MくんとSくん
ここへきてまさかの中学時代のハナシ。
Mくんには折りたたみ傘を貸したけど帰ってこなかった。後に六本木でヒト殺して指名手配になってフィリピンあたりに逃げていまだに帰ってこない。
Sくんはまだキモヲタにすらなれてなかった僕を心底イジメぬいてくれた。のみならず木バットに五寸釘生やさせて盗んだバイクで隣の中学訪問してた。
他にもいっぱいいたけど記憶に残ってるのはこの二人。
校内に私服の警官がうろつき、教師の何人かが病院送りにされ、トイレは控えめに言っても喫煙コーナーで。今考えればちょっと荒んだ感じの中学だったけど、そーいうもんだと思ってた僕は普通に通学してた。
イジメが今よりももう少し腕力的な何かだった当時。それでもSくんは何かをつかもうとしてたのか、ある雨の夜、一緒に下校しながらこう切り出した。
「べんきょうって何が楽しいんだ?」
「今までわかんなかったことがわかるのってスゴイとおもわないの?」
「……そうか」
何日かして母親が切り出した。
「Sくんとまた何かあったの?」
そういえば僕の友だちの数少ない一人しかいない一人のTくんイジメてたからさすがにむかついてぶん殴って返り討ちにされたのは先月のハナシだった。
「Sくんのお母さんから、Sくんが急に勉強始めたって……」
ふーん。それはいいことなんじゃないかな。
そういえば雨の日にはもう一人の思い出がある。クラスの男子の大半が狙ってたYさんだ。帰る方向が一緒なのでたまに一緒に帰った。当時すでにナポレオン文庫自炊してた僕は、中学生なんて対象外じゃん、とか思ってたからどうということはなかったのがよかったのかもしれない。
雨の日。僕の傘には入ろうとしないYさん。仕方がないから僕も傘をささない。そのまま無言で帰宅する。
そして半年後の雨の日。僕の傘に入っていろいろおしゃべりするYさん。どうもSくんのことが気になるらしい。別にSくんの友だちってわけじゃなかった僕だけど、Sくんが雰囲気出さない相手がクラスの男子で僕だけだったってのがあって、Yさんはいろいろ話してくるらしい。
「君も彼女くらいつくらないの?」
そういうのは高校はいってからじゃないかな。と思った通りのことを云うとYさんは笑った。
Mくんは両親に引きずられるように別の県に中学校に転校していった。その後の経緯はよくはわからないけれど、関東連合的な感じで六本木な感じで海外雄飛な感じ。折りたたみ傘は未だに帰ってこない。
SくんとYさんがその後どうなったか、同じ中学から行く人が一人もいない都心の高校に通うことになった僕にはわからない。
※ちなみにこの時書いてたヤツのタイトルは『赤い長襦袢』、で、決め台詞はもちろん「堪忍して」




