先生
僕が3年間通ったそれなりに荒んだ感じの中学校にも、僕たちとは別に“先生”という職業の人達がいて、生徒に暴行されて入院させられたりして可哀想だった。若い先生は完全に下に見られてたし、女の先生なんかかなりひどい目に遭ってた。授業とか成立するはずもなく、今でいうところの教育困難校というヤツだった。同じ小学校のクラスメートの大半が、なんで必死に勉強して私立中に行ったのか、とてもよくわかったけどあとの祭りだった。
おおかた大学卒業してストレートに教師になったようなヒトで溢れかえってるありきたりな区立中学校だったけど、社会人経験してから教師になったという奇特な方々の授業だけは、何故か皆きちんと聞いていた。元自動車組立て工とか元自衛隊員とか、今にして思うとなんで教師になったのかわけわからない先生が教壇に立つと、普段絶賛会話中な女子も、じゃれあいながら殴りあってる男子もおとなしくなったものだ。ホントのオトナを見分けることくらいできなければ、こんな底辺中学じゃ生き残れない。つまりはそういうこと。
なかにはホントに危ない先生もいた。明らかにうまくいってない家庭内のいざこざを身に纏いながら、体育科でもないのに生徒殴りつけてストレス発散してる系の数学の先生。ある日“席替え”という曲がりなりにも心がうわつく系のイベントが行われた時、たまたま窓際から異動にならなかった女子を、“クジで不正をした”かどで殴りつけた。鈍い音がした。普段短ランで元気よく体育科の先生と追っかけっこしてるヤツらまでもが唖然とした。
翌日。僕のクラスの担任だったその先生はアンケート用紙を配った。誰がこの不正を主導したのか、知ってることがあれば書きなさいというアレだ。曲がりなりにも優等生キャラで売り出してた僕は、“こういうやりかたはおかしいと思います”って欄外に書いた。
そのまた翌日。数学の授業の時間は個人面談の時間になった。僕の順番が回ってきて先生の前に座った。さてどんなコトバが聞けるんだろうか。
「……成績優秀なお前がこんなこと書いて、内申書がどうなるかわかってんだろうな!! オレが一筆いれりゃお前の受けようとしてる高校なんか門前払いだからな!!!」
ありがちな台詞を吐く中年男子がそこにいた。こんなヒトに担任続けて頂くには義務教育は短すぎる。
僕は教室内で起きたことの顛末と個人面談で受けた指導の内容を拙い文章にまとめあげ、筆跡ばれるとつまんないからワープロで清書し、学校教育法第11条の条文添えて、PTAの会長してるっぽい親の子に渡した。僕の他にもいた数少ないマジメな子にも渡した。区の教育委員会にも送った。
翌年の4月を待たずに先生は別の中学に転出していった。転出先では気さくなキャラ展開で生徒にも親にもウケてるって噂に聞いた。やっぱりやればできる先生だった。
内申書にナニ書かれたかはわからないけど、行きたいと思ってた高校に推薦で入った僕は、新しい担任の先生(元自動車組立て工)から“合格したこと他の子に言ってはいけないからね”と釘刺され、そののち半年ほど寡黙に過ごした。
今から24年も前の出来事。こうして見返してみると、ほんとこまっしゃくれたヤな中学生でしたね。




