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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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95話~お前がそう言っただろうが!!~

 セイジがジュンさん達を連れて行った。

 その情報を聞き、俺は教室を飛び出す。それを見て、ヒデちゃん達も追従する。何も言わずとも、俺の行動から察してくれたみたいだ。流石は親友。


「黒沢!」

「先輩!」


 俺達が階段へと差し掛かったところで、丁度階段を登ってきた相川先輩達と合流する。その誰もが血相を変えており、事態の深刻さを物語っていた。

 俺は階段を上がりながら、状況を聞く。

 でも、


「分からねぇ。兎に角、奴が多くの女子生徒を連れて屋上へ上がったって話だ。無理やりじゃねぇ。仲睦まじく、まるで3ヶ月前に戻った様子だったって話だ。くそっ!」


 相川先輩が憎々しげに吐き出し、屋上に向けて睨みを飛ばす。我々は階段を駆け上がり、一刻も早く彼女達の元へ辿り着こうとした。

 だが、その足も止まる。

 屋上へと至る最後の階段。そこに白衣の女医が居た。


「あなた達、ここで何をしているの?」


 皆川先生だ。 

 我々を冷たく見下ろす彼女の視線に、相川先輩が吠える。


「そう言うアンタはどうなんだ?保険医が、なんでこんなところに居る」

「私?私は構内の見回りよ。あなた達みたいに、授業をサボろうとしている生徒を正す為に」


 先生が長い指で、俺達を1人1人指さす。彼女の目が、益々熱を失う。

 それに、相川先輩が1歩階段に足を掛ける。


「生徒を正すだ?はっ!保険医のあんたが、なんでセンコウみたいなマネしてんだ」

「保険医だって、立派な先生よ」


 全く通す気のない先生。それを見て、俺も1段上がる。

 先生の後ろを指さす。

 

「でしたら先生。その扉の向こうにも、多くの生徒が居るのではないですか?彼ら彼女らにも、授業に出るように指導するのが筋だと思いますが?」

「必要ないわ」

「何故です?」

「ここでは今、生徒会の臨時会議が開かれているからよ」


 会議?

 俺の疑問を、先輩が代弁する。


「なんでこんな所で、会議なんて開いてやがる。そこは会議室じゃねぇだろ!」

「場所は関係ないわ。ここには会長も居て、メンバーも半数が揃っている。それであれば、たとえ廊下の端でも会議は成り立つ」

「メンバーはどうなんだ!少なくともセイジの野郎は、生徒会じゃねぇだろ!」


 先輩の指摘に、先生はニヤリと笑う。


「会長が承認した者なら、会議に参加可能よ。勿論、セイジ様もね」

「セイジ、様…だと?」


 くっ。

 やはり、先生もセイジの魅了に操られていたか。しかも、予想よりも遥かに強力なやつに。以前から兆候があったが、ここまでになるとは。

 何がトリガーとなった?俺がジュンさんと付き合い始めたからか?その可能性は高いが…何処からその情報が奴に漏れた?


 どうにも進めずにいると、屋上の扉が開く。そこからナツ会長やノゾミさんやコハルちゃん、トワさんやエリさん。他にも宿泊学習で見かけた女の子達がゾロゾロと現れる。そして、その最後尾からゆっくりと現れたのが、ニヤケ面を浮かべたセイジだった。

 奴がため息交じりに先生を見る。


「なぁ?さっきからなんか、うるさいんだけど?邪魔者はソッコーで駆除しろって、俺言ったよね?」

「ごめんなさいっ!セイジ様。すぐに片付けますので」

「早くしろよ」


 随分と横柄な態度を取るセイジ。それでも、先生は平謝り。そこに教師としての威厳は欠片もなく、ただ強者にひれ伏す従者でしかなかった。

 セイジの薄ら赤くなった瞳が、階下へと向く。先輩達を鬱陶しそうに見た後、俺を見つけて口をひん曲げた。


「あっ、なんだよ。お前も居たのか、黒沢。なら丁度良いや。おい、ジュン。ジュン!早く来い!」


 セイジが扉の方へ声を張ると、ジュンさんがゆっくりと現れる。そして、セイジの隣に並んで、顔を伏せる。

 セイジの笑みがより深くなり、目が怪しく輝く。


「おい、聞いたぞ?黒沢。お前、最低な奴だな。こいつを脅して、無理矢理パーティーかなんかに連れ込んだんだって?しかもそこで、付き合うように迫ったんだろ?このクズ野郎!」

「その言葉を返そう、セイジ。自分の欲だけにそのような力を乱発させ、皆を巻き込もうとするとは」


 俺はセイジの目を指さす。


「よく考えろ、セイジ。強力な力には必ず、それ相応の代償が付きまとう。無闇に使うべきではない。今すぐ、彼女達の魅了を解け」

「はぁ?魅了?何言ってんだ?お前」


 なにっ?まさかこいつ、無意識に異能の力を使っているのか?

