★彼の炎
クロードは右腕についているブレスレットの一つを外し、ローザが出した炎に向かって投げた。炎に触れた瞬間、ブレスレットに埋め込まれた魔宝石が光を発し、炎を吸収していく。この魔宝石はユリアを守ったモノと同じ魔力吸収の魔宝石だ。全ての炎を吸収し終えると、ブレスレットは役目を終えたとでもいうかのように魔宝石ごと壊れた。
「そう簡単に終わるような男か? ロベールは?」
ローザがすでにロベールではなくクロードであると気づいていると察しているが、ロベール扱いしてくるローザにクロードはあえて乗ることにした。
(……魔力吸収の魔宝石はあと一つしかない。まさか魔宝石が壊れるなんて)
ローザに強がって見せたもののクロードは自分の方が圧倒的に不利だと理解している。ブレスレットがローザの魔法に耐えられないことは最初から想定していたが、魔宝石自体が壊れることは予想外だった。
(壊れなければ、もう一度魔力を込めて使うこともできたが……壊れてしまっては使えない)
今の状況の打開策はないかと必死に探るクロード。ラファールはローザが何故クロードをロベールと呼ぶのかと疑問に思ったが口にすることはなかった。
何も言わずクロードたちを見守るローザに、二人は悪寒を感じた。
(いつでも殺せる、せいぜい足掻くなら今のうちに足掻けとでも言いたいのか、ローザ……!)
怒りは溜まっていくが魔力はなかなか回復しない。
(……一か八かあれを試してみるか)
同じ血の流れるもので互いの信頼が強い場合に、血縁者の元に集まる精霊を使えるという話を聞いたことがある。成功する保証はない。今まで試したこともない。
(ロベール兄さん……力を貸してくれ)
クロードは昨日ローザに傷つけられたところに爪を立て、血を出し地面に垂らす。同じ血が流れる証明として一滴以上の血が必要だとも言われた。
「(ローザ、お前がオレをロベールだというのなら、ロベール兄さんがよく使っていた魔法を使ってやる……)ロベールの下に集いし炎の精霊、同じ血の流れる我が元へ集い、主の仇をその手で取れ。火の鳥!」
地面に垂れたクロードの血から巨大な炎の塊が現れ、それは徐々に鳥の形へと変わってゆく。鳥の形をした炎は己の主を殺めた者に対しての怒りなのか、辺りに熱気を振りまいた。
「ラファール、やれ!」
成り行きを見守っていたラファールはクロードの意図を理解し、風を起こす。鳥の形をした炎はラファールの風の力を借りてさらに大きくなる。
「行け!」
クロードの言葉に反応し、鳥の形をした炎はローザに向かって突っ込んでいく。




