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秘める聖女と優しき逃亡者  作者: 黒羽、冥月 霜華
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★ついに対面する彼ら

 クロードは自室から出て、広間へとやってきた。


(……ここで、ユリアは襲われた)


 苦しげに顔を歪める。ユリアと出会ったあの日、彼女を必ず守ると誓ったのに、守れなかった。

 広間の中央まで歩いて来て、クロードはあるモノを発見した。


「これは……」


 クロードは片膝をつき、床に手を当てる。そこには、何かで傷つけられた痕があった。しかも一つや二つではない、無数に、だ。


「……風の刃?」


 この傷が一番つくのは魔法で生み出された風の刃――例えば竜巻とか――によるものだ。だが、こんな傷は前までなかった。ならばユリアが襲われたときにつけられたモノ。


(ユリアは昨日オレとぶつかった男に襲われたと言っていた。あいつは誰だ? ローザと無関係でオレを知っている者、そしてこの辺に住んでいる、もしくはこの辺に滞在しようと思うやつ……しかも魔法が使える……)


 クロードは今まで関わった人たちを思い出しては、こいつは違うと否定し続けた。この辺境の地に来ようと思うやつがまず思い付かない。王都で暮らすやつはこんな辺境の地に滞在しようとも、いや来ようとさえ思わないであろう。


「……いた、一人だけ」


 ラファール・カルマ。クロードの脳裏にその名前が浮かんだ。


(あいつは確かここの領主の息子だったはず。しかも、風を操る力を持っていた。だが、何故オレを、いやウォレスを狙う? 敵対していたわけじゃない、むしろ……)


 そこまで考えてクロードははっと気づいた。


(知らないのか、あいつは、あのことを)


 会ったら教えてやろうとクロードは密かに決めた。


『……いや、助けて』

「!! ユリア!」


 外からユリアの声が聞こえた気がした。


(まさか一人で外に……早く行かないと、頼むから間に合ってくれ!!)


 クロードは玄関から飛び出してユリアの声がした方へと走った。



   ***



 ユリアは目の前で起こった出来事を理解できなかった。竜巻が目の前で止まっている、まるで時が止まったかのように。これもクロードの力なのだろうかとユリアは考えた。


「あの言い伝えは……本当だったのか」


 男性はポツリと言葉をこぼした。


「ああ、そうだ、言い伝えは本当だよ。ラファール・カルマ」


 男性――ラファール・カルマは横から聞こえていた声にビクッと身体を震わせる。ゆっくりと身体を横に動かすと、そこにはラファールの予想していた通りの人物がいた。


「クロード!」


 そう叫んだユリアは表情を明るくし、クロードのそばに駆け寄った。クロードから離れようとしていたことなど、目の前で理解できないことが起こったことに対する恐怖と、クロードが来てくれたことに対する安堵で、すっかり忘れてしまっている。


「やはり、ここにいたのか、クロード・ウォレス」

「今すぐにここから去れ。オレの居場所を、ローザに知られたくないならな」

「……今回は退く」


 ローザにクロードの居場所を知られたくないというより、クロードの居場所を自分が知っていることをローザに知られたくないラファールは大人しく退くこと決め、竜巻を消した。


「……今度、少し話さないか?」


 突然のクロードの提案に驚きながらも、こちらも聞きたいことがあると思ったラファールはその提案に乗ることにした。


「ああ。明日、ここに来る」


 その言葉を聞いたクロードはユリアの手を引きながら、屋敷の中へ入っていった。ラファールは無言で屋敷から離れて行った。

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