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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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74話〜そっちのお部屋に行ってもいい?〜

「うぉお!これが黒沢の言ってたホテルかぁ!」

「めっちゃデカイ!そして…めっちゃ豪華!」

「素敵!お城みたいだわ!」

「こんな所に、一度でもいいから来てみたかったのよ!」


 夕刻。

 1日目の観光が終わった我々は、今日明日と宿泊するホテルへと来ていた。

 京都でも屈指の高級ホテル。そこに泊まれると知った生徒達のテンションは、ただでさえ明日のことで興奮気味であったのに、今や天井知らずの爆上げ状態であった。

 特に、女子生徒からの声が大きい。


「ありがとう!黒沢君!」

「最高のホテルよ!」

「流石は黒沢君だわ!」


 ちょい、ちょい。バスとか弁当とかは確かに俺だが、こいつの功労者は違うよ?


「みんな。このホテルを取ってくれたのは、そこに居るプランナーの尾崎さんだ。礼を言うなら、彼女に頼むよ」


 バスの陰に隠れていた尾崎さんを手で指すと、みんなはクルリと振り返って「ありがとうございます!」「あざっす!」「明日一緒に回ってくれ!」などとお礼を述べていた。

 …最後の奴は、お礼じゃないな。


「いえ、あの、皆さん。これが私の仕事ですから。私の事は気にせずに、存分に旅をお楽しみください」


 少々慌てながらも、尾崎さんはお辞儀をする。

 でも、頭を上げた彼女の口元は、随分と緩んでいた。

 直接お礼を言われることが少ないのかな?本当に大変なお仕事だ。


 そうして、みんなに感動してもらったホテルの外観だが、中でも同じく感動していた。

 フロントはとても広く、床はフカフカのマットが敷き詰められている。壁や天井は落ち着いた色の木材が使われており、天井には和紙で覆われた照明が幾つも吊るされていた。

 和と洋を融合したような内装。これだけでも高級感が溢れまくっている。


「はぁ~…すげぇ~」

「まるでムゲン城みてぇだ…」


 感動しているのは分かるが…なんだい?そのラスボスが居そうなお城は。

 

「四葉学園の皆様。ようこそ、ホテル・ココノエへお越しくださいました」


 皆が豪華なホテルの内装を仰ぎ見ていると、フロントから数人のスタッフさん達が出てきた。その中央に立つ着物姿の女性が、俺達に向けて静かに腰を折る。

 見た感じは尾崎さんと変わらないくらい若い女性だが…この立ち位置は支配人クラスだろう。


「初めまして。学年主任の武井です」

「ツアープランナーの尾崎です。急なお願いをお受け下さり、誠にありがとうございました」

「副総支配人の九重(ここのえ)洋子(ようこ)でございます。私共のホテルをお選び下さり、大変喜ばしい限りでございます」


 大人達が挨拶を交わし、それを生徒がワイワイ言いながら眺める。


「おい、黒沢。あの着物姉ちゃんもすげぇ美人だな」


 成田君。君は年上好きなのか?

 大人達の挨拶が終わると、直ぐに生徒達が集められる。雨田先生が厳しい顔で、出発前も散々聞いた諸注意を繰り返す。


「良いか?お前ら。ホテルでは特に、時間厳守だ。ルールを破ったら、明日の自由時間はない物と思えよ」


 ルールと言うのは、ホテル内で騒がない事だとか、備品を壊さない事など、当たり前の事ばかりだ。

 それでも、学友に囲まれて興奮している高校生には難しい事かも知れない。22時以降は就寝…なんてルールは、きっと多くの生徒が守るつもりが無いのだろう。先生達を出し抜いてやろうって顔をしている奴が、あっちこっちに散見している。


「なぁ、聞いたかよ?黒沢」

「うん?」


 特に悪い顔をした成田君が、俺に話しかけて来る。


「女子の部屋、俺達と同じフロアみたいじゃねえか。こりゃもう、行くっきゃないだろ!」


 声が大きい。あと、同じフロアだが西館と東館で分かれている。女子が居る西館に行くには、中央通路を通らないといけない。そして、そこには勿論、先生が待機している。


「成田君は、雨田先生に勝てるのかな?」

「そこはほら、中野の奴を突っ込ませてだな…」

「聞こえてんぞ!バカ成田!」

「バカはてめぇだろ!赤点3つも取りやがって!」

「お前も2つだろ!」


 どんぐりの背比べって奴だな。


「うーん…。中野がダメなら、小林のフィジカルで押さえつけてぇ…」

「僕を呼んだー?」


 おう、マモちゃん。こんな悪だくみに付き合うこと無いからな?君は純粋なままでいなよ。


「なぁ、成田君。態々危険を冒すことはないだろ?就寝時間までは、女子が男子の部屋に来るのはOKなんだ。彼女達を遊びに誘えば、そんな苦労をする必要は無い」

「そっちの方がハードル高ぇんだって。女子が俺達の部屋に来てくれるなんてな」


 そうだろうか?昼間の様子を見るに、結構いい感じに見えたけど?

