第八十一話 セクハラ常習犯か幼女ハンターかの二択
「というわけで、体育祭に出てみませんか。という誘い」
「相手は幼女?」
「残念ながら男だ」
俺がそう答えるとアメはあからさまに嫌そうな顔をした。んまあ、アメの反応はだいたい予想がついていた。生徒会長は幼女じゃないしそもそも女ですらないから。
俺的本命は鈴音さん。
高校生と合法的に触れられるとなればセクハラ魔の鈴音さんなら食いつくはず。
「えーでも~、ウチの魅力に当てられて惚れられたら困るし~?」
「自惚れるな。ただの脂肪の塊をぶら下げてるだけの分際で」
いつになく海原の口が悪い。んま、俺の方見て胸をチラチラと見せつけてくればそりゃ怒るよな。
海原は俺の肩に脚をかけると保護体勢に入った。
制服のまま生足ではなくハイソックスが首筋に当たり、時々肌が触れる。
なんだろう。エッチだ。
「アメと鈴音さんがやらないっていうなら他を探す」
といっても当てはないが。
「二週間っていう結構短い時間だね? 普通なら一二か月前から知らせて判断を迫るべきだけど」
「学生故の突発的な学校革命ってことで」
柚子が突発的に言い出したことだし俺もそれに反対はしなかった。
「アメは嫌デス! 結ばれるならハニーと! 紐でグルグル巻きにされたいデス!」
「ウチは別にいいけど? けど運動してないから足引っ張るかも。二人三脚だけに!」
「じゃあ明日、生徒会長をここに連れてくるんで挨拶してください」
「え? ウチの爆笑必至の激うまギャグは? ねーねー無視?」
「履歴書の自己PRの所に書けるほどの自信があるなら面白いんじゃないですかね」
「氷点下二℃」
海原ではなくアメから追撃が入った。
そして追撃が入り鈴音さんは倒れた。根性持ちだったか。通りで毎回しぶといと思った。
「男女の二人三脚ってことは龍輝と海老名ちゃんが出るのよね?」
「その予定だけど?」
母さんは少し考えて言った。
「身長差大丈夫?」
「え?」
「あー確かに。龍輝くんと海原ちゃんの身長差だと肩組みにくくない? というか海原ちゃんの方からは組めないよね?」
「肩を組まなくても腰に手を回すなりすればいい」
「それでも一歩が違うから調整面倒だと思うけど」
言われてみればという欠点。
海原が一五五センチ、俺が一七三センチで十八センチの差がある。勝負相手である柚子と雅樹は十センチないはずだ。柚子が伸びていればもっと短くなる。
練習期間は体育祭準備の手伝いを命じられているためかなり短い。
「そんなの簡単デス! 二人を物理的に縛ってしまえば問題ナイデス!」
「え、そんな束縛生活嫌なんだけど。てか、風呂とかトイレとかどうするんだよ」
「一緒に入れば問題ないかと! トイレもお風呂も、勿論寝るときも♡」
「問題しかない」
これはあれか。とっととアメの口を塞いでこのノリをぶった切るべきか。
しかし、俺が動いた時には全員に感染してしまっていた。
「えーでも外で束縛プレイするよりは安全だと思うけどー?」
「よし、時間を取ろう。帰って来て夕飯が出来るまでの間、夕飯を食べてからの数十分を練習の時間とする。幸い、ここの廊下を使えば練習が出来ないことはない」
俺はキッチンのリビングを仕切る廊下を見て言った。
長さは十メートルもないが真っ直ぐ伸びて障害物もなく、高校生が二人並ぶとキツイが二人三脚をするならちょどいいだろう。
「......?」
「やめろ。理解を拒むな。理解を拒んでも手錠生活にはならないぞ」
「わたしは先輩と一緒に居れて幸せ、先輩もわたしと一緒に居れて幸せ! WIN-WINじゃないですか!? これ以外にどうするって言うんですか!」
「夜に家の外周で練習」
「先輩はくっつきたくないんですか!?」
俺の頭に控えめな胸を潰し顔を覗き込もうとしてくる海原。目の前には白いカーテンが中途半端にかかり若干鈴音さん達の顔が見える。
「そういうことじゃない。ただ、手錠生活にこだわることはないって話だ」
「じゃあ、一緒に寝てください」
「関係がまるで見えない」
「あれです......波長を合わせる的な? 感じのそれです」
「いい案が思いつかなかったならカーテンをあげてくれ。首が痛い」
腰まである海原の髪が目の前まで来るほどの勢いで体重を乗せられれば首が死ぬ。
「ブレザー越しでも感じますか?」
「ああ。静かにすれば鼓動が聞こえる程度には」
「むっ。それって薄いってことですか?」
「心音には人を安心させる効果があるんだとか」
「安心しますか?」
「うんするする」
感じるだけで聞こえてるわけじゃないからどうにも言えない。
「んで、結局どうするの?」
「手錠の準備はバッチリデス!」
なんでアメが手錠を持ってるのか聞きたいし、音的に本物だよね? プラスチックの音じゃないんだけど。
ガチャガチャ鳴らさないで。怖いから。
「夜、練習するぞ。それでいいか?」
「むうううう。仕方ないんじゃないですか、負けたくはないですし」
非常に不満そうだが勝負には負けたくないという気持ちが先行してくれたようだ。
こういう時にどうしたらいいのか俺はまだ知らない。




