第八十二話 世界で一番イケメンに冷たい部屋
「ルールは決まったのか?」
放課後の生徒会室に集まった俺は柚子に聞いた。
付き合い立ての馬鹿ップルが放課後密室で二人キリとなると進捗ゼロで、子孫繁栄の進捗が進んでいてもおかしくはない。
「勿論! アタシにかかれば完璧よ!」
「でも例外ですよね? そんな簡単に出来上がるもんなんですか?」
海原の疑問は理解できる。
今まで変えてこなかったルールを生徒主導で変えようというのだ。
これからの後輩にも受け継がれるものだし適当に決めていいものではないことは柚子も分かっているはず......分かっていると思う。
「横で見てたけどよ。結構例外に例外を重ねてたぜ? 二人三脚っていう大本は変わってねぇけど」
「どんなのだよ」
「これ」
柚子がバックからファイルを取り出しルーズリーフを机に置いた。
ビッシリとは言わないが、事細かにルールやそれに対する注釈が書かれていた。
「凄いな。出てくるであろう質問の答えが用意されてある」
だがそこまでする必要があるのだろうか。
一番こういう質問をしてくる教師陣は既に説得済みで質問の答えを用意する必要はないと思う。
「知ってる? 女子ってこういう細かーいとこほじくって来るんだよ? いつもなら「どうでもよくね? そんなの」みたいなこともいちいち聞いてくるの。んで、答えに詰まったら「やっぱり無理だったんだよお前には」的なことを男子に分からないような超遠回しで言ってくるの。わかる? 詰まった時の悔しさ」
抑揚のない声でスプラッター映画よりグロイ女子高生の実態を垂れ流した。
よくネットで言われるよな、『男子のイジメは女子のイジメに比べれば比にならない』って。
「そうですよね~わかります」
海原も心当たりがあるらしく腕組をしてうんうんと噛みしめるように頷いた。
「ま! 準備しておくに越したことはないな!」
「最悪雅樹を盾にして後ろに隠れながら攻撃なり逃げるなりすればいい」
「それってオレが矢撃たれない?」
「多少の攻撃くらい耐えろ。男だろ」
横から「お前が言うのか」という海原からの視線が感じられたが反応したら負けだ。
俺達が話していると生徒会室の扉が開き、生徒会長と前髪役員が帰ってきた。
「ご苦労様。ルールは粗方決まったかな?」
「はい。これで問題なければ」
柚子がルーズリーフを渡すと生徒会長は少し考えた素振りを見せた後、こちらに笑いかけた。
「うん。いいんじゃないかな。参加者も増えるだろうし盛り上がりそうだね」
もし柚子がフリーだったら柚子は生徒会長に惚れていただろう。
それくらいに爽やかで男の俺でもカッコイイと思える。
だがこの部屋にいる女子達には興味がないようで反応はあまりない。
「あ、はーい」
柚子はこの通り平常運転。海原の視線は窓の外。前髪役員はスマホを構えてカシャリと音がした。
今ここは、世界で一番イケメンに冷たい部屋だろう。
「大丈夫っすか?」
「な、なにがだい? ......いつものことさ。役員に嫌われているわけじゃないけどね。特別好かれてもいないんだよ」
「辛いっすね」
雅樹がさほど興味もなさそうに傷口にデスソースを塗りたくる。
可哀そうだからその辺にしてあげて。
「そういえば、生徒会長。この前言った一人から了承が取れました。顔合わせはいつにします? うちはいつでも大丈夫ですよ」
「ではこの後はどうかな? あんまり遅いと練習する時間がなくなってしまうからね」
「分かりました」
生徒会長が家に来るということは、鈴音さんをロープで縛って口も塞いでおく必要があるな。
アメに頼んでやってもらおう。