 ダメもとで声を掛けてみたら?と、俺が成田君の背中を押していると、女子の一団が近づいて来た。


「虎二君」


 その先頭に立っていたのは、ノゾミさんだった。


「ちょっと、そっちのお部屋に行ってもいい?今後の事で、相談したいことがあるんだけど?」

「うん?相談…」


 今後と言う事は、明日の自由行動時間のことかな?


「ああ、良いよ。後ろの人達も同じ案件かな?」

「私達はノゾミの付き添い」

「トランプ持ってきたから、みんなでやろ〜」


 ふむ。確かに、女子1人で男子の部屋に行くのは、些か危険かも。こうしてルームメイトで動く方が良いのだろう。


「じゃあ、部屋に荷物置いたらすぐ行くね」

「部屋で変な事してたら、承知しないからね?成田君」

「なんで俺限定なの!?」


 驚愕する成田君。それに、女子達からも笑い声が上がる。

 女子達が「じゃあ、またね」と部屋へと向かうと、成田君がニヤケながら俺の肩に腕を回した。


「いやぁ〜助かったぜ、黒沢。お前が居てくれたから、女子達の方から来てくれたよ」

「これがモテ男の効果って奴か。お前と同じ部屋になって良かった」


「それ、褒めてるのか?」


 あと、モテ男は止めてくれ、木下君。俺がモテているんじゃなくて、俺の背後にある金に群がっている奴らばかりだからな。

 何はともあれ、女子達の訪問という嬉しいサプライズを得た我々は、女子を出迎える為に急いで部屋へ赴き…。


「すげぇ!部屋もめっちゃ広い!」

「おい、成田!風呂もあるぞ!バスタブ2人くらい入れるんじゃねぇか?」

「うっひゃ!泡風呂しようぜ!」


 …おーい。女子が来るの忘れてないか?

 そんな、テンション振り切れの成田君と中野君を御しながら荷物の整理を行っていると、ドアをノックする音が聞こえた。

 おっ、もう来たか。


「うっし!俺が出る!」

「俺が先だ!」

「バカ、押すな!中野」


 ただドアを開けるだけでもつれ合うおバカ2人は、しかし、ドアを開けた瞬間に悲鳴を上げて倒れ込んだ。

 なんだ?


「何やってんだ?お前ら」


 覗いてみると、そこには呆れた顔の雨田先生が。

 ああ、先生の顔に驚いたのね。


「なっ、なんでカミナリが来るんだよ」

「女子を何処やった!」

「お前らみたいのがいるから、こうして付き添ってんだよ」


 そう言ってため息を吐く先生の後ろに、ノゾミさん達が居た。

 どうやら、先生が彼女達の送り迎えをしてくれたらしい。無用なトラブルにならないようにって配慮なのだろうけど…まさに的中したって顔をされている。

 ここは、弁明しないと。


「お疲れ様です、雨田先生。2人が騒いで済みません。迷惑にならない様に目を光らせますので、何卒ご容赦願いたく…」

「ああ、黒沢の部屋なら安心だな。お前ら、夕食には遅れるなよ」


 …俺が安心材料になるの?

 分からないが、先生は元の場所へと戻っていく。


「お邪魔しまーす」

「あっ、こっちは部屋の作りが左右逆なんだ」


 そして、先生が居なくなると、女子達が上がり込んで来た。


「おっ、おう。何処に座る?ベッドで良いか?」

「お茶あるみたいだけど、湯のみが足りないか。どうする?」


 楽しげな女子とは反対に、男子達は緊張気味だ。何をしたら良いかと、木下君と永井君が右往左往している。

 ふむ。助け舟を出そうか。

 そう思って前に出ようとしたけど、それより先にヒデちゃんが動いた。


「下の売店で買ってくるっすよ。何にします?ジュース?それともお茶?」

「あたし、炭酸系じゃなければ何でも」

「私は紅茶とお菓子が欲しい!」

「お菓子は不味いっすよ。夕食まで、そんなに時間ないっすから」

「あっ、確かに〜。じゃあ、お茶だけお願い」

「後で立て替えるから」

「うっす」


 みんなの希望を手早く纏めて、そそくさと買い出しに行くヒデちゃん。俺も手伝いに行こうとしたけど、マモちゃんが「僕が行くよー」と言って駆け出して行った。

 うん。気遣いの出来る男だな、2人とも。


「小林君、優しいね」

「ねぇ~」

「護君も頼り甲斐あるし」

「ねぇ。良いよね」


 ほら、女子達からも良い反応だぞ。流石、彼女持ちは違うな。

 …彼らがそう言う関係かは、分からんのだがね。


「虎二君」


 ノゾミさんがツンツンと、俺の肩を突く。見ると、彼女はチラリとベランダの方に顔を向けた。

 ふむ。向こうで話そうってことか。


「なんだよ、黒沢。お前ら大貧民やらねぇの?」


 ベランダに行こうと2人で立ち上がると、成田君がトランプをシャッフルしながら見上げて来た。隣の中野君も「人生ゲームもあるぜ!」と自分のカバンを指さす。

 なんでそんな物まで持ってきてんだよ、中野君。カバンの容量的に入らんだろ?


