第十三話 お前の妹なら俺の隣で寝てるぜ?
「これから行くのか、レッド」
「はい、アーサー様」
私は勇者レッド。アーサー様の1番弟子を自称するナイス若者だ。
「あまり邪魔してやるなよ。今、国を興している最中と聞く」
「わかってまいすよ」
私はこれから魔王ペランの国へ行こうとしていた。
「そりゃ実の妹が心配じゃない兄などいないかもしれんが」
最近勇者を辞め、魔王ペランの国に行った元勇者のシノセは私の妹。もちろん妹が心配で様子を見に行く、状況次第では連れて帰ってこようってのはあるけれど、メインの目的はむしろ他にある。
アーサー様や他の者が魔王ペランの事を高く評価しているが、本当にそこまでの人物なのか。自分の目で確かめてみたくなったのだ。
「どうせ、妹の件は口実で魔王ペランの「力」を見に行くのだろ?」
「はは、さすがアーサー様。お見通しですか」
「お前が持っている「スキル」ならかなり正確に相手の力を見ることが出来るからな」
「スキル」。人間が稀に持って生まれてくる特殊能力、超能力のこと。様々な種類があり、基本有用。そしてスキルを持っている者は勇者と言われる。
「ええ、私の「プロミスアイ」なら」
私の持っているスキル「プロミスアイ」。相手の強さを数値化出来る能力だ。
「正直気になっている。帰ってきたら教えてくれ」
「わかってますよ。では」
魔王ペランの国に向かって出発。そしてしばらく旅をして到着。
現在お日様が登り始めたところ。
「ここか」
村2つ分くらいの平野に城1つ。狭いところだ。
「さて、魔王ペランは、と」
城に向かって歩いていく。そこで言いようのない違和感が私を襲った。
「城の入口手前になにかある? なんだろう」
最初は一風変わったブロンズ像か何かだと思っていた。だが近づき、その正体に気がついたとき、驚愕した。
「な、何故こんなところに王座が!?」
そう、そこにはガラスで覆われた王座が。
「あ、ペランちゃーん。お客様みたいよ」
「むにゃむにゃ。んむ、今起きる」
そこで寝てたの!? どういうこと!?
「すみません、少々お待ち下さい」
「あ、ああ。はい」
動揺を隠せない私。
「いいぞー」
(ぷにぷに)
(ん?)
(うぅーん)
(どうして俺の王座でシノセが寝てんの!? ああ、昨日酔っ払っていたからもしかしてそれで!?)
「どうぞ」
(んぐ! お客さん呼んじゃったか。仕方がない。バレないようにしないと)
なんとか冷静を装い、魔王ペランの前へ。
「お初にお目にかかります、魔王ペラン様。私はレッドと申す者です。朝早くに申し訳ありません」
「いや、かまわない。それより」
「はい?」
「あんた、勇者か?」
「!? はい(なんと、私の正体を一瞬で。只者ではないな、皆が言うだけある)」
(お漏らしカウンター(股間)が反応していた。やはり勇者だったか)
「それから私はここでご厄介になっている元勇者、シノセの兄になります」
(よりにもよってご家族の方が!)
「そ、そうか」
(ん~、チュバチュバ)
「ビクン」
(こら、指をなめるんじゃない!)
「どうしました?」
「い、いや、なんでもない」
「今シノセはどうしてます?」
「城の方で朝食の準備じゃないかな?」
(さすがに、お前の妹なら今俺の隣で寝てるよ、チュバチュバしてるよ、なんて言えないよな……)
「そうですか」
「シノセに会っていくか?」
「はい」
「プルンプルン(たまには外に出るのもいいでしょ)」
「プルンプルルルン(そうだな。そよ風が心地良い)」
あ、あれはコキュートススライム! 伝説上の魔物が何故こんなところに!?
「ん? ああ、珍しいだろ。俺が契約したんだ」
(ちょっと、ペランちゃん。勇者ならあまり情報を出さないほうが)
(スマン、ついチョロっと出ちまった)
(No.2になったことが嬉しかったのね……)
歴史上最弱と聞く。では早速、プロミスアイ発動!
「シュワーン、ピピピ」
それから数日後。
「まさに最弱の名にふさわしい弱さでしたよ」
某街のギルドに戻りアーサー様とお話を。
「コキュートススライムか。見てみたいな」
「ただ問題はその後で」
「ほう?」
ゴクリと喉を鳴らす私。アーサー様にも緊張が伝わったようだ。
「それがその、魔王ペランを測ってみたんですが」
「ふむ」
「コキュートススライムより数値が下でした」
「なんと」
「いや、そいつはおかしい」
流石アーサー様、お気づきになられたか。
「そうです。能力が異常なまでに低いということもそうなのですが」
「魔物は自分より強いものとしか契約しないはずなのです」
「他魔族の魔物という可能性は?」
「自分で契約したと言っていました」
「王座の位置、私の正体を一瞬にして見破った力、コキュートススライム、それより弱い、なのに契約済み。私はこの異様な状況に置かれていることが恐ろしくなり。話半分、妹にも会わずに逃げ帰ってきました」
「不可解なこと、自分が知らぬことってのは時として恐ろしく思えるからな。もしかしたらお前の能力を察知してなにか仕掛けたのかもしれない」
「その可能性はありますね」
「ハハハ、相変わらずおもしろい男だ。魔王ペラン」
「中立国の王になってくれて良かったと思います。正直勝てる気がしません」
「だな」




