☆交わる風と炎
炎の矢はまっすぐに飛び、ストンと大地に刺さった。
近くにあった木と草が静かに燃え、一人の人間がローザの目の前に姿を現す。
「此処に居る……という事は、ソレが答えということでよろしいのですね」
ローザはそう言うと、目の前の人物をじっと見つめる。
「……どうお考えになるかは、貴方の自由です。聖女様」
静かにそう答え、ローザを見つめ返すのは、先程まで逃げていたラファールだ。
力強い瞳でローザを見つめるその姿に迷いはない。
ローザはそれを肌で感じ取り、頭に昇っていた血が段々と冷えていくのがわかった。
(気に入りませんわ。信頼できる仲間を得たような……私に勝てると確信しているような……あの瞳が……)
レイピアに手を伸ばしながら、体の力を抜くローザ。
不必要な力は、自分にとって悪影響しかもたらさない。
ソレを知っているからこそ、ローザは体の力をぎりぎりの所まで抜く。
その様子を見ていたラファールは静かに身構えた。
「……舞え。炎の花びら」
抜かれたレイピアを炎が包み、ローザの言葉に呼応するように形を変える。
ラファールは自分の周りに竜巻を呼び、強い風を起こす。
花びらのようにヒラリヒラリと舞いながら確実にラファールの身を焦がそうとしていた炎は、竜巻の中に吸い込まれていく。
「……貴方は、詠唱なしで魔法が使えますのね」
ローザは竜巻に飲み込まれていく炎を見つめながら、ポツリと呟いた。
なりふり構わず自分を殺そうとするに違いないと思っていたラファールは、大人しいローザの姿に困惑する。
クロードの言っていた通り炎の魔法を使っては来るが、その威力は皆無に等しい。
一体何を企んでいるのかと、ラファールは警戒を強める。
「……風を操る貴方なら、ご存知ですよね。普通の炎は強い風で消えてしまうけれど、魔力で呼び出された炎はそうではないことを……」
ローザはそう言うと、静かに口角を上げた。
その姿に嫌な予感を感じたラファールは竜巻に目をやる。
その瞬間――
「美しく、静かに爆ぜなさい」
ラファールの竜巻を飲み込むように、炎が吹き上げた。
咄嗟にその場を離れるラファールだが、その場に咲いていた花は音もなく塵になっていく。
「あら、さすがですわね」
美しい笑みを浮かべると、ローザは迷うこと無く大地を蹴った。
あっという間に視界から消えたローザに、ラファールは周囲の気配を探る。
「ぐっ……!」
周囲を警戒し、後ろへ一歩下がったラファールの方に鋭い痛みが走る。
「ご安心下さいな。まだ、殺しはしませんから……」
ローザはそう言うと、瞳を怪しく光らせる。
その姿にラファールは息を呑み、コレが自分達が聖女と呼んでいた女の正体かと眉を寄せたのだった。




