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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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81話〜みんなでやりましょうよ〜

「しっかし、結構ギリギリまで遊んでたんだな。そっちのグループはさ」


 夕刻。

 ホテルへ着いた俺達を、同室の男子達が出迎える。そして、ほぼ最終組だった俺に、疑問を投げかけて来た。

 俺は制服を摘む。


「着替えもあったからさ。その分、ちょっと遅れた」


 嘘ではない。駅前のコインロッカーに荷物を取りに行ったから、かなり遅くなってしまったのだ。

 でも、1番の原因は、恋占いの石で時間を使い過ぎたのが原因だろう。俺が1回目でジュンさんと抱き合ってしまったからと、ノゾミさんが2回目を強く希望したのだ。

 俺としては、岩なんかではなく、ジュンさんに辿り着いたのだから最高の結果だと思った。でも、完璧主義者のノゾミさんは許してくれず、やり直しになってしまった。


 そうしてやり直しを行い、何とか2回目は成功させた俺だったが、何故かノゾミさんは不満気に俺を睨んでいた。そして何故か、3回目をやらせようと躍起になっていた。

 ノゾミは一体、俺を何処に辿り着かせようとしていたのだろうか?何か裏ルールみたいのでもあったのかな?


 彼女を説得するのに時間を食ってしまい、我々3人は遅れてしまったのだった。

 雨田先生が気を遣って、最終便を遅らせてくれたから良かったものの、あれが無ければタクシーで帰ってくる羽目になっていた。そうなったら、相当目立っただろうな。

 

「着替えって、そう言やなんか、変装してたらしいな、お前ら。ヒデちゃんから聞いてるぞ」

「気分転換さ。他意はない」


 ニヤニヤ笑う成田君に、俺は素っ気なく返す。

 だが、尚も食らいついてくる。


「ホントか?なんか怪しい気もするけど…まぁそれは、夜の報告会で聞かせて貰うぜ」

「報告会?」

「おうよ。俺達も結構回ったから、お互いに成果報告しようぜ。黒沢の話、楽しみにしてっからよ」


 ふむ。成田君の表情を見るに、結構いい感じだった様子。

 何があったか気になるな。


「分かった。風呂入った後だな?」

「おう。菓子でも食いながらやろうぜ。お前もだぞ?ヒデちゃん」

「ええっ!?あっしもですかい?」

「あったり前だろ!お前が1組の子とイチャイチャしてる目撃情報、しっかり上がってきてんぞ?」

「なんであっしだけ!?虎二さんも相当イチャ…あっ、変装していたから…」


 ヒデちゃんが絶望的な表情で俺を見る。

 甘いな、ヒデちゃん。勝敗は準備の段階で決まっているんだぞ?

 まぁ、これは思わぬ副次効果だがね。


 

 そうして俺達は、楽しい2日目の夜を楽しむ。

 夕食では昨日に負けない豪華な食事が出て、男子だけでなく女子からも喜びの声を聞けた。地元のパフォーマーが来てくれて、美しい日本舞踊を披露してもくれた。

 最高の演出に、また来たいという声を多数頂いた。


 上手いな、九重副支配人。こうやって、顧客をゲットしていくみたいだ。


 そうして、殆どの人が満足そうにしていた夕食会だが、一部の生徒は俯いたままだった。

 その顕著な奴が、向こうの席に座るセイジだ。


 相当な落ち込みだ。髪の毛が鍋に入りそうになっている。ノゾミさん達と回れると思っていたのに、結局そうはならなかったからな。

 俺の責任なのだが…それは仕方が無いだろう。お前の魅了が怖すぎるんだよ。


「上郷君」


 そうは思ったが、俺はつい、彼に声を掛けていた。


「…なんだよ」


 奴は死にそうな顔をこちらに向けたあと、またすぐに項垂れて、ご馳走をチビチビ食べ始めた。

 うっ。これは重症だな。そんなに思い詰める程、彼女達を思っていたのか。

 そう思うと、俺の中には僅かながら申し訳なさが生まれる。傍若無人で人の心を考えない奴だが、ちゃんと人を大切に思う気持ちがあるのかもと思って。

 

 そんな彼の様子が、今朝の俺と重なる。

 もしも彼女達があのまま、俺の元を去っていたら、こうして座っていたのは俺だったかもしれない。

 もしかしたら、上郷。お前とオレが、逆だったかもしれねェ…。


「なぁ、上郷君。随分と暗い顔だが、まだ旅行は終わっていない。もっと周りのみんなと仲良くなる時間はあるぞ?」

「…時間だぁ?」

「ああ、そうだ。こうして独りで飯を食うのは寂しいだろ?もっと周りに声を掛けて、友達になってみると良い。俺達の組で良ければ、俺が声掛けを…」

「はぁ…早く時間が経って、家に帰りたいぜ」

「上郷君…」


 ああ、そんなに嫌になってしまったのか、この旅行が。そんなに辛い思いをしているんだな、君は。

 これは俺の責任だ。まるで彼を悪者の様に扱っていたから。

 だから…。


「上郷君」

「ああ…。早く帰って、スマホを修理に出さないとやべぇ。来週から、イベントが始まっちまう…」

「うん?イベント?」


 なんか…流れ、変わったな。

 

