく。
「ふあぁーーあ。ねみゅい」
「ちょっとペランちゃん、一応王様なんだからお客さんが近くに来ているときは凛々しくして」
何という間抜け面。しかもコイツが王だって?
「コホン、こちらにご用ですか?」
「あ、いえ道に迷ってしまいまして」
「ああそれでしたら――」
帰り道を教えてもらう。
「どうもありがとうございました」
「いえいえ」
「なんだったんだ?」
「迷子みたい」
くっくっく、コイツはいい獲物を見つけたぜ。詐欺を続けてきた俺の勘がこう告げる。「アイツは絶対騙せる」と。
「どうでした?」
「いいヤツを見つけた。早速仕事といこうか」
ダフに説明する。
「わかりました、そこの王様ですね。行ってきます」
次はダフの出番。写ったものを客に見せるだけで。その後は高名な俺様の出番ってわけだ。
「あっはっは、なんともちょろいもんだ」
3時間後、ダフが帰ってくる。しかしどうにも様子がおかしい。
「どうしたダフ。なにか失敗でも?」
「失敗ではないんですが、写板に……」
ダフは、なにかに怯えるように大量の油汗を流していた。そしてプルプルと手を震わせながら道具袋を指差す。
「おいおい写板位出してくれよ」
道具袋から写板を取り出す。
「一体何が写っ……」
言葉が途中で止まる。そこに写っていたのは大量の人影に大量の光の玉。
「こ、こいつは……」
「それを見たとき、恐ろしくて声を発することができませんでした」
「これはマジもんか?」
「なんとも。数が多いだけだとは思うんですけど。ただその数が尋常ではなく」
「王の前を心霊の顔がぐるぐると。さらに光の玉が胸や股間にあったり。明らかに悪意に満ちているのでは」
「ぜってーヤバイと思う」
「まあ普通はそう思いますよね」
「どうしましょう……」
「これは実際払ってもらったほうが良いのでは」
「足がつく可能性がある。それはやめたほうがいい」
「そうなると」
「ずらかるぞ」
「はい」
帰り道。
俺の勘が囁きかけてきた。このまま続けていれば、いずれ危険なことに巻き込まれるかも、と。
「ダフ」
「はい?」
「この仕事やめようか?」
「そうしましょう……」
こんな得体のしれないものにどうにかされたらと考えると。俺達はこの日をもって写板詐欺をやめることにした。




