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秘める聖女と優しき逃亡者  作者: 黒羽、冥月 霜華
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☆魔力と気づき

 ローザがラファールから情報を聞き出そうとしたその時、何処からか強い魔力が放たれた。

 危険を感じたローザが一瞬、ラファールから距離を取ると、魔力を纏った霧が視界を阻んだ。

 奇襲かと身構えるローザだが、一向に襲ってくる者の気配はない。


「まさか……!」


 レイピアから伝わっていた感覚が軽くなり、ローザは小さく声を上げた。

 そのまま、漂う霧を強引に振り払い、ラファールが居た場所を確認する。


「やられましたわね」


 先程までラファールがいた場所は無人となり、漂っていた霧もなくなっていた。

 誰かがラファールを助ける為に魔法を放ち、霧を呼んだのだろうと推測したローザはすぐに魔力残滓を調べ始める。


(急がなければ……此処で逃すわけには行きませんわ)


 焦る気持ちとは逆に、冷静に魔力残滓を確認するローザ。

 手のひらから伝わってくる魔力に、ローザは一つの事実を知った。


「(これは……ロベールの魔力ではありませんわ。あの方の魔力はもっと……でも、アレは確かに闇魔法の……)あぁ……そうでしたわね。貴方は、私と違って守りたい方が居たのでしたわね……」


 ローザは小さくそう呟くと、ほんの僅かに瞳を揺らした。

 しかし、それはほんの一瞬のこと。ローザは、魔力残滓を追って、更に森へと深く入り込んだ。



   ***



(ここですわね)


 自分とラファールが居た場所からそう遠くない場所、草木が生い茂るほんの僅かに薄暗くなったその場所から、ローザが追っている魔力残滓は漂っていた。


(罠を張っているのか、それとも、諦めたのか……どちらでしょうね)


 ローザはそんなことを考えながら、わざと足元にあった草を踏みつける。

 ガサッという音が周囲に響き、ローザの視界に二人の人物が映しだされた。

 一人は先程まで自分が対峙していた相手――ラファール、もう一人は街で会った男――ロベールではなく、その弟であるクロード・ウォレスだ。

 ローザとクロードの面識は殆どないが、貴族の令嬢達の茶会で必ず名が上がる人物である為、情報として記憶に残っていた。

 なぜあの日間違えたのだと過去の自分に腹立たしさを覚えながら、ローザは表情を変えずに口を開く。


「ごきげんよう。お久しぶりですわね。()()()()。やはり、彼が此処に居ると知っていましたのね? ラファール様」


 既にラファ―ルと共にいるのが弟のクロードだとわかっているが、あえて彼をロベールと呼び、笑みを浮かべるローザ。その笑みは、美しさを通り越し、言葉に出来ない恐ろしさを二人に与えている。

 動かない二人を見つめながら、ローザは静かにレイピアを抜いた。

 貼り付けられた笑みは変わらず、瞳に宿る光が憎しみと怒りに染まっていくその様に、ラファール達は身構える。


「……無駄ですわ」


 ローザは小さく呟くと詠唱を始めた。


「炎の聖霊よ。我が名の下に集い、従え。彼の者達を誘え。(アッシェ)()踊り子(テンツァー)


 抜かれたレイピアから、今までに無いほどの炎が溢れ、ローザの周りに陽炎が揺らめいた。

 その瞬間――


 ブアッ!


 何もなかった場所に炎が現れ、段々と踊り子の姿へと変わっていく。

 完全なる女の姿となった炎は舞うようにラファール達の傍へと近寄ってくる。

 それと同時に周囲は炎の海と化し、二人の逃げ場を奪っていく。


「コレで終わりですわ」


 揺らめく炎の中、ローザの言葉が冷たく言い放たれた。

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