★異色の瞳、憎む者
屋敷の客室に辿りつき、クロードとラファールはテーブルをはさみ、向かい合わせで座った。
「何故ユリアを、昨日の少女を襲った? オレをおびき出すための人質にするのではなく、本気で殺そうとしただろ」
クロードは怒りを抑えて静かに訊ねた。ラファールはやはりそれを聞いてくるかと心の中で呟いた。さすがのラファールも本気でやりすぎたと反省している。
「……最初は、一回目に襲ったときは人質として捕まえるつもりだった。けど、あの瞳に恐怖を感じて……思わずやりすぎた。二回目も殺すつもりは、なかった。あの瞳が恐ろしいものではない、むしろあの瞳はあのユリアという娘を苦しめるものだと、分かったから」
そう、昨日の朝、家に帰った後にラファールは思い出したのだ。『異色の瞳の持ち主に時の力は宿る』という言い伝えを。そして、その時の力を――時の魔法を手に入れ利用しようとする人たちによって、異色の瞳の持ち主は虐げられているということを。
「なら、何故二度目も襲った!」
怒りを抑えられず、クロードはラファールを怒鳴りつけた。守ろうとしているのに守れないことに対する怒りを、ラファールにぶつけている。冷静になれなければと言い聞かせているのに、身体が言うことを聞いてくれない。
「それは……あの娘が俺を、偽りの英雄の支持者などと呼ぶから!! ふざけるな、誰が、誰があの聖女様の支持者になどなるものか!!」
ラファールの言葉を聞き、クロードは気を静めた。納得したようなしてないような不思議な気持ちになった。やはりローザとラファールは無関係、いや面識があったとしてもラファールはローザに加担しているわけではないと分かり安堵した。
「……はあ、何で俺が貴様と普通に話してるんだろうな」
自分でついて来て、自分でクロードの問いかけに答えていることに、ラファールは不思議と嫌な感じがしなかった。高慢なお貴族様かと思っていたが、クロードという奴はそんなのではなかったからであろう。
「オレは、お前を恨む気はない。根から悪いやつではないみたいだしな」
「……俺は王都の貴族が嫌いだ。あいつらは俺たちみたいな地方貴族を格下扱いする。俺は貴様が、ウォレスが憎い。貴様らウォレスはかつて俺たちをこの地に追いやった張本人だ」
クロードはラファールの言葉にやはり知らないのかと心の中で呟く。
「ラファール、オレが話したかったのはそのことについてなんだ」
「はあ?」
ラファールは驚きを隠せない。ウォレス家がカルマ家をこの辺境に追いやったのは曾祖父が当主だったときの話で、ラファールはその当時のことを実際に見たわけではない。クロードはラファールとたいして歳は変わらないどころか、ラファールよりも若いのだから当然のことながらその当時のことを実際に見ているわけがない。
「祖父から聞いた話だから真実とは限らない。だけど、聞いてほしい。ウォレスはカルマを救うために辺境に追いやったんだ」




