★膨れ上がる感情
クロードは腰に差している刀を抜き、ローザのレイピアを受け止める。ローザの背後に領主と兵たちがこちらの様子をうかがっているのが見えた。
「ローザ、オレはその賭けにのってやる。ラファール、領主さんたちも手出しするな」
「一人で戦う気か!!」
「頼む、下がっててくれ」
真剣な表情のクロードにラファールは渋々領主たちのところまで下がっていった。それを確認したクロードは力でレイピアを押し返し、後ろに下がった。
「もう茶番は終わりにしよう。お前はすでに気づいているんだろ、オレがロベールじゃなくてクロードだって」
「最後までロベールとして戦ってくださるのではなかったのですね」
「ああ、そのつもりだった。ロベールみたいに冷静にお前の相手はできなそうだ」
クロードの瞳には強い感情が宿る。
憎悪。
彼の感情に呼応するように闇の精霊が集まり、彼の持つ刀の周りを揺らめいた。
「お前を裁けるのはお前自身だけ? 笑わせるな、お前の魔法が発動する前にお前の息の根を止めてやる」
膨れ上がる憎悪。強い負の感情に導かれ、闇の精霊だけではなく闇の聖霊までもがクロードの周囲に集まってくる。
「集いし闇の精霊と聖霊たち、黄泉へと誘え。死の門!」
闇の精霊と聖霊の半分が一カ所に集まり、徐々に門のような形に変化し、そこへ吸い込もうとする力が発生する。
***
クロードに言われ戦いから身を退いたラファールは、ローザとクロードの戦いを見守っていた。
「なあ、俺たちも加勢した方が……」
「やめておけ、ラファール。相性が悪い」
領主にそう言われ、ラファールは黙ることしかできなかった。相性が悪く、敵わないことはすでに分かってしまっている。何もできないまま二人を見守っているとラファールは暖かいモノを感じた。
「……父上」
「どうした?」
「あれ」
ラファールが指差す方には、先ほどクロードが呼び出した火の鳥の残骸。小さな火の粉となってわずかだが残っていたのだ。それらが今、一つの場所に固まっている。
『我が名の下に集いし火の精霊と聖霊たち、我が姿を模れ。精霊の炎』
ラファールたちの頭の中に声が響く。クロードたちの方を見るが、彼らはこの声に気づいていないようだ。
頭に響いた声に呼応して火の粉は静かに大きな火へと変化し、徐々に人の形へと変わってゆく。そして、最後には火が飛び散り、中から人が現れた。長い赤髪に、飛び散った火が甘えるかのようにまとわりつく。
「嘘だろ……」
「あなたは……」
ラファールと領主は火の中から現れた人物を見て唖然とする。