「ああ、そうだよ。勝利数と連勝数に応じて、課金アイテムが手に入るめっちゃ美味いイベントなんだよ。限定カードスリーブも貰えるし、もしもそれを逃したらと思うと、俺は…」


 ……。

 おーい。俺の後悔を返してくれ。

 俺は呆れて、セイジを置いて会場を後にする。

 以前ノゾミさんが、ゲームでデートをすっぽかしたと言っていたが、漸く理解出来た。

 そんなにゲームが好きなら、ハーレムなんか作らなければ良いのに。下手に女性を侍らせないで、ゲーム仲間と遊んでいた方が余程、君は幸せになれると思うがね。


「虎二くーん!」


 階段を登ろうとしていた所で、後ろから声を掛けられた。

 振り返ると、ノゾミさんが手を振りながらこちらへ駆け寄って来ていた。でも、スリッパで走るもんだから、直前でコケそうになっていた。

 うぉっと!危ねぇ!

 俺は咄嗟に駆け出して、彼女がコケる前に支える。


「大丈夫かい?」

「うん。ごめんね。助けてくれて、ありがとう」


 そう言いながらも、ノゾミさんは支えた俺の腕をギュッと握って、なかなか放そうとしない。

 どうしたんだ?もしかして、足を挫いてしまったのか?


「ねぇ、虎二君。この後、お風呂でしょ?その後って、またそっちのお部屋へ遊びに行ってもいい?」

「うん?まぁ、俺は良いと思うが、他のルームメイトにも聞いてみるよ」

「もしもダメだったら、虎二君がこっちのお部屋に来て?」


 えっ?


「いやぁ、それは不味いでしょ。女子の部屋に、野暮ったい男子が行くのはさ。他の人が嫌がるだろうし」

「なら、私1人で待ってるから」


 いやいやいや。そっちの方がアカンって。若い男女が2人だけで同じ部屋?どんな噂を立てられても文句言えんよ?


「兎に角、1度ルームメイトに聞いてみるから。今日は自由行動時間の報告会をしようって言っていたからさ」

「えっ!なんかそれ、楽しそう。みんなでやりましょうよ!」


 どうなんだろうね。野郎だけでバカ話がしたいって魂胆かもしれんし、そうなら女子はお断りって言うかもしれないな。でも、もしそうなったら、俺はノゾミさんの部屋に行かねばならなくなって…。

 是が非でも、奴らの首を縦に振らせねば。

 

 俺は決意を固め、風呂で彼らに聞いてみた。

 でも、


「おっ!女子がまた来てくれるのか?しかも、風呂上りだとぉ!?」

「でかした!黒沢。流石は俺らの大将だぜ!」


 うん。大賛成だった。

 俺の取り越し苦労だったみたいだな。


 そんなハイテンションな野郎どもと共に部屋で待っていると、程なくして女子達が来てくれた。でも、昨日一緒に来た雨田先生の姿が見えない。

 どうしたのだろうか?


「先生は、今、お風呂の方を見回っているみたい」


 ああ、そうか。

 ノゾミさんに言われて、思い至る。

 今日は1・2組から先に風呂へ入ったから、まだまだ生徒達の入浴時間は続いている。だから、先生達はそちらも注意を向けねばならない。

 盗難とか、パンツの取り違えとか、大勢で入ると色々トラブルがあるだろうからね。ないとは思いたいけど、女子風呂に侵入しようとするバカが居るかもしれないし。


「では、早速報告会を始めるよ」

「じゃあ、最初は…大将!」


 永井君が前に出て会議を始めると、彼の親友の中野が俺を指さす。

 何で俺なのよ。

 そう思いながらも、俺は前に出る。ノゾミさんがホテルから借りて来たプロジェクターにスマホを接続し、部屋の壁に投影する。

 女子を招いたから、男子達がしり込みしているのは女子達が見ているからだ。彼女達を呼んだのは俺のようなもんだし、俺が場を温める必要があるだろう。


「えー。俺達は先ず、銀閣寺に行って…」

「ちょっと待てぃ!」


 銀閣寺をバックに撮った3人の写真に、中野君が待ったをかける。

 そのコールの仕方、バラエティのノリなんよ。

 

「何かな?中野君」

「何でお前ら全員、制服じゃねぇんだ?」

「気分だ」

「気分?!そんな理由ありなのか!?」

「気分よ」


 ノゾミさんまでが俺に同調すると、中野君は「うぇ?!」と変な声を出す。

 俺は続ける。


「その次に行ったのが、哲学の道だね」

「いや、ちょっと待てぃ!」


 何なんだ、中野君。ここは某食堂じゃないぞ?


