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第六十五話 男にしか出来ない対処法

風呂から上がって浴衣みたいな着物に着替え自室へと向かう道中。


「あの~二人なんですか?」

「違う」


 雅樹目当ての女たちに声をかけられた。

 金髪と黒髪で黒髪の方は嫌々着いてきたといった感じ。多分、引き立て役にされたんだろう。

 生憎、お互いに女のいなし方を熟知した者同士。回避するのは簡単だ。



「ごめんね。彼女と来てるんだ」


 雅樹が爽やかに笑うと金髪の方は食い下がってきた。

 自然と雅樹の顔を覗き込む体勢となり、胸やら上目遣いやらが強調された。並の男なら一発かもしれない。


「でもお風呂でしょ~? ちょっとだけならよくない? 女の風呂は長いから」

「でも......悪いしさ」


 雅樹が声をかけ続けられ、断り続けるのに悪評が広まらない理由。

 柚子が友達が居らず女子から嫌われ続ける理由がこの一言に詰まっている。


 雅樹は押しにめっぽう弱い。だから柚子が無理やり引っ張っていく。雅樹に声をかけていた女子目線は邪魔されたと思うのが一般的だろう。

 よって雅樹が声をかけられる、柚子が引っ張っていき女子に嫌われる、あんな子よりという対抗心が生まれる、雅樹が声をかけられる。という悪循環が生まれるんだ。


「行かないって言ってんだろうが」


 今回は俺が柚子の役割をしなきゃいけない。


「は?」


 やはり目当ては雅樹のようで俺に対しては敵意がむき出しを通り越し突きつけられている。

 そして唐突に思いついた妙案。せめてもの仕返しだ。

 俺は雅樹の肩に腕を回すとこう言った。


「彼女ってのは俺のこと」

「は? あんた男でしょ?」

「だから? 男同士が愛し合っちゃいけないなんていうルールはない」


 俺がそう言うと金髪が止まった。眉をよせたり上げたり目を右へ左へ泳がせたり思考が追いついてないのが丸わかり。


「んじゃ、そういうことだから」


 雅樹が最後に別れを告げて俺達は部屋へと戻った。

 ふすまをあけ誰もいない部屋に俺は雅樹の首を押し込み雅樹は畳の上に転がった。


「だっはははははは! お前あの場であんなこと言えるな! ひぃー! 腹いてぇ!」


 畳の上に転がった雅樹は腹をかかえて大笑い。楽しんでもらえたなら結構。

 二度とやらん。


「天才的だろ」

「おかげで助かったけどさ! いやー柚子には出来ない事だしな」

「そもそも雅樹が押しに弱いのが悪い。嫌なら嫌って言え」

「なんか言い出しにくいんだよ」


 その感性は俺には分からない。俺は嫌なら嫌というし必要ないものは必要ないと言える。

 ただ嫌われたくないという感情が雅樹の中であるんだろうと思う。

 嫌われた幼馴染二人を見てきているから。


「柚子が基本待ちでよかったな。押せ押せだったらお前子持ちだぞ」

「それはあるかもな。柚子から言われたら断れる気がしない」


 海原のような押せ押せなら雅樹は押し切られて流されるだろう。その結果が高校生にして子持ちという不良認定されてしまうんだ。

 ま、家庭環境が良好すぎて子供にとっては良い環境だろうけど。


「どうやったらそんな真っ直ぐに自分の意見を言えるんだよ」


 そんなのは簡単で今からでも誰にでも出来ること。


「好感度を気にしない」


 好感度を気にしない態度を取り続けると俺のような使われるだけの存在になる。

 ただまあ、雅樹の場合はイケメンというステータスにより好感度は自然上昇。その心配はいらないと思う。


「はぁ~オレには出来そうにないな」


 やれやれと首を振る雅樹。こりゃ柚子が暴走したら赤飯を炊く必要がありそうだ。


「あーもう! 胸に顔すりつけないで!」

「このミニマムなバストが最高なのデス!」

「誰がミニマムよ! これから! これからだし!」


 廊下から一気に騒がしくなりふすまを開けて覗くとアメが柚子に担がれていた。セクハラしながら。


「どうしたそれ」

「鼻血出して倒れたの。いつもの」


 柚子も雅樹も俺の幼馴染だからアメのことは知っている。当然、無類の幼女好きということも。


「運ぶの手伝ってくんない? 慣れない着物で人担ぐの辛すぎるから!」


 そういう柚子の胸元はアメが暴れたからか少し開いていてアメが好きな淡い膨らみが見えていた。

 普通なら照れて目をそらすかバレないようにチラ見するのが鉄板なんだろうが、横にもっと大きい胸があると不自然なほど落ち着ける。


「あぁ~硬いデス!」

「脳内ピンクなのはいいが人に迷惑かけるなよ」


 柚子からアメを預かり部屋に運ぶ。雅樹に適当な場所に布団を引いてもらいアメを寝かせた。


「柚子~!」

「あーはいはい。傍にいてあげるから大人しくして。貧血なんだから」


 部屋には寝ているアメと雅樹と柚子と俺。誰が退室すべきかは丸わかり。


「脱衣所にタオル忘れたみたいだから取ってくるわ」

「自分のバック確認してから言えよ」

「勘」


 俺は部屋を出ると脱衣所ではなくロビーへと向かった。

 チェックイン、アウトで通るだけのロビーで今は誰もいないし時間的にこれから誰か来ることもないだろう。

 そんな静かな空間の椅子に俺は座った。あそこにいても邪魔なだけだ。


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