 俺が口を閉じると、セイジは勢いを取り戻す。


「お前こそ、そうやって口で俺を騙して、みんなを騙しやがって。ジュンもお前に騙されて、付き合うなんて約束しちまったんだ。だからこいつは無効だ。おいっ!ジュン!言ってやれよ!お前なんかと付き合う気はないってな!」


 セイジに背中を押されて、ジュンさんが半歩前に出る。俺の足元辺りに視線を落として、静かに言葉を吐き出す。


「ごめん、虎ちゃん…」


 ジュンさん…。

 俺が何か言う前に、セイジも半歩前に出てジュンさんに並ぶ。そして、彼女の肩に腕を回して俺を睨む。


「分かったか?黒沢。お前とこいつの間にはもう無関係。人の彼女を取ろうとしたお前こそ、最低のクズ野郎だ!」

「彼女?」


 俺の疑問に、奴は笑みを浮かべる。見下すように笑い、豪語する。


「ああ、そうだ。俺は漸く決めてやったんだ。ジュンを俺の彼女にしてやるってな。お前みたいなクズ野郎が近づかないように、そういう立場にしてやらないといけないんだ。勿論…」


 セイジが後ろを向くと、奴の隣に会長とノゾミさんも並ぶ。


「ノゾミもナツもコハルも、みんな俺の彼女にしてやるんだ。最近流行りのハーレムもの?って奴だな。ははっ」

「ふざけんな!」


 相川先輩が吠える。


「何がハーレムだ!会長はやっと、ボランティア部を復活させたんだ!てめぇなんかに構っている暇ねぇんだよ!」

「ああ、それもナシナシ。そんなんしてたら、俺と遊ぶ時間が無くなるだろ?ああ、そう言う意味ではノゾミ、お前も塾を辞めろ。毎晩俺の家来て勉強を教えるんだ。ナツも同じな。ジュンは…どうするかな?馬鹿だから使い道ねぇし、パシリでもする?チャット勝手に抜けた罰でよ。ははっ」

「ふざけるな!直ぐにナツさんを…女子達を解放しやがれ!」


 今にも飛び出しそうな相川先輩に、セイジが笑みを消す。ため息混じりに言葉を吐き出す。


「分かってねぇな、お前。もうこいつらは俺の彼女なんだよ。だから、俺がどう扱おうがお前らには関係ないんだよ。ほら、こうしたら分かるだろ?」


 そう言って、セイジはジュンさんの首から下げていた手でジュンさんの胸を揉む。途端に、ジュンさんは顔を強張らせ、目を硬く瞑った。


「ほら、俺の彼女だから、こんなことしても”喜んでる”だろ?」


 尚も止めないセイジに、ジュンさんの固く閉じた瞼から薄っすらと涙が滲む。それが、頬を伝った。

 その瞬間、俺の理性は吹き飛んだ。階段を3段飛ばして駆け抜け、奴へと迫る。拳を固く握り、全身の筋肉を隆起させる。ほくそ笑む奴に向って、高々と跳び上がる。奴の顔に狙いを付け…。


「セイジ様!」


 皆川。

 邪魔だ。


「退け、小娘」


 邪魔立てするなら、貴様諸共セイジを打ち抜く。

 俺は拳を突き出す。狙いは、皆川の頭部。その後ろにある、セイジの眼球。


「ダメ!虎ちゃん!」


 ジュンさんの声。それが、失っていた俺の理性を復活させる。一瞬だけ、拳の発射が遅れてしまった。

 その一瞬で、俺の体を誰かが拘束する。そのまま、俺を高々と持ち上げた。


「ダメだよー!虎二さん!」

「マモ!」


 邪魔…いや、こいつは好機!


「そのまま俺を、セイジの元へ放り投げろ!奴の眼球を抉り出す!」

「ひぃっ!」


 俺の言葉を想像したのか、セイジはジュンさんから手を離し、彼女の後ろに隠れた。

 ちっ。女を盾にするか。

 俺は更に憤る。


「ダメだよー!虎二さん。暴力はだめだってー」


 しかし、マモちゃんは俺を離さない。がっちりホールドされ、足も着かないから身動きが取れない。

 そうしている内に、怯えたセイジは女子達を連れて、屋上の方へと引っ込んでしまった。

 