「なんでお前らこんな、ベッタベタにくっ付いてんだ?仲良しか!」

「仲良しよ」

「なっ、かっ…」


 またもやノゾミさんに迎撃されて、轟沈する中野君。

 トコトン美人に弱いな、君。


「新緑がとっても綺麗だったわよね?虎二君」

「そうだね。ノゾミさんが色々解説してくれたから、より深く知ることが出来たよ」

「そう言って貰えて、私も嬉しいわ。でもこれも、虎二君が頑張って旅行先を京都にしてくれたから出来た事よ?」

「そうかい?そう言って貰えると、俺も頑張ったかいがあるよ」


「ちょっ、ちょっと待てぃ…」


 消え入りそうな中野君のちょっと待てコール。


「お前ら…マジで付き合ってるのか?」

「さぁ?それは、どうかしらね?」


 ちょっと待って、ノゾミさん!?なんでそんな、含みのある言い方をするんだい?

 

「あー…じゃあ次は、林君頼む」

「この空気であっしっすか?!」


 気を使った永井君が指名すると、悲鳴に近い声を上げるヒデちゃん。

 彼は渋々前に出て来て、スマホを繋ぐ。


「え~。あっしらは先ず、京都国立博物館に行きましてですね…」

「ちょっと待てい!何でお前も、普通に女子と手を繋いでんだよ」


 赤レンガ調の大きな建物の前で小さく映るヒデちゃんとエリさんは、確かに手を繋いでいた。

 良く見つけたな。


「あっ、いや。これは…間違えたっす」

「間違えで手を繋ぐかぁ!」


 鋭くツッコミながら、薄っすらと目に涙を浮かべる中野君。

 もしかして、あまり女性陣と距離を詰められなかったのか?でも、それでヒデちゃんに当たるのは違うぞ?

 俺は彼の肩に手を置いて、頷く。


「落ち着くんだ、中野君。人の恋路を祝うのも、大切な事だぞ?」

「いや、アイドル2人に抱き着かれている奴に言われても、説得力ねぇよ」


 …確かに。

 

「じゃあ、次は中野君達の発表を頼むよ」

「いや、お前らの後の発表、滅茶苦茶ハードルたけぇんだけど!?」


 何のハードルだよ?

 


 途中でドタバタしてしまったが、報告会は何とか終わった。

 あれだけギャーギャー騒いでいた中野君達も、それなりに女性陣との交流を深めていたみたいで、男女で楽し気に写る写真ばかりであった。成田君と中野君のおバカ漫才もさく裂していたみたいで、女性陣からの反応も良好であった。

 良いじゃないか。手を繋ぐなどの物理的接触がなかっただけで、十分雰囲気は良かったと思うぞ?

 俺がこっそりそう言うと、中野君もまんざらでもない顔であった。


 ただ、その後追加で報告したヒデちゃんが、恋占いの石をエリさんと共に一発でクリアしたことや、2人で仲睦まじく喜び合う姿を見てしまって、また「ちょっと待てい!!」コールを連発していた。


 これは、俺達の報告はしない方が良いだろう。ジュンさんと抱き合ったなど話した途端、ルームメイト全員から刺されてしまうかも。

 こいつだけは絶対に死守せねばと、自分のスマホを硬く握りしめた時、それが振動した。画面を見ると、メッセージを受信した通知が来ていた。

 差出人は…ジュンさんだ!

 こっそりとメッセージを開いてみると、そこには〈会いに行っても良い?〉と書かれていた。


 良いに決まっているさ。是非とも来てくれ。

 …いや、俺が迎えに行くよ。

 そんなニュアンスで返信したけど、ジュンさんは〈近いから大丈夫だよ!〉と、こっちに来てくれることになった。


 正直、凄く楽しみだ。ジュンさん達のルームメイトみんなで来てくれるのだろうか?そしたら、この部屋だけでは狭くなりそうだな。

 いや、それよりも、ジュンさんもエリさんも居るから、中野君達が余計にヒートアップしてしまうかも。

 これは、俺とヒデちゃん達だけでお迎えした方が良いかも。


 そんな事を考えながらソワソワしていたのだが、なかなかドアがノックされない。

 メッセージを受けてから10分。準備しているだけかもしれないが、何かあったのかもしれない。

 …やはり、迎えに行こう。何もなければ、それでいいのだから。


 そう思った俺の判断は…遅かった。

 もっと早く決断していたらと、後々になって後悔するのだった…。

……嫌な予感が…。

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