「俺達は良いよ。ちょっとこの後の打ち合わせがあるから」

「打ち合わせ?なんかそれ、怪しいなぁ」


 目を光らせる成田君。それを、女子達が嗜める。


「ほら、成田。ノゾミは学級委員なんだから、仕事の邪魔しないの」


 うん?何故か、女子達がノゾミさんに協力的だな。委員長だからか?


「そうそう。ほら、早くカード配ってよ」

「おっけー。じゃあ時計回りに行くからな」

「イカサマしないでよ?」

「大貧民でそんなこと出来るか!」


 嬉々としてトランプにのめり込む男子達。女子が居るだけで、普段の何倍も楽しそうだ。

 盛り上がる場を後にして、俺はノゾミさんと一緒にベランダへ出る。


「わぁ、綺麗な夕焼けね」


 ベランダに出ると、夕日に彩られる京都の街並みが目の前に広がっていた。その荘厳さと美しさを兼ね備えた景色に、ノゾミさんは手すりに駆け寄って感嘆のため息を零す。

 俺も彼女に倣い、手すりに寄りかかって風景を見下ろす。

 京都も東京も、どちらも大都会なことには変わりないが、街並みはまるで違う。やはり、歴史と文化が根付いているこの都市には、他では味わえない魅力があった。

 …道理で、オーバーツーリズムに悩まされる訳だ。


「ありがとう、虎二君」

「うん?」


 突然、ノゾミさんが感謝を伝えて来た。

 何の事?


「こんな綺麗な景色を見られたのも、貴方が頑張ってくれたからよ」


 ああ、そういうこと。


「そいつは、俺だけの功績ではないよ」


 尾崎さんが色々走り回ってくれたからだし、先生達も成功させようと頑張ってくれている。それに、ノゾミさんとジュンさんが協力してくれたから、あの食えない父親から追加予算を貰うことが出来た。俺1人の力なんて、精々移動手段を整えた程度。

 そう言う意味を込めて首を振ると、ノゾミさんはクスクスと笑う。


「君なら、そう言うと思った。でも、虎二君がしっかり準備してくれたから、私もバスで助かのよ?」

「ああ、まぁ、あれは確かに」


 各バスに酔い止め薬を用意したから、リバースした奴はいなかったと聞いている。


「でしょ?だから、ありがとう」


 そう言って、手すりに掛けていた俺の手に、自分の手を重ねるノゾミさん。

 おっとっと。


「気を付けてね?カーテンしてないから」

「あっ」


 慌てて手を離すノゾミさん。

 そうそう。感謝してくれるのは嬉しいけれど、俺達の姿はみんなに丸見えだからね。下手なことをすると、俺と噂になってしまうよ?


「そう言えば、相談事があるんだったね?明日の自由行動時間についてかな?」

「あっ、うん。ええっと…その…」


 本題をこちらから振ってみると、ノゾミさんの視線が泳いだ。

 この感じは…今話題を考えているみたいだぞ。と言う事は、相談事があると言うのは嘘で、ただこの部屋に来るための口実だった可能性がある。

 何故だ?もしかして、俺に会いに来る為…っと、そんな楽観的な考え方はイカンな。

 彼女が俺に甘えて来る…もとい、救助を要請してくると言えば。


「もしかして、セイジに呼び出されたのかな?」

「えっ…あっ!そう!」


 やはりそうか。セイジに呼び出されて、それを断る言い訳に委員会の仕事を作り上げたのだろう。その辻褄合わせに俺の所へ来て、今後の打ち合わせをした風を装いたかったというところか。

 折角の旅行なのに、こんな所までアイツのお世話をするのは嫌だよな。朝も起こしてもらっていると言っていたし、相当な甘えん坊なのだろう、あいつは。


「それなら、俺も協力しよう。疲れたら何時でも、俺との話し合いを出汁に抜けて来るといいよ」

「ありがとう!虎二君」


 感極まったノゾミさんが、俺の左腕に抱き着いて来た。

 うぉいっ!だからね?ノゾミさん。


「あっ、そうだった」


 後ろの存在を思い出したノゾミさんは、慌てて離れる。そして、そのまま窓の所まで行って、カーテンを閉めて帰って来た。


「これで大丈夫ね」


 自信満々で頷く彼女。

 いや、あの…ノゾミさん?


「それ、今から見られちゃ不味い事しますって言っているようなものじゃない?」

「…確かに、そうね」


 赤くなって頷くノゾミさん。

 意外と、抜けている所もあるんだな。

 自然と、俺は笑みを零していた。

「良い感じであるな」


ジュンさんはどこ?

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― 新着の感想 ―
カウントダウン…セイジの力の暴走か…ノゾミさんの勝利までのものか…最終回?…は勘弁してもらいたいですが…
オーバーツーリズム…古くは〇武ワールドスクエア恐らく未来では超VR技術で「行ったつもり」解決を図る? しかし、この世界では黒沢マネーのお大尽旅行でいろいろ力技で解決だ!?(尾崎さんの参考になるのか?w…
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