「あなた達。これ以上騒ぐ様なら、応援を呼びますよ?」


 また能面に戻った皆川先生が、携帯を取り出す。

 それを見て、俺も藻掻くのを止める。みんなを連れて昇降口まで戻った。


「くそっ!何なんだあの女子ども!目の前でクラスメイトが強姦されてるってのに、眉一つ動かしもしやがらない!」


 相川先輩が怒号を吐き出しながら、靴箱を蹴る。それに、ヒデちゃんが冷たい声を出した。


「そんな事していないで、次の事を考えるべきっす」

「そんな事だと?てめぇ…この状況が分かってねぇのか!」


 先輩がヒデちゃんの胸倉を掴む。でも、ヒデちゃんは動じない。変わらず、冷徹な目で先輩を見下ろす。


「分かってないのは先輩の方っすよ。こんな事している間に、セイジの野郎が何をしてるか分かったもんじゃない」

「それは…っ!」


 先輩の手が僅かに震える。その腕を、俺は掴む。


「ヒデちゃんの言う通りです、先輩。先ずは作戦を立てましょう」

「作戦って…どうすんだよ」

「虎二さん。セイジを潰しましょう。もうそれしかないっす」


 解放されたヒデちゃんは、端的に答える。それに、俺も頷く。


「同意する、ヒデ。アレの眼球を潰せば、きっと皆は元に戻るだろう」


 さっきからずっと頭の中にあった作戦を提示し…いや、作戦ですらない。これは俺の願望。俺の贖罪。

 もっと早くから対処すべきだった。相手が高校生だからと甘やかさず、異常な力を有していると分かったあの時に、俺は奴の命を奪うべきだった。

 だから今、こんな事態になっている。ジュンさんにまた辛い思いをさせて、あんな顔までさせてしまって。

 このまま手をこまねいていれば、セイジはジュンさんの全てを奪う。身も心も、全て。

 そうはさせない。何に代えても。


「がん、潰す?おい、黒沢。お前…なに言って…」


 先輩は信じられないと首を振る。冗談だろ?と、目を細める。

 その顔に、俺も冷たく言い放つ。


「それしか手はない。一刻も早くジュンさんを救い出す為に、奴の命をもって事態を収める」

「お供します、虎二さん。あっしも、エリさんを取り戻したいっす」


 そうだろうな。俺とお前は同じ危機感を共有している。見ている風景を、共有できる。

 この非常時に、頼もしい限りだ。


「ヒデ。お前に皆川先生を任せたい。応援を呼ばれる前に、彼女の動きを封じろ。最悪、階段から突き落としても構わん。責任は俺が持つ」

「うっす」

「俺はセイジを()る。警察を呼ばれる前に片を付ける」


 奴が使うは異能の力。法では裁けぬ未知の力だ。

 ならば、俺のこの手で処すしかない。


「今は論じている時間が惜しい。この作戦に異議がある者はここに残れ。賛同する者だけ、俺に着いて来い!」

「「おう!」」


 俺の呼びかけに、意外にも多くの賛同者が募る。佐野君を始めとする式部親衛隊が、覚悟の決まった目で俺の元に集まる。

 同志よ。

 行くぞ!

 俺は彼らを連れて、屋上へと続く階段に向かう。

 でもその途中で、大きな影が俺達の前に立ちはだかった。


「ダメだよー!」


 マモルだ。


「退け、マモル。議論の余地は無いと言った。そこを退くのだ」

「ダメだよ、虎二さん。そんな事しちゃ。誰かを傷つけちゃったら、式部さんも悲しむよ〜」

「その彼女が、今まさに傷付けられているのだ!」


 俺はマモルの上着を掴む。


「退け」

「やだよ〜」

「退けと言っている!!」


 俺は腕に力を入れて、マモルを投げ飛ばそうとした。

 でもその前に、その手が掴まれた。

 相川先輩だ。


「何やってんだよ、黒沢。何時ものお前はどうした?」

「そう言う貴方はどうなんだ?会長がまた、奴の手に落ちようとしているんだぞ?」


 先輩の顔が一瞬歪む。でも、大きく首を振った。

 

「こんな事をしても、何も解決にもならねぇんだよ!」

「何故そう言い切れる!!」

「お前がそう言っただろうが!!」


 声を張り上げた先輩は、今にも泣きそうな顔になる。


「お前が言ってくれた言葉だろうがよ。暴力で解決しても、もっと強い力で覆されちまうって。お前が上げたその拳は、昔の俺達と同じなんだよ…」

「俺は…だが…」


 それとこれは話が違う。セイジの力は、暴力でないと解決できない。

 そんな言い訳が、頭の中で浮かんでは消えた。嘗ての俺が、今の俺を見て嘲笑っている。『お前が目指した道は、そこなのか?』と。

 登っていた血が、退く。

 周りが、クリアになる。


「ありがとうございます、先輩。それにマモちゃん。済まなかった」

「良いよー。戻ってきてくれて、僕は嬉しいよ〜」


 マモちゃんが笑みを浮かべる。

 本当に頼りになる友だ。


「でも、だったらどうするんすか?」


 ヒデちゃんが俺を睨み上げる。あっしだけでも行きますと、その目が語っている。

 彼の想いも分かる。ジュンさん達が危険なのは変わりない。一刻も早く、奴の魅了を何とかせねば。

 俺が打開案を模索していると、マモちゃんが手を上げる。


「こういう時は、専門家に聞くんだよー」

「専門家?なんの専門家だ?」

「えっと…心の専門家?なんか、フワフワした物が見える人?」


 なんだ?それは?

 俺達がみんな目が点状態でいると、マモちゃんはクルリと背中を見せた。

 そこに、小さな少女が張り付いていた。


「専門家の、コハルちゃんでーす」

「やっほ~」


 …いつの間に?

「眼球抉り出しルートも見たかったがな」


やめて下さい。ジャンル違いです。

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